第11回 社会性が目覚める学校イベント
節目節目の大型行事が日本ほどはなく、物足りなさを感じることもあった英国の公立小学校でしたが、逆に日本の学校生活ではお目にかかれないような、社会と密着したイベントは結構ありました。その一つ一つの規模は小さいながら、子供たちも喜んで参加していました。
例えば、年に一度の「ワールド・ブック・デー」は、各自が好きな本の登場人物に扮装して登校する日で、その時期になると、大型スーパーなどの子供服売り場には様々な衣装が並びます。また、福祉団体や子供病院などのチャリティー組織に寄付するためのイベントや、学校の運営資金を集めるためのバザーやファッション・ショーも、子供たちが楽しみながら参加する学校行事となっていました。
特に英国で最大級のチャリティー・イベントと言われるのが、レッド・ノーズ・デー。2年に一度開催されるイベントで、今年は3月24日に行われますが、10年以上前に息子が小学校に通っていたころにも現在に劣らず盛んで、とても印象的でした。
レッド・ノーズ・デーで集まった寄付金はアフリカと英国の慈善活動に使われますが、アフリカの飢餓や英国が抱える様々な社会的な問題についても、子供ながらに理解し、寄付金集めに協力する。そうした「社会の一員としての役目」に子供たちが目覚める手助けにもなっていたように感じました。
校内で行われていた細々したイベントは、学校内外の寄付金集めに繋がるものが非常に多かったのですが、英国人にとっては幼いころからの習慣も手伝ってか、参加率や関心も高く、至極自然の行いのように受け取られている印象を受けました。やはり「教育」の影響は大きい、とうなずいてしまいます。
また日本ほどの季節の移り変わりは感じられないものの、季節ごとの行事も小学校時代は盛んに行われていました。先日のパンケーキ・デーでは春の訪れを感じ、次にやってくるのは日本の春休みに当たるイースター・ホリデー。夏のスポーツ・デーはご紹介した通りですが、秋になるとハローウィン、冬にはクリスマスも控えています。
ただし、息子の通っていた現地校では、全校生徒が100名に満たない小規模校だったせいか、これらの行事を牽引するのは、当時は先生たちではなく、主に保護者でした。先生方にとっては楽に見えるかもしれませんが、実は英国における教師の離職率の高さは近年、社会問題の一つになっています。それは日本の教育現場にはない、親の立場でも驚くようなプレッシャーが存在しているせいかもしれません。
次回からは、私が目にした、英国の教育現場が抱える様々な問題に目を向けたいと思います。
レッド・ノーズ・デーが行われる金曜日は、学校にも赤い鼻が目立つ