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Tue, 19 November 2024

英国の口福こうふくを探して

「英国料理はまずい」だなんて、言い古された悪評など何のその。おなじみのものから、意外と知られていないメニューまで、英国の伝統料理やお菓子には、舌が悦ぶものが色々あります。ぜひ一度ご賞味を。


No. 75

ボイルド・フルーツ・ケーキ
Boiled Fruit Cake

Boiled Fruit Cake

「ラブリー・トゥー・シー・ユー!」
久しぶりに、デヴォンに住む義父母の家を訪ねると、いつも通りに、車を降りた途端にぎゅっとハグをしてほっぺたにキスの挨拶。そして、荷物を運び込む前に「お茶はどう?」と、これも普段通りの言葉が続きます。今ではすっかり慣れた、この英国流の歓迎ですが、それでもこうして紅茶を勧められるたびに「ああ、英国らしいな~」と、微笑まずにはいられません。特に義母手作りのお菓子が一緒に登場したら、私の「ハッピー・バロメーター」は一気に上昇です。

「マミはボイルド・フルーツ・ケーキを食べたことある?」
期待通りに(?)私たちのためにお菓子を用意しておいてくれた義母が私に聞きました。

「ボイルド?」と、一瞬頭の中に「?」が浮かびます。「茹でた」ケーキだなんて、今まで聞いたことがありません。

「ボイルド・ケーキというのは食べたことも聞いたこともないけど、茹でてあるの?」

珍しそうに尋ねる私に、茹でるのはケーキに入れるドライ・フルーツで、それを小麦粉と混ぜ、卵を加えてオーブンで焼くのだと、電気ケトルでお湯を沸かしている間に、義母は丁寧に教えてくれました。そして、ダイニング・テーブルの上に置かれていたのは、表面がつやつやした茶色のフルーツ・ケーキ。「素朴」という表現がぴったりな、飾り気のないお菓子です。

義母によれば、これは「母がよく作ってくれたケーキの一つ」で、家族皆のお気に入りだったとのこと。つまり、私にとっては義理の祖母にあたる人から伝わるファミリー・レシピです。となれば、もちろん私もぜひ作り方を覚えたい。とはいえ、正直なところ、クリスマス・ケーキを代表とする、ドライ・フルーツがどっさり入ったお菓子は、私の得意な分野ではありません。

ところが、ひと口食べて驚いたのは、ケーキがふんわりしていること。ドライ・フルーツがみっちりぎっしりという見た目から想像した、重たいイメージとは全く違っていました。どことなく日本の蒸しパンに似た軽さともっちり感もあります。柔らかいスポンジに、水分を含んで瑞々しくなったフルーツがアクセント。ぱくぱく口に入ってしまいます。小さめのスライスを選んだはずが、結局、紅茶をお代わりするついでに、ケーキももう一切れ追加してしまいました。

二切れ目を食べ終えた私に、義母は古いノートを出してきてくれました。それは以前も見せてもらったことのある、50年ほど前から使っているというレシピ帳。茶色いシミがところどころについた紙面には、青い万年筆で几帳面に書かれた義母の手書きレシピが。私はそれをiPhoneのカメラに収め、家に戻ってから自分でも試しました。

既に5回ほど作りましたが、失敗知らず。義理のおばあちゃんのレシピを、私もどうやら受け継げたようです。

ボイルド・フルーツ・ケーキの作り方
(直径20センチの型1個分)

材料

  • レーズン ... 1カップ
  • サルタナ ... 1カップ
  • カランツ ... 1カップ
  • ライト・ブラウン・シュガー ... 1カップ
  • 水 ... 1カップ
  • 製菓用マーガリンまたはバター ... 170g
  • セルフ・レイジング・フラワー ... 2カップ
  • ベイキング・パウダー ... 小さじ1/2
  • 製菓用ミックス・スパイス ... 小さじ1/2
  • 卵 ... 2個

作り方

  1. レーズン、サルタナ、カランツ、シュガー、水、マーガリンを鍋に入れてよくかき混ぜながら煮る。沸騰してから10分ほど煮込む。
  2. ボウルにセルフ・レイジング・フラワー、ベイキング・パ ウダー、製菓用ミックス・スパイスを入れ、上から❶を加えてよくかき混ぜる。
  3. 溶きほぐした卵を粗熱をとった❷に加える。
  4. 敷紙をしたケーキ型に➌の生地を流し入れ、150℃に予熱したオーブンで約40分ほど焼く。途中で様子を見て、表面が焦げそうだったら、アルミホイルで覆う。竹串を刺してみて、生地が付いてこなければ出来上がり。
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上記は義母から教えてもらったレシピですが、オーブンの温度と焼き時間は我が家のオーブンに合わせて調整したので、皆さんも使用するオーブンによって加減してください。また、好みでドレン・チェリーやナッツ類を刻んで生地に入れてもおいしいです。

 

マクギネス真美マクギネス真美
英国在住の編集&ライター。日本での9年半の雑誌編集を経て、2003年渡英。以降、英国を拠点に、ライフスタイル、ガーデニング、食などの取材、執筆を行う。英国料理の師は義母。
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