「セレブリティ・シェフ」という言葉が使われ始めてから早10年。この間のグルメ・ブー ムは、金融やIT業界の新興グルメたちと一流シェフが生み出すレストラン・トレンドと、料理番組を通して世に啓蒙する料理トレンドの二方向から支えられてきた。
並みいるTVセレブ・シェフの中では、ゴー ドン・ラムゼイとジェイミー・オリバーが人気・成功度からいって両雄と言えるが、「pukka」「fuck」とやたら口が悪くて辟易するのも確か。そんなテキヤの兄ちゃん系と対極にあるのが、リック・スタインとナイジェラ・ローソンで、「品のあるインテリ・シェフ」 のイメージだ。魚介類中心のヘルシー志向と、こってり系という料理のスタイルこそ違え、この2人にはいくつか共通点がある。
まずは4年前に美術蒐集家、チャールズ・サーチと再婚したローソン。父は元財務相、母は食品会社Lyons Corner Houseの創業者の娘、兄は元日曜版「デーリー・テレグラフ」 紙の編集長、本人はオックスフォード出の華麗なる一族。母と姉、同じユダヤ人の前夫ともがんで亡くしているが、夫の闘病中、既にサーチと関係があったと言われている。
一方、スタインも5年前、27年連れ添った妻と3人の息子を捨て、20歳年下のオーストラリア人PRと再婚した。オックスフォード大英語科卒のスタインだが、兄は失読症や神経生理学を専門とする同大の教授。姉の前で自殺した父は酒造会社の社長で、母はケンブリッジ大とこれまたエリート。スタインにかかれば、単なる旅グルメが教養たっぷりの食文化紀行に変わるのも頷ける。
日本で言えば、お家柄のいい東大出の料理研究家か。おそれ多すぎる。