国際財務報告基準(IFRS)でのグループ会社の報告
当社は親会社が日本企業の英国子会社です。当社は年次財務報告で英国会計基準を、親会社は日本の会計基準をそれぞれ用いていますが、連結のために国際財務報告基準(IFRS)で親会社に金額を報告しています。この2年ほどに適用されたIFRSのさまざまな改訂は、当社にも影響がありますか。
主な改訂はリース会計、収益認識、金融商品に対するもので、全ての場合で認識と測定の規則に対する改訂が貴社にも影響を与えます。ただ開示要件の改訂については、おそらく心配はいりません。
リース会計の改訂については前号でうかがいましたが、収益と金融商品について改めて確認させてください。当社ではあまり複雑な活動は行っていませんし、日本に当社の金額を報告する際にも調整はしていません。
影響を受けるのは、金融デリバティブだけではありません。新規則は通常の売掛金にも適用されます。簡単に言えば、旧規則では過去の事由を考慮して売掛債権の価額を減額します。例えば債務者がすでに資金難に陥っていることを貴社が分かっているため、債務者が最終的に全額を支払わないであろうと減額するわけです。一方新規則では、貴社に支払われる額が全額より少なくなる可能性のある将来の事由にも目を向けて、予想する必要があります。これは予想信用損失と呼ばれます。
複雑そうですね。
そうかもしれません。もっと複雑な金融商品に関する規則は、もちろん非常に込み入ったものになります。ただ日常の売掛債権やその他の単純な金融資産には簡易規則があり、多くの場合でその結果は以前と同じか、少なくとも非常に近いものになります。ただし、結果に違いがないとしても、予想信用損失を考慮して規制を順守していると示せることが重要です。
では収益の会計処理に対するIFRSの改訂についてはどうですか。
これも同様な状況です。「5段階モデル」という具体的なプロセスがあり、企業はこれに従って認識する収益額や時期を判断するよう義務付けられています。これは煩雑な契約からの収益を正しく認識するために策定されたものですが、単純な取引にも同じように適用されます。このため、収益が非常に単純で、新規則での処理方法で違いが出ない場合でも、必ず従うことが必要です。重要な点は、親会社に報告する収益を算定する際に、「5段階モデル」に従ったと明示できることです。
その5段階モデルについて教えてください。
第1段階 顧客との契約を識別する
第2段階 契約に含まれる履行義務を識別する
第3段階 取引価格を算定する
第4段階 取引価格を履行義務に配分する
第5段階 各履行義務が充足される時点、または一定期間での収益を認識する
ご想像の通り、単に電気製品を卸売業者に販売しているだけであれば、この検討はおそらくかなり簡単なものになります。これに対して、発電所を建設しているとすると、非常に複雑になるでしょう。
ジョン・フィッシャー
パートナー
Ernst & Young、野村證券を経てグリーンバック・アランへ。会計技術はもちろん、高度なビジネス日本語を操り、日系顧客から大きな信頼を寄せられる。日本語スピーチコンテストでは2年連続入賞。