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Sun, 22 December 2024

Life at the Royal Ballet バレエの細道 - 小林ひかる

第19回 バラエティーに富んだハプニングの数々

1 December 2011 vol.1329

ジゼル
タマラ・ロホとカルロス・アコスタの
「ジゼル」の中の花占いのワンシーン
(この写真はハプニングとは無関係です!)

今まで何度あったことでしょう、舞台上のハプニング。

けが以外のハプニングは、バラエティーに富んでいて、後で思い出すと笑える話ばかりです。いくつか例を挙げると、舞台上の仕掛けが動かなかった、小道具が置いてあるはずの場所になかった、振りを間違えた、転んでしまった、などなど……。これらのハプニングは、ダンサー皆が体験することだと思います。

つい最近、舞台上で転んでしまった私ですが、舞台上で転ぶのは私の場合、年に1回くらいの割合で起こります(この数は少ない方だと思います……)。今回転んでしまったのは、舞台上に貼ってあるテープの種類がいつものテープと違っていたせいでした! それもただステップをつなぐために歩いていたときだったのですが……。

こうしたとき、重要なのはその後どれだけ早く踊りに戻れるかという点ですが、不思議と音楽を聴くと体が勝手に反応して、その音に合った動きをしてくれるのです。転んだ瞬間は1秒が1分のごとく長く感じられるため、かなり手間取っているように思えるのですが、その日の公演が終わった後で観ていた人に聞くと、すぐに起き上がっていたと言います。

振りを忘れるというハプニングもありました。パドゥドゥの最中に、同じメロディーが繰り返されるところがあり、踊りも2度同じ振りを繰り返し、次に続くはずだったのですが、相手役の男性がすっかり1度めを忘れて2度めにいってしまったため、私は男性のいるはずの方向に背を向けて、片足のつま先立ちでバランスを取りながら、彼が支えに来るのを待っていたのです。音楽がそのパートに来ても来ない彼を待ちきれなくなった私は、そのときに彼が振りを忘れてしまったことに気付き、振りを変えてその場をつなげました。このときも実際にはほんの2、3秒の出来事だったのですが、私には何分間にも感じられました。ミスに気付いたときの彼の顔と言ったら——目が点になるというのはこういうことなのかと分かった私です。

小道具のハプニングで1番面白いと思ったのは、「ジゼル」という作品で、村娘ジゼルと貴公子が花びら占い(一輪の花を手にとって、花びらを一枚いちまい摘んで「好き・嫌い」を判断する恋愛占い)をする場面で起こったものです。

私はその日の舞台を、舞台袖から観ていました。舞台上に置いてある植木鉢に一本だけ、すぐ取れるように工作してある花があるのですが、それを見付けられなかったジゼルが、植木鉢ごと持って占いをし始めたのには大笑いしてしまいました。後から聞いた話では、工作してある花はちゃんとあったのですが、ジゼルが間違った植木鉢の中を探したために、見付けられなかったそうです。

ほかにも舞台装置の調子が悪くてドアが開かないといったものや、舞台の下から登場するためのからくりが動かないなど、山ほどありますが、舞台装置が複雑になるほど、ハプニングにおけるリスクは高くなります。

これから、クリスマス・シーズンになり「くるみ割り人形」の上演が始まります。

この作品は最も複雑なバレエ装置を使う作品の一つでもありますが、ここでは敢えて、今までどのようなハプニングが起こったのかはお話ししません。観に来てくださるお客様の舞台の夢を壊したくないので……。

 

小林ひかる
東京都出身。3歳でバレエを始める。15歳でパリ、オペラ座バレエ学校に留学。チューリッヒ・バレエ団、オランダ国立バレエ団を経て、2003年から英国ロイヤル・バレエ団に入団。09年ファースト・ソリストに昇進した。
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