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Sun, 24 November 2024

第234回 英国四圃式農法と古代エジプトのアメン神

前号でノーフォーク地方の四圃(よんぽ)式農法の導入により作物がよく育ち、その結果、ウサギも急増したお話をしました。四圃式農法の特長は、クローバーとカブを植えることにあります。クローバーのようなマメ科の植物は大気中の窒素を根に運ぶと微生物の根粒(こんりゅう)菌がそれを窒素化合物に変換して土地の肥料にしてくれます。また、深く根を張る根菜類のカブは、収穫時に土地が深く掘り起こされることで、土地の栄養分がかき混ぜられます。

家畜の堆肥も循環して肥料に家畜の堆肥も循環して肥料に

大気中には多くの窒素が存在しますが、そのままでは生物が利用できず、アンモニアなどの窒素化合物に変換されて初めて栄養分にできます。英国の土地は痩せていますので、マメ科の植物は土地の肥料を補ってくれる貴重な存在です。さらに四圃式農法なら冬でも家畜の餌が供給されますので家畜の飼育数が増え、その糞も増えて肥料に使えます。家畜肥料が豊富な英国では日本ほど人肥を農業肥料に使う必要がありませんでした。

マメ科の根につく根粒菌が大気から栄養分を補給空気から大量の肥料生産が可能に

さて、古代エジプトには大気と豊穣の神、アメンがいます。アメン神を(まつ)る神殿の周辺には礼拝者が乗ってきたラクダがたくさんの糞を落としていました。乾燥した糞はよく燃えるので燃料に使われ、燃えて昇華すると白い結晶が残ります。その結晶が肥料にもなり、風邪薬にもなったので「アメンの塩」と呼ばれて重宝がられました。実はそれがアンモニアの語源とのこと。アンモニアの語源が大気と豊穣のアメン神に関係するとは……。

空気から大量の肥料生産が可能に空気から大量の肥料生産が可能に

この「アメンの塩」に限らず、森の落葉や腐葉土、草木の灰や海藻などの有機肥料を人類は古くから利用してきました。作物を栽培して収穫すると耕地の土壌から養分が収奪され、養分を土壌に還元しないと土壌の肥沃度が低下することを人類は知っていたからです。この「アメンの塩」は現代でいう塩化アンモニア、俗にいう塩安ですが、産業革命期から英国では硫安と呼ばれる硫酸アンモニアが農業肥料として使われ始めました。

塩化アンモニウム塩化アンモニウム

さて、英国の産業革命を推進したのはコークス製鉄法です。石炭からコークスを作る過程でタールやベンゼン、石炭ガス、硫安などが副生されます。この硫安がそれまでの有機肥料に代わって農業肥料の中心になりました。さらに20世紀初頭、ハーバー・ボッシュ法により高圧・高温下で水素と大気からアンモニアを作ることに成功、大量の肥料生産を可能にしました。それはまさにアメン神が現実の世界に舞い降りてきた瞬間です。

古代エジプトの大気と豊穣の神アメン古代エジプトの大気と豊穣の神アメン

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シティ公認ガイド 寅七

シティ公認ガイド 寅七
『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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