バウチャーのVAT処理
バウチャーのVAT処理が変更になるのですか。
英国ではバウチャーに関する新たなEU指令が施行されます。その狙いは、英国またはEU内で使用されるバウチャーのVAT処理を簡素化することです。新規則は2019年1月1日以降に発行されたバウチャーに適用されます。
この改正で、どのようなバウチャーが影響を受けますか。
影響を受けるバウチャーは、専門事業者から購入したギフト・カードやギフト・トークン、ギフト・バウチャー、電子バウチャーです。この改正は、割引のバウチャーやトークンには適用されません。
誰が新規則の影響を受けますか。
単一目的バウチャーや多目的バウチャーの購入、販売、または引き換えに関わる小売事業者や販売事業者です。
単一目的バウチャーとは何でしょうか。
単一目的バウチャーとは物やサービスのためのバウチャーで、発行時点でVATの支払い責任と物やサービスの供給場所が分かっているものです。こうしたバウチャーは、発行者は供給に対する実際のVATの支払い責任を計上できます。新規則では、現在のようにバウチャーが引き換えられた時点ではなく、バウチャーを発行した時点で、発行者がVAT申告で支払うVATを計上します。これにより発行者のキャッシュ・フローに影響が出ます。
購入される物やサービスが何であるか発行者が分かっていれば、この新たな取り決めは単純になります。例えば、バウチャーが大人の衣服を購入するためであれば、その供給は標準税率となり、発行者は発行したバウチャーの価値によりVATを支払います。一方、バウチャーが書籍や子供服を購入するためであれば、その供給はゼロ税率となり、VATを支払う必要はありません。
つまりバウチャーは供給を明確にする必要があり、それにより発行者は支払うべきVATを算出できます。
では、多目的バウチャーとは何ですか。
多目的バウチャーとは、単一目的バウチャーの定義に当てはまらないバウチャーのことです。言い換えれば、バウチャーの購入時点で発行者がVATの支払い責任を特定できないバウチャーです。この場合にVATは、発行時点ではなく引き換え時点に支払われます。
バウチャーに関わる事業者には、どのような影響がありますか。
これにより事務手続きが増えますが、歳入関税庁(HMRC)はこれを取るに足らないものと考えているようです。大きな負担となるのは、改正の前と後に発行されたバウチャーを区別し、改正後に発行された単一目的バウチャーを明確にするための管理費用になります。
多目的バウチャーを購入して販売する仲介事業者にも影響がありますか。
新たな規則では、多目的バウチャーの購入・販売に関わる仲介事業者は、VATを計上する必要はありません。バウチャーの引き換え時点でVATが支払われるためです。
2019年度予算についてはどうですか。
政府が2019年度の財政法をまとめる際に、この規則が再び改正される可能性がありますが、狙いはEUバウチャー指令を導入することにあります。
ポール・ブラッドリー
パートナー
VATパートナー。関税の領域で17年の経験を積み、通算20年以上この分野の専門業務に携わる。グローバル企業の頭を悩ますVAT問題を鮮やかに解決。F1観戦が趣味で、マクラーレンのファン。