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Open House London 2019 オープン・ハウス・ロンドン 2019年9月21日(土)〜22日(日)

世界最大の建築ショーケースとして毎年話題の「オープン・ハウス・ロンドン」。ロンドンが誇る歴史や革新的なアプローチを建造物で知る、年に一度の特別な週末だ。例年通り800以上の建物内部が一般公開されるが、今年のテーマは「ソーシャル」。昨今、ソーシャル・メディアで写真映えを求める現象が建築デザインにもおよぶことから、「インスタ映え」する都市を構成する建築、そして「社会的」という意味で地域に貢献する建築が選ばれている。本誌では、このテーマに沿った独自のセレクトで、普段は見学できない建造物やオリジナリティーある個人宅を中心に紹介する。(文: Miki Yamanouchi)

オープン・ハウス・ロンドンとは?

創造と革新の都市、ロンドンの景観を構成する「建築」を、新旧とり混ぜ毎年新しい切り口で紹介するオープン・ハウス・ロンドン。ロンドンという街の魅力を市民にもっと知ってほしい、という志の下に27年前にスタートしたチャリティー・イベントだ。普段そばを通っても訪れるチャンスがなかった建物や、建設中で気になっていた建物の実体を知ることができる。この週末のために1日に数時間だけオープンするもの、予約が必要なものなど、物件によって条件が異なるので、公式サイトからリンクされた各予約ページを活用し計画を立てよう。印刷されたガイドブック(10ポンド)も発売され、インスタグラムのアカウントでも、今回のセレクションを美しい写真で紹介している。なお、要予約のものは満員となる可能性あり。それ以外は全て先着順だが、混雑状況により屋外で並ぶ場合もある。

https://openhouselondon.org.uk

Instagrammable インスタグラマブル

最近は実用的、機能的であることの他に、「インスタ映え」も重要な建築要素に。どれだけソーシャルメディアで「アップ」されるかが、成功指数の高さになってきている。

キッズに朗報!歯科院がハッピー・ジャングルに
Happy Kids Dental Clinic Marylebone
ハッピー・キッズ・デンタル・クリニック・マリルボーン

Happy Kids Dental Clinic Marylebone

トラやサイの口が鏡になった歯磨き用洗面台、ゲームのできるiPadが備わる待合室のベンチではカバの親子が読書中。治療室まで熱帯ジャングル風デザインで統一され、2フロアにわたって子供が苦手な歯科治療を楽しくする工夫が凝らされている。小児用に特別に開発された最新の治療法を採用し、施術面も安心だ。当日は家族向けアクティビティーが用意されているので、子供と一緒にのぞいてみては。

  • 9月21日(土)10:00-17:00
  • 74–78 Seymour Place London W1H 2EH
  • Marylebone / Edgware Road

集える、憩える、ロンドンの新広場
Coal Drops Yard
コール・ドロップス・ヤード

Coal Drops Yard

ヴィクトリア時代の産業遺構を生まれ変わらせたのは、ダブルデッカー・バスのデザインでもおなじみのヘザウィック・スタジオ。現在も新しいビルが次々竣工予定の、キングス・クロス再開発地区に去年10月オープンした。運河を石炭輸送に使っていた時代に土地を掘り下げて作られた貯炭所だったそうで、その中心部を広場として大きく残し、煉瓦のトンネル空間をショップ等に再利用している。広場両サイドからせり上がる彫刻的な新築部分が目を奪うが、ツアーではこの形状が生まれた理由も語られるということだ。

  • 9月21日(土)10:00-17:00
    1時間ごとのツアーは12:00-16:00。定員30人
  • Coal Drops Yard, King's Cross London N1C 4DQ
  • King's Cross St. Pancras

ザハ・ハディッドの脳内建築
Roca London Gallery
ロカ・ロンドン・ギャラリー

No1 New Oxford Street

2020東京五輪スタジアムのデザイン・コンペで優勝したザハ・ハディッドによる、バスルーム関連商品会社のショー・ルーム。その奇異な発想に「未建築の女王」と評された彼女の脳内を見るような建築の一つだ。1キロ平方メートルの広大な屋内は「水の動き」をテーマに徹底した流線で構成され、宇宙船の船内のよう。自由に出入りできるカフェやギャラリー、図書室なども備わり、単なるショー・ルームにとどまらないリサーチ・ハブとなっている。

  • 9月21日(土)&22日(日) 10:00-17:00
  • Station Court, Townmead Road London SW6 2PY
  • 2PY Fulham Broadway / Imperial Wharf

Social ソーシャル・インフラストラクチャー

娯楽場、公園、運動施設など快適な都市生活を提供する「社会基盤」となる建築物や、その構造や性質から人々の「社交性」を活性化する建築物にスポットを当てる

社交にいそしむ現代、ビールは「小さめ」でいこう
Small Beer Brewery
スモール・ビア蒸留所

Small Beer Brewery

スモール・ビアとは現代人の忙しい日常にピッタリな、おいしく飲んでもその後の予定を妨げないごく軽い「社交的な」ビールのこと。低いアルコール度数になるよう蒸留され、2.8%以下でありながら味わいがある。約500平方メートルの敷地には多機能ステージにもなる中二階を設け、ミーティング・ルームからは大きな蒸留タンクが望める面白い設計だ。イベント会場として機能し、ライブやコメディー、ウエディングなど、多彩な催しが行われている。

  • 9月21日(土)13:00-17:00
  • 70-72 Verney Road London SE16 3DH
  • South Bermondsey

プロのサッカー・チームのよりどころ
The Lodge
ザ・ロッジ

The Lodge

サッカー、プレミアム・リーグのトッテナム・ホットスパーとその養成学校のクラブ施設で、心身の健康に配慮し、選手をベスト・コンディションへ導くための設計がなされている。故障回復への施術エリア、トレーニング・エリアなどはもちろん、快適なレム睡眠を追求した45の寝室も用意されており、ゲスト・チームも宿泊可能。環境ストレス軽減のため、昼夜で光源の色温度が制御されるライティングにも注目だ。元農場の構造を生かし、温かみのある木材と緑化屋根、豊かな植栽でリラクゼーションを追求している。

  • 9月 21日(土)10:00-13:00
    30分ごとのツアー形式。定員10人。事前予約要
  • Hotspur Way, Whitewebbs Lane, Enfield EN2 9AP
  • Enfield Town / Turkey Street

都市に色を、市民に住まいを。戦後開発の好例
Golden Lane Estate
ゴールデン・レーン・エステート

Golden Lane Estate

第二次世界大戦の被害によるシティの人口低下に危惧したロンドン市自治体が、建築家ジェフリー・パウェルに依頼し、1957年に完成した公団住宅。生活基準の向上を目指し、当時の最新デザインを採用しつつ、戦後の鉄不足を考慮した設計だ。指定建造物(Grade II指定)にもなり、近代建築の巨匠ル・コルビジェの影響が見られる原色を施した外観が灰色の街に明るい印象をもたらした。

  • 9月21日(土)& 22日(日)10:00-17:00
    21日は11:00-16:00まで1時間ごと、22日は 10:00-16:00まで30分ごとにツアーあり。屋上庭園のツアーは22日のみ。事前予約要
  • Golden Lane Estate, Fann Street London EC1Y 0RD
  • Old Street / Barbican

ちょっとエキセントリックな多目的公民館
The Stanley Halls
スタンリー・ホール

The Stanley Halls

多方面で活躍した建築家・発明家のウィリアム・スタンリーが1900年代にデザインを手掛け、さまざまなスタイルを取り入れたこの建物は、「最も風変わりなフリースタイル建築の一つ」と評されるが、今も市民施設として公演や展覧会、集会などに活用されている。ドアや円形パネルの装飾もスタンリーによるもので、細かなディテールも見逃せない。ロビー、ギャラリー、劇場、会議室の他、住居エリアもあり、まさに多目的スペース。

  • 9月22日(日)11:00-16:00
    90分ごとのツアー形式。定員20人。事前予約要
  • 12 South Norwood Hill London SE25 6AB
  • Norwood Junction

Playful 遊び心ある個人宅

建築家と施工主との密接なコラボレーションで生まれる個人住宅。施工主が思い描く理想の住環境作りを第一に、限られた敷地などさまざまな条件から工夫を凝らした家を4つピックアップ。

優しい風合いで子供の元気を受け止める
Cork House
コルクの家

Cork House

子供が増えたのを機に、庭に突き出す形でキッチン・ダイニング部分を増築。内外ともに壁をコルク板で覆い、柔らかく暖かい感触とともに、断熱と防音効果もある。コルクは通気性がある天然素材で、堆肥化可能でもあることも高ポイント。庭へのアクセスは大きなガラス回転ドアで、楽しく出入りする子供たちの声が聞こえてくるようだ。クリエイティブ系の仕事に就く夫婦が、建築家と意見交換を重ね、理想の住環境を実現させた。

  • 9月21日(土)10:00-17:00
    ツアーは1階のみ、1時間ごとの形式で11:00-16:00。定員10人
  • 67 Algernon Road London SE13 7AS
  • Ladywell / Lewisham

斜めに構えた、スタイリッシュな作り
Pitched Black
ピッチ・ブラック

Pitched Black

2階の壁に10度の斜角をつけ、隣接の家々から遠ざかる効果を持たせた、建築事務所社長の自宅。鉄道線路と雑木林に面した側に向けて窓やテラスを大きく設け、居住空間を築いた。反対側はプライバシーを考えた無窓デザイン&黒い木材使用のため、つけた斜角で周辺への圧迫感を減らす効果も狙っている。建設業者の元製材置き場だった土地周辺は、環境保護区でもありさまざまな問題をクリアする必要があったそう。

  • 9月22日(土)10:00-17:00
    定員15人
  • 8a Tyrwhitt Road London SE4 1QG
  • Lewisham / St. John's / Brockley

モザイクをかけたアートな家
The Treatment Rooms
モザイク・ハウス

The Treatment Rooms

立ち止まらずにはいられない、色とりどりのモザイクが使われた外観。20年間にわたり、オーナーが知人のアーティストたちと築いたプロジェクトだ。前庭に停められたブラック・キャブとトラックもモザイクで覆われている。家の後面には、北斎の「神奈川沖浪裏」がロンドンを飲み込む様子がモザイクで描かれており、必見。家の内部も見学できるので、作品に込められたメッセージやジョークを解説してもらおう。

  • 9月 21日(土)& 22日(日) 10:00-17:00
    ツアーは1階のみ、定員25人
  • 4 Fairlawn Grove London W4 5EH
  • Chiswick Park / South Acton

流れる動線で、楽しく効率的な日常を
A House with a Slide
滑り台のある家

A House with a Slide

屋根の半分がガラスの明るいキッチンから、半地下の空間へは階段で降りてもよし、滑り台で滑り降りてもよし。半地下に降りることで天井が高く感じる作りになっている。3階建てから5階建てに改築するために、パズルを組み合わせるような賢い工夫設計がなされている。ヴィクトリア朝の建築が、クラシックなアーチ窓の形や煉瓦の素材感を残しつつ、モダンな素材の窓枠などを取り入れて生まれ変わった好例。

  • 9月21日(土)14:00-16:00
    60分ごとのツアー形式。定員10人。事前予約要
  • 41 Groombridge Road London E9 7DP
  • Homerton / London Fields

ロンドンを深く知ってもらうため、さまざまなツアーを用意

ツアーには、建物内を建築家やデザイナーなどが説明するタイプの他、一つのエリアをテーマに沿って紹介するものもある。例えば、今は亡きミュージシャン、デービッド・ボウイが駆け出しだった1969年頃にバンドの拠点とし、スターとしての出発の場所ともなったベックナム地区で行われる「イン・ジギーズ・フットステップス」。このガイド・ツアーではボウイが若き日々を過ごした地域や活動にゆかりのある建物を巡る。また、ロンドン・ブリッジ駅からウォータルー駅まで、150年前に存在した線路沿いの歩道を復活させる都市開発プロジェクト、「ザ・ロー・ライン」のツアーで進行中のエリアを歩くのも一興だ。リー川がテムズ川に流れ込む半島にある、カニング・タウンの再開発地区のツアー「ロンドン・シティ・アイランド」では「ロンドンのミニ・マンハッタン」と呼ばれるエリアの目覚ましい変化を目撃してみては。

https://openhouselondon.open-city.org.uk/walks_and_tours
 

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*本文および情報欄の情報は、掲載当時の情報です。

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