無人偵察機プロジェクトがとん挫
国防相への批判高まる
欧州空域での飛行許可が下りずにとん挫した無人偵察機ユーロホークの開発プロジェクトをめぐり、デメジエール国防相(キリスト教民主同盟=CDU)への批判が集中している。5月22日付のヴェルト紙などが伝えた。
ユーロホークは、米国ノースロップ・グラマン社が開発した無人航空機グローバルホークの一機種で、コンピューターによる遠隔操作によって上空20キロの高さを40時間飛行することが可能。連邦国防省が同機の購入を計画していたが、欧州航空安全局から飛行許可が下りず、購入を断念することとなった。
これに対し、野党から批判が噴出。国防省がユーロホークの開発に推定6億8000万ユーロの税金を投じていたことを指摘し、飛行許可に関する問題は2011年末時点で明らかになっていたにもかかわらず、連邦政府が同件の公表を怠ったと非難した。また、ドイツ納税者連盟も「脱税が罪になるのと同様、税金の無駄遣いに対しても、これを罰する法整備が必要」と主張している。納税者連盟の「税金の無駄遣いリスト」によると、昨年の連邦政府による税金の無駄遣いは推定250億ユーロに上るという。
今回の事態を受け、与野党からは現在進行中の無人偵察機プロジェクトを一旦すべて中止すべきとの声が挙がっている。CDUのバルトレ財政問題担当は、ドイツが4億8300ユーロを出資して参加している北大西洋条約機構(NATO)の無人偵察機プロジェクトについて、「欧州空域での飛行許可を確認した上でプロジェクトへの参加続行を決定すべき」と言明。社会民主党(SPD)のバルテルス国防問題担当も、「不確実な状態で、NATOに数百万ユーロも支払い続けることはできない」とコメントした。これに対し、NATO側は「我々は開発中のシステムに飛行許可が下りることを確信している」としている。
このほか、連邦軍の武器購入に際して背任行為があったとしてコブレンツ検察局が同件の捜査を開始しており、国防省の情報公開の不透明さに批判が高まっている。批判の矢面に立たされているデメジエール国防相は、ベルリン戦略会議で講演した際、ユーロホーク問題について言及したが、自身の責任を認める発言は行わなかった。