スコッチ・エッグ
Scotch Egg
ある取材のため、モルトビー・ストリート・マーケットを久しぶりに訪ねました。ロンドン・ブリッジ駅から歩いて15分ほど。線路の高架下とその周辺エリアに広がる、週末のみオープンするこのフード・マーケットは、近くにあるバラ・マーケットに比べると歴史も浅く規模も小さいのですが、今や大変な人気で、マーケットのある狭い通りには人がひしめいています。
スモーク・サーモン、ドーナッツ、ブラウニーにバーガー。ここにはまさに「英国の口福」が溢れているのですが、マーケットを一巡してみてどうしても試さずにいられなかったのがスコッチ・エッグ。
英国人が「ピクニック・フード」として愛してやまないスコッチ・エッグは、日本でも既におなじみの食べ物ですよね。マーケットの屋台が気になったのは、ブラック・プディング入りやハギスの入ったもの、ベジタリアン用、そしてベーコンやマッシュルームが入った「ブレックファスト」など、日本では見かけたことのないような「変わりダネ」がたくさん並んでいたからです。さんざん迷った末に、ブレックファスト味を購入。値段は一つ4ポンド。半分はその場でトマト・チャツネと一緒に食べ、半分は自宅に戻ってからオーブンで温めていただきました。
ところでこのスコッチ・エッグ、「スコッチ」とつくからにはスコットランドの食べ物かと思っていたら、実はそうではないそう。というのも、ロンドンにある高級百貨店「フォートナム&メイソン」(F&M)がスコッチ・エッグを考え出したと公表しているのです。
同店のアーキビスト(公文書館専門職員)、タナー博士によると、スコッチ・エッグの起源ははっきりしないものの、F&Mでは1738年ごろに販売され始めたとのこと。旅人たちのために、持ち運びやすく、栄養価が高くてお腹にたまるものとして考え出されました。当時は現在よりやや小さめの卵が、刻んだ肉と野菜を味付けしたものでくるまれていたのだとか。名前の「スコッチ」については、「切る」という意味の「scotch」からきている、または「アンチョビが含まれている」ことを意味する、という説があるそうですが、どちらも確証があるわけではないようです。
現在ピカデリー店の地下1階デリ・コーナーで販売されているスコッチ・エッグは現代風にアレンジされたレシピだそうで、ひき肉を使った「トラディショナル」タイプに加え、チョリソー入りやブラック・プディング入りなど、種類も色々。そして、値段はなんとモルトビー・ストリート・マーケットの屋台よりも安い3.5ポンド! 現在でも1日に50個前後は売れるという安定した人気を誇っているそうです。
夏時間になって日も長くなり、まさにピクニック・シーズン到来の英国。今度のピクニックにはぜひスコッチ・エッグをお供にどうぞ。
簡単スコッチ・エッグ(3個分)
材料
- 卵(3個はゆで卵、1個は溶き卵用) ... 4個
- ソーセージ・ミート(スーパーで売られているソーセージを利用) ... 400g
- 小麦粉 ... 適量
- パン粉 ... 適量
- 油 ... 適量
作り方
- ゆで卵を3個作る。黄身の固さはお好みで固ゆででも半熟でも。
- ❶のゆで卵の周りに、ソーセージ・ミートをまんべんなくつけ、丸いボール型にする。
- ❷の上に小麦粉をまぶす。
- ❸の上に溶き卵を全体につける。
- ❹にパン粉をまぶす。
- 中のソーセージ・ミートに完全に火が通るように、170℃の油でじっくり揚げる。そのままでももちろんおいしいですが、英国ではウスター・ソース、ケチャップ、ブラウン・ソースや各種チャツネなどを合わせて食べる人もいます。
memo
スコッチ・エッグは冷たいままで食べることが多いようですが、温かいものを食べた方が断然おいしいと私は思います。揚げたてなら尚のこと、あとを引くおいしさです。