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Fri, 22 November 2024

Life at the Royal Ballet バレエの細道 - 小林ひかる

第18回 バレエ講座: パドゥドゥ

3 November 2011 vol.1325

パドゥドゥ
いつかロイヤル・オペラ・ハウスの
舞台でも、2 人でパドゥドゥを……

バレエで「パドゥドゥ(Pas de deux:仏語)」と言えば、男性ダンサーと女性ダンサーが一緒に踊るデュエットのこと。踊っている女性を男性が優雅にサポートするというものです。どのバレエにも必ずあるこの「パドゥドゥ」の多くは、そのバレエ作品の最大の見せ場となっています。また、古典バレエのほとんどは、最終幕に「グラン・パドゥドゥ」(4曲構成で、アダージオ(パドゥドゥの別の呼び名)、男性のソロ、女性のソロ、コーダー(男女2人で踊る締め)から成ります)を設けて、場を盛り上げます。

一見優雅に、何でもないようにサポートをしている男性ですが、どれだけ女性をきれいに見せられるかが、男性の腕にかかっているので、そこには大変な筋力とコントロールが隠されています。もちろん、女性もなるべく男性を疲れなさせないように、しっかりと自分で立って踊らなければなりません。

パドゥドゥの難しいところは、組むパートナーによって、その人の癖やタイミングが違うので、そこをお互い分かり合い、呼吸をそろえていかねばならないということです。今は引退されましたが、現役当時は「パドゥドゥの達人」と呼ばれていた男性のコーチが、よくおっしゃっていました。「もし本番で女性がバランスを崩したり、回れなかったりしたら、理由は何であれ、それをフォローできなかった男が悪い!」。女性からしてみれば「何て素晴らしいお言葉!!」、男性からしてみれば「何て厳しいお言葉!!」になるでしょう。

現役だったころの彼は、それはそれは素晴らしいパートナーとして、女性のプリンシパルたちに引っぱりだこだったとか。自慢ではありませんが、私の主人(編集部注:ロイヤル・バレエ団プリンシパルのフェデリコ・ボネッリ氏)もそれに近いものがあります(……やはり自慢でしょうか?)。主人はベテランの女性プリンシパルからのご指名が多いため、彼と私はまだ、ロイヤル・バレエ団の本拠地であるロイヤル・オペラ・ハウスで一緒に踊ったことは一度もありません。日本で行われるガラ公演など、外部の仕事で踊ることはありますが、やはりホーム・シアターで一緒に踊りたいというのが本音です。

本物のカップルで踊るということの最大の強みは、やはり恋人同士の役などでの演技が自然にできるということです。よく人から、「本物のカップル同士で踊っていて、リハーサル中にケンカしない?」と聞かれることがあります。確かに身近な人だと本音が容赦なく出てきてしまうことがたびたびですが、仕事場では仕事のパートナーとしてわきまえるよう、お互い努力しています。

あるカップルのリハーサル中、「イスが空中を飛んでいた……」と言うようなことを耳にすることもありますが……。

 

小林ひかる
東京都出身。3歳でバレエを始める。15歳でパリ、オペラ座バレエ学校に留学。チューリッヒ・バレエ団、オランダ国立バレエ団を経て、2003年から英国ロイヤル・バレエ団に入団。09年ファースト・ソリストに昇進した。
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