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Mon, 25 November 2024

育自の時間。親と子を育てる英国の学校

2002年に画家の夫とともに当時7歳の息子を連れてイングランド南西部コッツウォルズ郊外に移住。現地の小学校から大学受験までを実体験した母親の目から英国教育を見つめます。


第4回 現地校への転校の第一歩

日本から英国の公立小学校へ転校する場合、保護者として最初にしなくてはならないことは、転居先の通学圏内にある学校探しです。英国では日本のように児童だけでの通学は許されていません。イングランドでは12歳まで子供一人での通学やお留守番は、違法ではありませんが避けるべしとされています。つまり登下校の送迎は保護者の役目となるのです。

そのせいかもしれませんが、就学児童が事件に巻き込まれることは非常に稀で、ある年の統計では子供にとって安全な国として、英国は世界で2番目という高い評価も得たそうです。確かに、こちらでは「鍵っ子」などという概念は全くなく、子供一人でのお留守番がばれようものなら、ご近所さんから警察に通報され、保護者は「児童虐待」として訴えられるのを覚悟しなくてはなりません。

もちろん、地域によってはスクール・バスなどが整備されている学校もありますが、大概はセカンダリー・スクール(中学校)から。従って基本的には親自身が毎日送り迎えすることを想定し、さらに放課後も親の管理下に置かなければならず、「共働きの家庭は一体どうしているのだろう?」と当初は疑問に思ったものでした。

ともかくキャッチメント(学区域)の中でも、送迎可能な通学圏内の学校を絞り込み、良いと思えば地域の教育委員会ではなく、その学校の学校長宛てに入学希望の手紙を直接出します。受け入れOKの返事があれば問題ありませんが、評判の良い学校の多くは定員一杯で地元英国人の子供たちでさえウェイティング(順番待ち)・リストに入れられたりします。

また、英国の公立校の1クラスの児童数は最大30名までと決まっています。たとえ1名でも定員オーバーすることは許されず、その点は徹底しているのですが、逆に希望する地元の小学校へ入学できずに越境入学を余儀なくされる家庭も少なくありません。そのため希望の学校へ入学できなかった、または自分たちが良いと思う学校が見つからなかった保護者たちが結束してフリー・スクール*を作ったり、家庭内での教育を選択することもあります。

我が家の場合は、民家が50軒あるかないかの小さな村の小学校から転入許可を得て、2002年9月に晴れて転校しました。

英国の義務教育は日本よりも早く5歳から始まります。息子も日本では小学2年生でしたが、転校の際は現地校の第3学年に入ることになりました。学年度の始まりは夏休み明けの9月から。初めて体験する現地校の始業式に内心ワクワクしながら登校してみたら、始業式どころか、日本のような晴々しい入学式も卒業式もないことが後から分かり、何とも味気ない学校生活だと気落ちしたものでした。

*地方自治体の管理下にない半独立の形態の学校

小学校の下校
小学校の下校時。先生が一人一人の児童を保護者に引き渡す

 

小野まり小野まり NPO法人ナショナル・トラストサポートセンター代表。2002年、画家で夫の小野たくまさ氏とともに当時7歳の一人息子を連れコッツウォルズ郊外へ移住。現地の小・中・高等学校、大学受験を母親の立場として体験。教育関連の連載エッセイやナショナル・トラスト関連の著書多数。最新刊に「図説 英国ナショナル・トラスト (河出書房新社)」がある。
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