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Fri, 22 November 2024

ミュージカル「王様と私」
プレビュー公演をリポート 2018年6月26日(火)
The King and I at London Palladium

王様と私「王様と私」の冒頭シーン。アンナは息子とシンガポールから船でバンコクの港に着く

インタビューでは、舞台に立つ役者としてのプレッシャーや心構え、作品の背景やそこに含まれたメッセージなどについて語ってくれた渡辺謙さん。その最後を、「理屈ではなく、実際に舞台を観て楽しんで、何かを感じてほしい」と締めくくった。

その言葉を心に留めつつ、ロンドン・パラディアムの古風な赤いシートに腰を掛けたら、あとはそのまま19世紀のタイへタイムトリップ。渡辺さんの言葉通り、「王様と私」を楽しむのに難しい理屈は全く必要なかった。ブロードウェイで一番の美声の持ち主と言われるアンナ役のベテラン女優、ケリー・オハラさんのまろやかな歌声、立ち姿だけでも既に王様らしいオーラを放つ渡辺さんの、意外にもコミカルな演技。そのほかの出演者たちの軽妙な動きやセリフもユーモアたっぷりで、客席からは常に笑い声が上がっていた。

だが、私たち観客は笑いながらも、国王、英国人女性、国王の妻、奴隷、などそれぞれ全く異なる立場の登場人物、その全員に感情を移入し、いつの間にか彼ら全員の視点で、多角的に物語の世界を見ている自分に気付かされる。主人公は1人ではないのだ。そしてそのときの印象は、見終えてから数日経っても消えることなく、むしろ次第に強まるばかり。

演劇においては「厳しい現実をつかの間忘れて楽しもうというのがブロードウェイの信念ならば、事実から目をそらさず、苦しみながらも必死に生きる人々の真摯な姿をそのまま描き出すのが、ウエスト・エンドの心意気」というのが通説だそうだが、バートレット・シャー版の「王様と私」は、ブロードウェイの楽しさとウエスト・エンドの実直さ、その2つが見事に溶け合った極上のミュージカルだ。(徒)

王様と私互いに反発し合っていたシャム王とアンナの関係が変わり始める

王様と私「Shall We Dance」の曲で2人が踊るシーンでは、客席から手拍子が

王様と私シャム王を演じる渡辺謙さん

王様と私ベテラン女優ケリー・オハラさん

公演情報

The King and I 「王様と私」

作曲家リチャード・ロジャースと、劇作家オスカー・ハマースタイン2世が手掛けたブロードウェイ・ミュージカル「王様と私」は、1860年代初頭のシャム(現タイ王国)を舞台に、国王と、子供たちのために家庭教師として雇われた英国人女性アンナの交流を描いたミュージカル。王とアンナは互いの文化の違いに戸惑いながらも、理解を深め惹かれあっていく。1951年のブロードウェイ初演以来、世界中で繰り返し上演されている人気ミュージカルの一つで、「Shall We Dance?」「Something Wonderful」などおなじみの曲が並ぶ。初演から1985年までシャム王を演じ続けたユル・ブリンナーのスキンヘッド姿は、見るものに鮮烈な印象を与え、56年にはウォルター・ラング監督により映画化もされた。

ブロードウェイで2015年に上演された、ベテラン演出家バートレット・シャーによる「王様と私」は、シャム王を演じた渡辺謙が同年のトニー賞ミュージカル部門主演男優賞にノミネート、英国人の家庭教師アンナ役を務めたケリー・オハラが同賞主演女優賞を獲得するなど大好評を博し、2015年の計9部門のトニー賞を受賞した。2018年6月から9月にかけてロンドンのウエスト・エンドで上演された後、アジア各国へもトランスファーされるという。

出演:ケリー・オハラ(家庭教師アンナ)、渡辺謙(シャム王)、森尚子(チャン王妃)、大沢たかお(クララホム首相)、ナヨン・チョン(奴隷のタプティム)ほか

2018年9月29日(土)まで
月~土 19:00(水・土、8月30日以降の木は14:00もあり)
£29.50~175

London Palladium
Argyll Street, London W1F 7TE
Tel: 020 7087 7755
最寄駅: Oxford Circus
https://kingandimusical.co.uk

 

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