第10回 驚きの英国初等教育現場(その3)
日本で教育を受けた保護者の立場で見た英国の教育現場、なかでも初等教育の現場の違いには驚きの連続でした。今回は「学校行事」について触れたいと思います。
日本の小学校の先生にとって大きな負担だと聞く、運動会や卒業式といった大型行事が、ここ英国では実に簡素なスタイルで行われます。例えば運動会。こちらではサマータイム中の日が長くなる6月ごろに開催されることが多いのですが、事前の練習などはほとんどありませんでした。爽やかな初夏の午後6時過ぎ、「スポーツ・デー」と称された放課後に、日中帰宅した児童が保護者と共に再び学校へ集まります。そこで繰り広げられるのは短距離走やリレーなどで、前もって練習が必要な「見せる」ダンスや集団競技などは皆無でした。
仕事帰りの保護者も参観できる夕刻からの開催は、夏場なら夜の10時近くまで明るい英国ならではで、実にのほほんとした雰囲気の運動会です。教師陣も授業を離れて、児童や保護者らと親睦を楽しんでいる光景がそこにはありました。
日本では、保護者が教師に対して畏まって接してしまう傾向がありますが、英国では保護者と教師は対等。友人同士のような関係で、共に子供たちを育てていく「同志」や「仲間」という印象を持ちました。それだけに、日本の教師と保護者では話題にならないような身内間の悩みなども話し合える、とてもアットホームな感じでした。
また卒業式も、日本のような立派な式典は行われません。入学式に関してはないに等しく、各学期の始業・終了式も存在しません。普段と変わらず新学期が始まり、普段と同じように学期末を迎えます。通信簿もなく、その受け渡しもないので、気を付けていないと「あれ、もう今日から夏休みが始まるの?」なんて子供に質問してしまう有様です。
そして極めつけは、日本の小学校なら4年生ごろからあるクラブ活動がないことです。これは公立の初等教育に限らず、中等教育の場においても「放課後の部活」はまず存在しません。あっても教師が部活の責任を担うことはなく、恐らくは外部のスポーツ・インストラクターの指導による、いわば学校の体育館を間借りして運営されている活動がほとんどでした。
日本で教育を受けた者にとっては、これといった行事や節目節目の式典がなく、さらにクラブ活動もないとなると、実に物足りない学校生活に見えるのですが、その半面、教師にも児童にも本当の意味での「ゆとり」が感じられることも確かでした。
ぶっつけ本番、初めての競技に挑戦する低学年生
我が子を写真に収めたいのは、どこも同じ