ニュースダイジェストの制作業務
Wed, 12 March 2025

第285回 英国のパンケーキとフランスのクレープ

春になると各地でさまざまな行事が行われます。毎年2月2日、フランスで行われるのが聖燭祭せいしょくさいです。聖燭祭はイエスの生誕40日後、イエスを抱いた聖母マリアがエルサレム神殿で潔めの儀式をしたのが由来。でも、現在では太陽に見立てた黄色くて丸いクレープを食べて春を祝う祭りです。クレープは12世紀に十字軍が中東から持ち帰ってきた蕎麦粉を使って、仏北西部ブルターニュで誕生したガレットが発祥といわれています。

聖燭祭のイメージ 聖燭祭のイメージ

ブルターニュ地方は軟水なので蕎麦粉を溶いてもボソボソになりませんが、仏中央部などは硬水なので、硬水と相性の良い小麦粉を使うクレープに変わりました。英国も硬水ですので小麦粉で作る薄いパンケーキになりました。四旬節の前日に英国ではパンケーキをフライパンに乗せて走るパンケーキ・デーがあり、今年は3月4日になります。四旬節とは復活祭(今年は4月20日)に備えて40日間の断食と節制を行う期間です。

ガレットからクレープとパンケーキに派生 ガレットからクレープとパンケーキに派生

パンケーキ・デーは正式には「告解の火曜日」といいます。自らの犯した罪を告白し、神から許しを得て和解をする日です。断食や節制を行う四旬節の前に、家に残る卵や小麦粉、調味料を使い切ってパンケーキを作ります。その始まりは1445年の英南東部バッキンガムシャーのオルニー村で、教会の鐘を聞いて慌てた主婦がパンケーキの入ったフライパンを持ったまま走って教会に駆け込み、告解をしたことに由来するそうです。

告解のイメージ 告解のイメージ

今では慈善活動としてパンケーキ・レースが行われています。レース参加者は主婦の格好、つまりエプロンとスカーフを着用して、途中で2度パンケーキを空中でひっくり返すのがルールです。パンケーキは薄いですから宙返りさせるにはかなりの熟練が必要です。なぜひっくり返す必要があるのかは分かっていませんが、これはフランスの聖燭祭のクレープ作りに関係があるのかもしれません。

シティのパンケーキ競争 シティのパンケーキ競争

聖燭祭のクレープ作りでは左手に金貨、右手にフライパンを持ち空中でクレープをひっくり返したらそのクレープで金貨を包み、保存しました。それ以降、最初に会った貧しい人にその金貨を渡すと幸運になれるという伝承がありました。今はもっと簡略化されて、クレープが空中で宙返りできれば幸運が訪れるといわれます。英国では慈善活動で走りながらパンケーキを空中で複数回ひっくり返し、複数の幸運をつかんでから告解をするというわけです。神と和解し、この世を明るくするフォーチュン・パンケーキです。

パンケーキの宙返りは幸運を呼ぶ パンケーキの宙返りは幸運を呼ぶ

寅七さんの動画チャンネル「ちょい深ロンドン」もお見逃しなく。

 

シティ公認ガイド 寅七

シティ公認ガイド 寅七
『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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