サッカーの世界における会計処理
2018/19年度のサッカー・シーズンが終わりに近づいていますが、サッカー・クラブも他の事業者と同様に、会社法や財務報告基準、国際財務報告基準を順守する必要があります。今回はサッカー・クラブがさまざまな取引をどのように会計処理しているのかを見てみましょう。
シーズン・チケットからの収入は受け取った時点で処理するのですか。
シーズン・チケットとはクラブとサポーターの間の契約で、クラブがサポーターに対して規定の試合数に対する座席や施設を一定価格で提供するものです。シーズン・チケットによる収入は、試合が行われるごとに案分して計上します。
テレビとリーグ関連の収入はどのように処理するのですか。
この収入には、以下のような明確な区分があります。
• クラブがリーグ内に参加する際の固定料金。これはサッカー・シーズンを通じて、試合が行われるごとに計上します。
• 実績の要素は、シーズン終了時のリーグ内におけるクラブの順位で決まります。各クラブは、シーズン終了時に金額が確定した時点で計上できますが、この要素はシーズン中にリーグ内で達成するとクラブが考える順位に基づいて計上することも認められます。
• 生中継用の施設料。クラブは、その試合が行われた時に、この収入を計上します。
スポンサーシップ料は契約期間中に均等に支払われますか。
スポンサーシップ契約は、通常では契約に履行義務が組み込まれ、条件を満たすかどうかで支払額は増減します。たとえば、現在マンチェスター・ユナイテッドはアディダスと契約を結んでいますが、欧州チャンピオンズ・リーグに2年以上続けて参加しない場合には年間のスポンサーシップ料は減り、逆にプレミア・リーグやFAカップ、欧州チャンピオンズ・リーグなどで試合に勝てば、スポンサーの支払額は増えることになります。クラブは、契約の中で個別に特定できる実績の部分を公正価値に基づいて計上します。残りの部分には、通常ではシャツのスポンサーシップや広告などがありますが、これらは契約期間を通じて常に同様な義務と見なされるため、定額法により計上します。
選手たちの価値はどのように計上するのですか。
サッカー選手の獲得(選手登録権)に関する費用は、クラブが選手との契約開始時に無形資産として算出し、契約期間内にわたり償却します。選手の長期負傷などの状況により、会計上であらかじめ定めた個々の選手の帳簿価額を回収できない場合には、減損の判定が必要です。
選手を売却する際にはどうなりますか。
クラブは、受取金と売却した選手の選手登録権の帳簿価額との差額を、損益計算書に売却益または売却損として示します。選手の移籍契約では、売却するクラブに追加支払いが生じる時期、すなわち選手が一定数の試合のプレーを終える時期について定めた条項を盛り込む場合には、追加支払いに関連する条件が満たされる可能性が出てくるまで、売却する方のクラブは偶発負債と呼ばれる金額として開示します。
監督の契約終了時の支払いはどのように処理しますか。
契約終了時の支払いは、損益計算書の中で給与費用に経費として計上し、金額が大きければ、支払いの性質と金額を別に開示します。
イアン・ロウ
パートナー
会計監査部署に所属。25年以上の経験を様々なビジネスにて駆使し、また財務会計に関して企業の立場からアドバイスを提供する姿勢から、多くのクライアントの信用を得ている。