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Fri, 22 November 2024

育自の時間。親と子を育てる英国の学校

2002年に画家の夫とともに当時7歳の息子を連れてイングランド南西部コッツウォルズ郊外に移住。現地の小学校から大学受験までを実体験した母親の目から英国教育を見つめます。


第20回 英国流夏休みの過ごし方

英国の公立校もいよいよ夏休み。この時期は日本へ親子共々、里帰りされるという方も多いでしょう。我が家の場合、毎年夏は英国全土にあるナショナル・トラストで巡回個展を開催しているため、親子での里帰りはかなわず、子供の単身搭乗が許された日本の航空会社を利用して、12歳から一人で日本の祖父母宅へ一時帰国させていました。そのおかげで、日本語能力をなんとか保つことができたかな、と感じています。

息子が単身帰国できなかった小学生時代の夏休みは、ナショナル・トラストで親子一緒に様々なサマー・イベントを楽しみました。例えば、広大なカントリー・ハウスの庭園で繰り広げられるサマー・コンサートや、オープン・エアー・シアターなどは、蚊もいない爽やかな英国の夏ならではのイベントです。

現在、夫が展覧会を開催しているイングランド中西部ウスターシャーにあるハンブリー・ホール(Hanbury Hall)では、この夏は子供向けのオープン・エアー・シアターとして「たのしい川べ(The Wind in the Willows)」や「ピーター・パン」が上演される予定です。

通常、ナショナル・トラストの開園時間は午後5時まで(入園は4時半ごろまで)ですが、野外劇やコンサートのために閉園後の午後6時半ごろから再びゲートが開き、子供連れの家族が各々、ラグやチェアー、ジュースにワイン、そして簡単なスナックや軽食を持ち込んで、ピクニックが始まります。英国流に言うと、貴族のお庭での「ハイ・ティー」タイムです。

子供も大人も「ハイ・ティー」を楽しみ終えたころに、やおら芝居が始まります。時刻で言えば午後8時に近いわけですが、まだまだ日も高く明るいので、小さな子供たちは、フカフカの芝生の上で遊び、大人は晩酌にいそしんだりと、なんとも自由で緩やかな空気に包まれた、居心地の良い夏の夜のひとときです。

通常は子供を対象としていないことの多いジャズやクラシックのコンサートなども、ナショナル・トラストの場合は「家族で楽しめる野外イベント」として開催していますので、気兼ねなく参加することが可能。そうしたやや大掛かりなコンサートになると、「ハイ・ティー」タイムも長く、英国らしいハンパー・バスケットを持参したり、テーブルとテーブル・クロスを用意して本格的なガーデン・パーティーを決め込むグループもいたりと、まるで映画やドラマのワンシーンのような光景を目にすることもできます。

こうした体験は大人だけではなく、子供にとっても本当に良い思い出となっているようです。お時間がありましたらぜひご家族で、夏のひとときをお楽しみください。

鉄道博物館
ロンドン西部にあるナショナル・トラスト、「Osterley Park(オスタリー・パーク)」での「不思議の国のアリス」観劇風景

 

小野まり小野まり NPO法人ナショナル・トラストサポートセンター代表。2002年、画家で夫の小野たくまさ氏とともに当時7歳の一人息子を連れコッツウォルズ郊外へ移住。現地の小・中・高等学校、大学受験を母親の立場として体験。教育関連の連載エッセイやナショナル・トラスト関連の著書多数。最新刊に「図説 英国ナショナル・トラスト (河出書房新社)」がある。
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