第17回 英国式お受験事情 その3
前回に引き続き、英国式中学受験についてのお話です。英国の中学校(セカンダリー・スクール)は11歳に達した年の9月から始まります。英国では、私立校へ通っている子供は全体のおよそ7%と少数派ですので、日本のような中学受験などとは縁がないような印象も受けますが、それは大間違いです。自分の体験からも、「本当に大変だったわ~」と、いま思い起こせば深いため息です(苦笑)。
英国の場合は公立校でも、地域によっては選抜試験で入学が許可されるグラマー・スクールがあります。いわゆる学業優秀な子供を対象とした進学校です。我が家の場合はグロスターシャーというイングランド南西部の行政区域に位置していて、無試験で入学できる公立中学校(コンプリヘンシブ・スクール)が42校、グラマー・スクールが6校あります。
公立の場合は小学校と同様、「キャッチメント」と呼ばれる学区域から志望校を選びます。グラマー・スクールの場合は、選抜試験の結果が合否の決め手になるため、この学区域の縛りは多少緩やかになりますが、最終的に選抜される際には自宅からの距離も考慮されますので、やはり子供が通える範囲の学校選びが重要です。
そして肝心の選抜試験の内容ですが、「11+(イレブン・プラス)」という筆記試験が行われます。この11+という選抜試験は、グラマー・スクールだけではなく、前回ご紹介したような私立校の選抜試験でも採用されています。従って、小学校から中学校へ上がる際に、私立、もしくはグラマー・スクールへ行かせようと思ったら、この試験の対策を練らなければなりません。
実はこの選抜試験は、日本の企業が新卒採用試験として行うSPI試験にとてもよく似ています。出題科目は言語(主に英語の単語合わせ)と非言語(主に図形)の2種類のほか、地域や学校によっては算数と国語(英語)も加わります。
11+はあくまでも子供のポテンシャルを判断する筆記試験(近年はウェブ形式もあり)のため、どの学校も「試験対策不要」とただし書きがあるのですが、それを鵜呑みにしている親はいません。子供の合格を願う教育熱心な親が受験対策に余念がないのは、日英ともに共通しています。
日本であれば、受験対策のための進学塾がたくさんあり、その選択肢も豊富ですが、我が家がこの英国式お受験を体験したのは10年以上前のことでしたので大変でした。塾もなければ、参考書や問題集の数も少なく、小学校には内緒で専用の家庭教師をつける、というのが当時の親たちの対策となっていました。
今では書店に大きな11+のみのコーナーがあり、家庭教師に加え、塾やオンライン学習を提供しているサイトなども多く、英国の受験ビジネスは盛んになっているようです。
書店の11+のコーナー