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Fri, 20 December 2024

英国の口福こうふくを探して

「英国料理はまずい」だなんて、言い古された悪評など何のその。おなじみのものから、意外と知られていないメニューまで、英国の伝統料理やお菓子には、舌が悦ぶものが色々あります。ぜひ一度ご賞味を。


No. 61

パーキン
Parkin

Parkin

11月5日はボンファイヤー・ナイトでしたね。以前、本誌でも特集されていましたが、1605年のこの日は、カトリック教徒たちが国会議事堂の爆破、ジェームズ1世暗殺というテロを計画し、失敗に終わった日です。

この時期に食されるものとして、1493号で「トフィー・アップル」をご紹介しましたが、今回は「パーキン」について。これは、こっくりとしたこげ茶色で表面がねっとりとした、ジンジャー風味のケーキ。中にオートミールと、砂糖を精製する際に副産物としてできるブラック・トリークル(糖蜜)が入っているのが特徴です。北イングランド、特にヨークシャーのものが有名なので「ヨークシャー・パーキン」と呼ばれることもあります。

ボンファイヤー・ナイトに食べるものというのは知っていましたが、これまで実物を食べたことはありませんでした。様々な資料を見ていると、どうやらヨークシャーやランカシャーなどでは地元のベーカリーなどで買うことができるものの、他の地域ではあまり市販品を見掛けないようなので、当然なのかもしれません。

でも、実物を食べてみないことには、ここでご紹介するわけにはいきません。そこでヨークにある有名ティー・ルーム「ベティーズ」から、ヨークシャー・パーキンを取り寄せることにしました。

ローフ型のパーキンは一つ4.95ポンド。ナイフを入れると、途端に生地が吸い付いてきて、ねっとり、しっとり感が伝わってきます。一口食べれば、こっくりとした甘さと生姜の香りで、ジンジャー・ケーキにそっくり。違いは、生地に混ざっているオートミールの歯ごたえがところどころにあること。それが、シンプルなケーキの程良いアクセントといった印象です。

表面はかなりねとねとなので、ともすると歯の裏にくっつきます。なので、それを舌でうまく剥ぎ取らなければならない場合もあるかもしれません。でもそれも、紅茶と一緒に流し込めばノー・プロブレム!

しっとり系だったり、ビスケットのようだったり。また、パウンド型やトレイ型など、固さや形に各地でかなりのバリエーションがあるパーキン。元は同エリアの主要穀物であるオーツ麦に蜂蜜で甘みをつけた焼き菓子ではないかと言われますが、正確な由来や歴史は明らかにはなっていません。確認できるレシピは19世紀半ごろまでさかのぼりますが、書物には残っていなくても、それより随分前から人々の間で食べられてきたことが想像されます。

ところでこのケーキ、焼き上がりをすぐには食べません。レシピにもよりますが、焼き上がってから3日~1週間くらい寝かせるのだそうです。でも、オーブンから香ってくるスパイスと混ざった甘い匂いは、一口、味見せずにはいられないほど魅惑的ですのでご注意を。

パーキンの作り方(ローフ型1個分)

材料

  • 小麦粉 ... 225g
  • オートミール ... 120g
  • バター ... 115g
  • ゴールデン・シロップ ... 50g
  • ブラック・トリークル ... 115g
  • 重曹 ... 小さじ1
  • ソフト・ブラウン・シュガー... 175g
  • ジンジャー(粉) ... 小さじ2
  • シナモン ... 小さじ1
  • ミックス・スパイス(製菓用) ... 小さじ1
  • 塩 ... ひとつまみ
  • 卵 ... 1個
  • 牛乳 ... 150ml

作り方

  1. ボウルに小麦粉、重曹、スパイス、塩を入れて混ぜる。
  2. ❶にオートミールと砂糖を加え、混ぜる。
  3. 小なべにバター、ゴールデン・シロップ、ブラック・トリークルを入れ、弱火で全体を混ぜる。
  4. 小さなボウルに卵を溶き、牛乳と混ぜておく。
  5. ❷に➌と➍を入れ、ダマにならないように全体をよく混ぜる。
  6. クッキング・シートを敷いたローフ型に➎を流し込む。
  7. 180℃に余熱したオーブンで45~60分ほど焼く。あまり焼き過ぎないように注意してください。
memo

料理書ではトレイベイク型で焼くレシピも多く見られます。焼き上がりすぐ、1日目、2日目、3日目と食べ比べましたが、確かに日が経つほどしっとり感が増して、味もなじんだような気がします。長期保存が可能で、かつてはパーキン専用の保存箱などもあったそうです。

 

マクギネス真美マクギネス真美
英国在住の編集&ライター。日本での9年半の雑誌編集を経て、2003年渡英。以降、英国を拠点に、ライフスタイル、ガーデニング、食などの取材、執筆を行う。英国料理の師は義母。
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