バノフィー・パイ
Banoffi (Banoffee) Pie
バノフィー・パイを知ったのは、大好きな映画「ラブ・アクチュアリー」がきっかけでした。キーラ・ナイトレイ扮する新婚のジュリエットが、夫の親友マークのところに押し掛けていく場面。目的は、彼が撮影していた自分の結婚式でのビデオを見せてもらうこと。マークがドアを開けると、彼女はすかさず「バノフィー・パイ(いる)?」と満面の笑みで聞きます。箱に入った一切れのパイが写るのはほんの一瞬ですが、この名前はなぜかとても印象に残りました。
で、そのパイですが、「クラシック」とまで言われる英国定番のお菓子のわりに、その歴史は思ったほど長くはなく、初登場したのは1972年。イングランド南東部イースト・サセックスにあった「ハングリー・モンク」というレストランのヘッド・シェフ、イアン・ダウディングさんとオーナーのナイジェル・マッケンジーさんによって生み出されました。瞬く間に大人気となったこのデザートは、その後40数年の間に、多くのシェフたちによってバリエーションを加えたレシピが発表されまくっています。ただ、考案者であるイアンさんは、パイが世界的に人気になったのを喜ぶ一方で、その成り立ちやレシピがあまりにも様々な解釈で伝わっているのを見かねてか、自身のウェブサイトでメニュー誕生のいきさつと「オリジナル」レシピを公表しています(https://iandowding.co.uk)。
元は米国の「ブルムズ・コーヒー・トフィー・パイ」にヒントを得たというバノフィー・パイ。簡単にレシピを紹介すると、ショート・クラストと呼ばれるタルト生地に、缶入りのコンデンス・ミルク(練乳)を湯煎して茶色くなった「トフィー」を敷き詰め、その上にバナナを並べて、インスタント・コーヒーを混ぜたホイップ・クリームを全体に載せた後、少量のコーヒーの粉を散らせば出来上がり。バナナとトフィーを縮めて「バノフィー・パイ」としたのは、ナイジェルさんのアイデアです。
作るのに難しいテクニックは不要ですが、やっかいなのが、練乳を3時間も湯煎にかけなければならないこと。煮立てている間にお湯がなくなってなべが空焚き状態になり、ともすると大惨事を招く危険もあるということで、現在のイアンさんのレシピでは、缶が浸る程度に水を入れたなべを沸騰させた後は、なべに蓋をして低温のオーブンで3時間半温める、という方法が紹介されています。これだと、1974年に出版された「The Deeper Secrets of the Hungry Monk」に掲載されている「オリジナル」レシピとはちょっと違うことになりますが、イアンさんはバノフィー・パイについて「自分がこのレシピを発明したのではなく、元々あったものを進化させたものだ」と公言しているので、まあ、自身のレシピもどんどん進化させている、と思えばいいのかもしれません。進化のおかげか(?)今では蓋を開けてすぐ使える缶入りトフィーまで市販されています。
バノフィー・パイお手軽バージョン(8人分)
材料
- 市販のペストリー・ケース(直径約20cm) ... 1個
- 市販のトフィー(ネスレ社のCarnation Caramel など) ... 1缶
- バナナ ... 2、3本
- ダブル・クリーム ... 300ml
- インスタント・コーヒー ... 小さじ1
- 削ったチョコレート ... 適量
作り方
- ペストリー・ケースの全体にトフィーを流し込んで全体を均一の厚さにする。
- スライスしたバナナを❶の上にまんべんなく並べる。
- ダブル・クリームに小さじ1杯分のインスタント・コーヒーを混ぜ、角が立つ程度に泡立てる。
- ❸を❷の上全体に広げ、削ったチョコレートをトッピングして出来上がり。
memo
イアンさんによるレシピはこちらから↓
https://iandowding.co.uk/banoffi-pie-the-original-recipe/
またハングリー・モンク・レストラン(2012年に閉店)によるレシピはこちらから↓
http://www.hungrymonk.co.uk/banoffi_pie
どちらも「オリジナル」ですが、若干の違いがあるのはレシピ進化の証でしょうか?名前の綴りも「Banoffee」から「Banoffi」へと進化したようです。
*オリジナルとは違いますが、トッピングは削ったチョコレートがお勧めです