IFRS第16号とグループ会計
IFRS(国際財務報告基準)第16号「リース」は、リースの会計処理を劇的に変えると聞いています。当子会社は英国会計基準(UK GAAP)で報告していますが、日本の本社には連結のためにIFRSベースにし数値を送っています。新しい会計処理は当社にも影響がありますか。
おそらく影響があります。日本の親会社が連結決算で日本会計基準を適用していれば、親会社は英国子会社を日本会計基準に調整するか、またはIFRS(International Financial Reporting Standard)を適用できます。IFRSを選ぶ場合には調整が必要になりますが、たとえ貴社が英国の財務諸表用にUK GAAPを用いていても、他の数値をIFRS用の数値にしなければなりません。
調整が必要になるのはリース取引だけではないのですか。
現時点では、日本の会計当局は在外子会社からの連結数値に関する公式な指針について、一般から意見を公募している最中です。このため、この問題はまだ議論中ですが、変化が起きる可能性は低いと思われます。
IFRS第16号には何と書かれていますか。
これまでリース取引は、オペレーティングリース(借り手が貸し手の資産を使うために支払いを行う)またはファイナンスリース(借り手が資産を取得し、それに対して一定期間にわたり支払いを行う)として計上されてきました。この制度では、よく似ている取引が貸借対照表で全て認識されることもあれば、全く認識されないこともあります。
かなり変則的なようですね。 これをIFRS第16号はどのように修正するのですか。
オペレーティングリースとファイナンスリースの区別を廃止し、ほぼ全てのリースを貸借対照表で認識する必要があります。これにより貸借対照表は、一定期間におけるリース資産の借り手による使用権の価額と、支払いについて関連した負債の価額を反映したものになります。
これにより数多くのリースが貸借対照表に計上され、かなり大きな影響がありますね。何か適用除外はありますか。
はい、この基準では低価額資産と短期資産に対する適用除外があります。基準自体は「低価額資産」について定義していませんが、基準の設定者たちは新規資産では約5000ドル(約56万円)以下の価額を念頭に置いていたとされています。同じような金額の基準が、関与する事業者の規模や性質に関係なく適用されます。
また借り手は、期間が12カ月以下のリースについては資産や負債とは認識せず、代わりにリース期間にわたり定額法でリースの支払いを認識することも選択できます。期間変更のオプションは、その行使が合理的に確実である場合はそれを考慮に入れることになり、購入オプションを含むリースであれば短期リースにはなりません。同様に貸し手に対して、公正価値で測定する投資不動産の適用除外があります。
これらは、いつから発効されますか。
IFRS第16号は、2019年1月1日以降に始まる会計年度からの発効ですので、既に発効しています。日本企業は決算期が3月のところが多いため、適用される最初の年度は2019年4月1日に始まる会計年度からになります。親会社と子会社の決算期が同じであれば、該当する最初の四半期決算報告は2019年6月30日に終わる四半期です。
ジョン・フィッシャー
パートナー
Ernst & Young、野村證券を経てグリーンバック・アランへ。会計技術はもちろん、高度なビジネス日本語を操り、日系顧客から大きな信頼を寄せられる。日本語スピーチコンテストでは2年連続入賞。