しかし、パリやバルセロナといった欧州の観光地は既に訪れてしまい、
中世の建築物や美術館めぐりを目的とした 海外旅行に少々飽きてしまっている読者も
実は多いのではないだろうか。
そんな方々にお勧めしたいのが、フィンランドへの旅。
コテージで過ごす時間をこよなく愛する国民が住み、日英間を飛行機で結ぶ中継地としても
便利なこの国ならではの夏休みを紹介する。(本誌編集部)
取材協力: Finnair(www.finnair.com)、Visit Finland(www.visitfinland.com)、
Finavia(www.finavia.fi )、日本政府観光局(JNTO、www.seejapan.co.uk)
急がない休日の過ごし方 フィンランドのコテージ・ライフ
フィンランド国内のコテージを紹介・斡旋する「ロマレンガス」
マーケティング・マネージャー
ペッカ・フットゥネンさん
「夏は暇さえあればコテージ」
フィンランド人は、コテージで過ごす時間が本当に好きなんだ。私自身、夏は週末になる度に家族でコテージへと赴く。さらに子どもが夏休みに入ると家族一同でコテージに長期滞在するから、暇さえあればコテージでくつろいでいることになるね。
青年期になって、「今年の夏はもうコテージなんか行かない」なんて言い出す子どもたちもいるけれど、また数年経ったら、「今年は友達と一緒に過ごしたいから、コテージの鍵 を貸して」なんて頼んでくるんだからね。それで自分が人の親になると、子どもを連れてまたコテージへと出掛ける。定年を迎えたら、余暇の時間をコテージで過ごす。結局、いつまで経ってもコテージから離れられないんだ。
「1日なんてあっという間」
滞在期間は平均すると、長期の場合で1週間ぐらい。この前、コテージを3週間も借り切ったドイツ人の父子がいたけどね。そこまで長いと、お父さんはともかく、子どもにとっては休日というよりも何かの罰だったのじゃないかと思ったけれど(笑)。冗談はさておき、それぐらいゆったりとした時間を過ごせるのがコテージ・ライフの良いところだと思う。
1週間も同じ場所にいて退屈しないかって?例えば、朝起きて、コテージの庭で家族揃ってゆっくり朝ごはんを食べる。腹ごしらえをしたらボートに乗って湖の沖合いまで出掛けて、数時間ほど釣りを楽しむ。戻ってきて昼食。そのとき、釣った魚をさばくことだってできるだろ?少し昼寝をしたら、午後は森の中を散策。夕方にコテージに戻ってきてサウナに入ったら次は湖に飛び込んで、体が冷えたなと思ったらまたサウナに入る。そんなことをしていたら、1日なんてあっという間に過ぎてしまうよ。
「せめて一度は急がない休日を」
日本人の観光客がコテージを利用することは正直言って少ない。やっぱりわざわざ遠方から来るわけだから、一つの場所に長時間留まるよりも、色んな観光名所を周りたいって思 うんだろうね。でも欧州在住の日本人だったら、例えばヘルシンキに数泊して、車をレンタルしてコテージに3泊、それからその車でフィンランドの他の地域を周って計1週間、という過ごし方だってできるし。
せめて一生のうち一度、ほんの数日だけでもいいから、「急がない海外での休日」というのがあってもいいと思うんだけどな。
ロマレンガス
フィンランド国内にある2000以上のコテージを紹介する組織。ヘルシンキ郊外にあるサマー・コテージから、サンタクロースの故郷として有名なラップランド地方のスキー・コテージまで幅広く斡旋している。
Lomarengas Oy
Eteläesplanadi 22 C, 00130 Helsinki, Finland
Tel: 00358 306 502 502(英語)
E-mail:
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www.lomarengas.fi
フィンランド人流 コテージでの夏の過ごし方
「フィンランド人がなぜコテージでの生活を好むか。それは森の沈黙を聞くためだよ」と語る、コテージの経営歴40年のセータリさん。フィンランドにあるコテージのほとんどは、彼のような農家が兼業で営むことが多いという。
Seeteri Farm
Riitta and Juhani Torkkomäki
Helsingintie 956, 31400 Somero, Finland
Tel: 00358 2 748 3565
E-mail:
このメールアドレスは、スパムロボットから保護されています。アドレスを確認するにはJavaScriptを有効にしてください
(左写真)サマー・コテージの内部。木材を使用した内装に涼しさを感じる
(右写真)コテージ・ライフでは、ダーツ遊びや洗濯だってイベントになる
● サウナに入る
フィンランド人が大好きなサウナ。森に囲まれたコテージの中で、大自然の景色を眺めながら入るサウナは格別だ。多くのサウナが湖に面した位置に設置されている。
● 湖で泳ぐ
サウナに入った後は、裸のままでコテージを抜け出して湖に飛び込む。コテージの多くは深い森の中に建てられているので、誰かに裸を見られるかもしれないという心配は無用。
● 昼寝
コテージのベランダで耳をすませば、風のざわめきが聞こえてくる。森からの涼しげな風と北欧の透き通った太陽の光を受けながら、極上の 昼寝を味わうことができるはず。
● ボートを漕ぐ
ほぼすべてのコテージには、ボートが備え付けられている。ボートの上で釣りや読書に興じたり、ボートを漕いで対岸のレストランまで出掛けるという人も。
● ソーセージと焚き火
遊び疲れたら、焚き火の時間。最寄りの食料品店で事前に買出しをしておいたソーセージを焼き、冷蔵庫に冷やしておいたビールと共に味わうのがフィンランド流。
● 語り合う
コテージは、家族や友人と語り合う機会を提供してくれる。「コテージにいるときは、仕事や学校の話はしない。その代わり、その日に見た植物や鳥の話をするんだ」とペッカさん。
夏休みだからこそ訪れたい ヘルシンキの観光スポット
フィンランドに来たからには、やはり首都ヘルシンキの散策も楽しみたいはず。ヘルシンキ市内は小さくまとまっているので、丸1日あれば、かなり多くの観光名所をめぐることができるだろう。
ロンドンから飛行機で約2時間半。ヘルシンキ空港から市内中心部までは空港バスで約35分。ヘルシンキ・カード(1日券が33ユーロ)を購入すれば、ヘルシンキ市内の公共交通機関の運賃と、60カ所以上の博物館、美術館への入場などが無料となる。
観光客の強い味方
ヘルシンキお助け隊
ヘルシンキ市内を散策していると、緑色のベストを着用した若者たちの姿を時折見かける。彼らの 正体は、いわば「移動式インフォ メーション・センター」。海外からの旅行客を相手に、目的地までの行き方を教えてくれたり、お勧めのショップを案内してくれている。皆、平均的なフィンランド人と同様に流暢な英語を操るが、中には日本語を話す者もいる。
深夜0時まで開館
ヘルシンキ大聖堂 Tuomiokirkko
北部では太陽が沈まない白夜が見られることもあるフィンランドでは、ヘルシンキ市内でも夏季は夜の11時を過ぎてもまだ明るい。そしてこの街のランドマークであるヘルシンキ大聖堂は、8月末までは真夜中0時まで開館。夕食後に訪れれば、大広場を見下ろすように建つこの大聖堂が、薄暗い空の中に白く光る様子を眺めることができるはずだ。
Unioninkatu 29 Helsinki
9:00‐0:00 入場無料
岩が醸し出す大自然
テンペリアウキオ教会 Temppeliaukion kirkko
(左)教会内部ではクラシック音楽が流れている (右)岩山の中にある洞窟のような外観
剥き出しの自然石で囲まれた、他の欧州諸国ではまず見ないユニークなデザインの教会。ガラス窓からは自然光が差し込み、独特の荘厳な雰囲気を作り出している。また音響が良いことから、コンサート会場としても頻繁に利用されている。上部を覆う岩山の上は自由に歩けるようになっており、ここで日向ぼっこをする地元民の姿が多く見られる。
Lutherinkatu 3 Helsinki
月・火・木・土 10:00-20:00
水・金 11:00-18:00
日 11:45-13:45、15:00-18:00
海岸近くにある物語の舞台
かもめ食堂 Kahvila SUOMI
(左)店の窓には「かもめ食堂」という店名が日本 語で書かれている (右)ボリュームたっぷり、魚のセット・メニュー
2006年に公開されて人気を呼んだ日本映画「かもめ食堂」。ヘルシンキの小さな日本食店に偶然集った3人の日本人女性を中心に展開するこの物語の舞台となったレストラン「カフェ・スオミ」は、市内中心から徒歩で30分ほどの場所にある。魚や肉を中心とした手頃なセット・メニュー(12.10ユーロ~)が中心。海岸にも程近いこの場所では、実際にかもめの姿をよく見かける。
Pursimiehenkatu12 Helsinki
月~金 7:00-18:00
世界遺産登録の要塞
スオメンリンナ島 Suomenlinna
(左、右上)早朝から深夜まで島へと船が出 港している
(右下)島が要塞として機能していた頃の面影を感じさせ る大砲
人口わずか900人というスオメンリンナ島は、17~18世紀にかけてスウェーデン王国やロシア帝国の支配下に置かれ、要塞として機能していた。夏の間、深い緑に覆われた小高い防空壕の丘の上に立って、風に揺れる菜の花を背にバルト海を望めば、遥か彼方から海兵たちの勇ましい掛け声や砲弾の音が聞こえてきそうだ。半日あれば、島中をぐるりと見て回れる。
行き方: ヘルシンキ中心街のマーケットから出ている船で15分
今年の夏は既に日本への里帰りを決めてしまったという人でも、フィンランドでの夏休みを楽しむ方法がある。それが、複数の航空路線を乗り継ぐ際に、その乗り継ぎ地点での宿泊を楽しむ「ストップ・オーバー」。英国に住む日本人だからこそ便利に活用できる、ヘルシンキ空港のストップ・オーバー術をご覧あれ。
ヘルシンキ空港でのストップ・オーバー
フィンランドには興味あるけれど、お盆は日本に里帰りするのでこの夏はこれ以上の長期休暇が取れないという人へ。そんな人へのお勧めプランが、ヘルシンキ空港でのストップ・オーバーだ。2キロ四方に主要な観光名所が集まっているヘルシンキ市内であれば、ストップ・オーバーでの短い滞在でも十分に楽しむことができるはず。
日本へ最短で行ける欧州の国
フィンランド航空の直行便であれば、ヘルシンキ - 成田間が9時間半。意外なことに、ヘルシンキは日本までの航路を最短で結ぶ欧州都市だったりする。また同航空の便は東京・大阪・名古屋の3空港で離発着しているので、日本への帰省にはとても便利。さらに空港内には日本語案内が出ていたり、ラウンジでは日本語でEメ-ルが打てたりと、実はヘルシンキ空港は、欧州在住の日本人にとって最も使いやすい空港の一つなのだ。
ヘルシンキ空港でのストップ・オーバー・ プランの一例
* ロンドンからヘルシンキ空港でストップ・オーバーして東京に帰省し、復路では東京からヘルシンキ空港での乗り継ぎのみでロンドンへと戻ってくる場合
8月5日(水) | 10:20 | ヒースロー空港発 |
15:15 | ヘルシンキ空港着 | |
16:30 | 空港バスでヘルシンキ中央駅着 | |
市内で1泊、翌日夕方まで市内を観光 | ||
8月6日(木) | 17:20 | ヘルシンキ空港発 |
8月7日(金) | 08:55 | 成田空港着 |
8月19日(水) | 11:00 | 成田空港発 |
15:20 | ヘルシンキ空港着、ロンドン便に乗り継ぎ | |
16:00 | ヘルシンキ空港発 | |
17:20 | ヒースロー空港着 |
*時刻はすべて現地時間
乗り継ぎそのものも便利
森の国だけあって
空港内には 木のデザインが
ロンドンのヒースロー空港やパリのシャルル・ド・ゴール空港と比べて、ヘルシンキ空港の規模はずっと小さく、全体的にこぢんまりとしている。だから国際線を乗り継ぐ場合でも、歩いて移動する距離は、長くてもせいぜい100メートルほど。建物の構造も非常にシンプルなので、30分もあれば楽ちんに乗り継ぎができてしまうはず。
ヘルシンキ空港でストップ・オーバーができる日本までの航空券の料金などの詳細については、英国の各日系旅行代理店までご連絡ください。