ニュースダイジェストのグリーティング・カード
Tue, 08 October 2024

英国の口福こうふくを探して

「英国料理はまずい」だなんて、言い古された悪評など何のその。おなじみのものから、意外と知られていないメニューまで、英国の伝統料理やお菓子には、舌が悦ぶものが色々あります。ぜひ一度ご賞味を。


No. 33

アップル & ブラックベリー・クランブル
Apple & Blackberry Crumble

Apple & Blackberry Crumble

8月の後半から今の時期、散歩の際の楽しみの一つがブラックベリー摘みです。これは、英国では道端や公園などでよく見かける、刺のある茎がくねくねと伸びた植物。ブランブルとも呼ばれるこの果物は、小さなつぶつぶが寄せ集まった親指の先くらいの大きさで、名前のように黒に近い色になったら熟れごろ。黒真珠のようにつやつやとした実は、そのまま口に放り込んでももちろんおいしいのですが、何と言ってもお勧めは、リンゴと一緒に「クランブル」にして食べる方法です。

クランブルというのは、私が英国で最も感動したお気に入りのデザートです。材料が小麦粉とバターと砂糖だけというシンプルさ。そして、こねたり形成したりの手間は一切なしで、ただ混ぜるだけ。それを適当なサイズに切ったフルーツに振りかけてオーブンで焼けば出来上がり。こんなに簡単なのにとにかくおいしいのです! 特にリンゴとブラックベリーのクランブルは、フルーツの酸味と甘いビスケットの(粉の)ようなクランブルとのコンビネーションが絶妙で、私の中ではクランブル界の横綱に位置付けされています。

クランブルの見た目は繊細さとはほど遠い、よく言えば「素朴」、どちらかというと「大雑把」と言えそうなものです。器に取り分けられた段階で既に「食べ残し?」と思ってしまう人もいるかもしれません(!)。でも、そんな気取りのないルックスがかえって家庭的な雰囲気を引き立てます。着飾ることをせず、初めはとっつきにくささえ感じても、知ってみるとクセになる……まるで英国人たちを体現したようなデザートとも言えそうです。

さて、英国中の誰もが知っていて、多くの人が「英国のトラディショナルなお菓子」と信じているこのお菓子ですが、歴史はそれほど古くないのだそうです。

「The Oxford Companion to Food」によれば、英国の料理書にレシピが登場したのは20世紀に入ってから。食料が配給制下だった第二次大戦時に、できるだけ少ない材料で作れるパイに似たデザートとして考えられたとも言われています。また同書によれば、「streusel」というオーストリアやドイツでケーキのトッピングとして使われているものから影響を受けているという説もあるとか。

ところで、このアップル & ブラックベリー・クランブルのもう一つの主役であるリンゴについて。英国ではクッキング・アップルと呼ばれる料理用のリンゴがあります。「ブラムリー(Bramley)」という品種がよく知られていて、これは生で食べると思わず口をすぼめてしまうほどの酸っぱさ。でも、加熱すると柔らかく煮溶け、かつリンゴらしい酸味が際立つのです。英国ではパイやケーキなどの甘いデザート以外にも、肉に合わせるソースとしてもよく利用されます。ごつごつと無骨な形をした緑色のリンゴ。今回のレシピではぜひこれを使って作ってみてください。

アップル & ブラックベリー・クランブル(4〜6人分)

材料

  • クッキング・アップル ... 750g
  • ブラックベリー ... 200g
  • 小麦粉 ... 180g
  • バター ... 80g
  • 砂糖 ... 80g
  • レモン果汁 ... 小さじ1

作り方

  1. ボウルに小麦粉、小さめに刻んだバター(冷蔵庫から出してすぐのもの)を入れ、さっくりとした粒状になるように指で混ぜる。
  2. ❶に砂糖を加えてさらに混ぜ、ポロポロのそぼろ状にする。
  3. リンゴの皮をむき、芯をとって、3ミリほどの厚さに切る。
  4. 浅めの耐熱皿にリンゴを入れ、上にレモン果汁を振りかけて混ぜ、その上からブラックベリーを入れる。リンゴとブラックベリーをよく混ぜ合わせる。
  5. ❹の上にクランブルを振りかける。このとき、リンゴ&ブラックベリー全体が隠れるようにクランブルで覆う。
  6. 180℃に予熱したオーブンに入れ、約40分(時々様子を見ながら)焼き、表面が奇麗なきつね色になったら出来上がり。
memo

熱々でいただいても、または冷めてもおいしいデザートです。英国人はカスタード・クリームやアイスクリームを添えていただきます。クランブルが余った場合には冷凍保存が可能です。

 

マクギネス真美マクギネス真美
英国在住の編集&ライター。日本での9年半の雑誌編集を経て、2003年渡英。以降、英国を拠点に、ライフスタイル、ガーデニング、食などの取材、執筆を行う。英国料理の師は義母。
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