アップル・シャーロット
Apple Charlotte
我が家の庭にはリンゴの木が3本あり、今、どれもがたわわに実をつけています。大収穫なのはよいのですが、完全無農薬(つまりほったらかし)のオーガニックなリンゴゆえか虫食いが多く、また、外側はきれいでも、切ってみると中から虫さんが顔を出す、というものがほとんど。なので、気軽にそのまま人に差し上げることもできず、毎日、リンゴのチャツネやアップル・パイ、アップル・クランブルを作っては家で食べたり、ご近所に配ったりしています。そんな日々が続いているので、家族もお隣さんも同じレシピにはそろそろ飽きている様子。ほかに何かリンゴを使ったデザートはないかと探していて見つけたのが「アップル・シャーロット」です。
人気テレビ・ドラマ「ダウントン・アビー」の第1シーズンで、名前だけ登場したのを覚えている方もいるのではないでしょうか。ダウントンで開かれるディナー・パーティーのゲスト、サー・アンソニー・ストラランの好物がアップル・シャーロットでした。グランサム伯爵夫人はサー・アンソニーの妹から送られてきたレシピを料理長のパットモアに渡して、デザートにはこれを作ってほしい、と頼みます。ところが料理長は、既に食材の調達など、準備は終わってしまっているから今さら変更はできない、とアップル・シャーロットを作ることをかたくなに拒否。結局、デザートは予定通りラズベリー・メレンゲに。というわけで、番組の中で実物を見ることはできませんでした。でもこの場面で、家政婦長のヒューズがレシピを見ながら「難しいことは何もないじゃない」と言っていた言葉に勇気づけられ、さっそく作ってみることにしました。
確かに(またもや!)シンプルなレシピです。材料は食パンとリンゴとバター、砂糖にレモンだけ。それも、古くなって固くなったパンをリサイクルできるという節約デザート。そう聞くと、No. 9でご紹介したサマー・プディングに似ている気もしますよね。でも、こちらは冷蔵庫で冷やすのではなく、オーブンで焼き上げます。まずは溶かしバターをしみ込ませた食パンを型に敷き、中にリンゴのコンポートを詰めます。さらに食パンで蓋をし、カリッときつね色になるまで焼けば出来上がり。あつあつのところに、これまた温かいカスタードをかければ、肌寒くなってきたこの季節にぴったりです。
ところで「シャーロット」といえば、ウィリアム王子とキャサリン妃の長女の名前としておなじみですが、このお菓子の名前は、ジョージ3世の夫人であったドイツ出身のシャーロット王妃(1744~1818) にちなんでいるというのが通説となっています。植物をこよなく愛し、リンゴ生産者たちの後援者でもあったという王妃。彼女も口にしたであろう秋の実りのデザートは、リンゴが旬のこの季節にぜひお試しください。
アップル・シャーロット(6人分)
材料
- リンゴ ... 450g
- 食パン(ミディアム・スライス) ... 8~10枚
- バター ... 120g
- カスター・シュガー ... 50g
- レモン果汁 ... 小さじ1
作り方
- リンゴをいちょう切りにし、カスター・シュガーとレモン汁を加えて弱火で柔らかくなるまで煮込む。
- 6個用マフィン型に合わせて食パンを切る。
- ❷の食パンに溶かしバターをぬり、マフィン型に敷き詰める。型の高さに合わせてはみ出た部分をカットする。
- ❶のリンゴ煮を❸の中に入れる。
- 溶かしバターを塗ったパン(丸くくり抜いたもの)で❹に蓋をし、上から少し押さえつけて形を整える。
- 200℃に予熱したオーブンで30分ほど焼く。パンがきつね色になれば出来上がり。
memo
大きめのプディング型一つで作ることもできますが、切り分けたときに見苦しい姿になってしまいがち。ラメキンと呼ばれる耐熱容器や、今回のようなマフィン型で、個別に作るのがお勧め。そのままでもカスタード・ソースを合わせてもおいしいです。