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Fri, 22 November 2024

Life at the Royal Ballet バレエの細道 - 小林ひかる

第14回 多国語??

7 July 2011 vol.1308

多国語
多国籍料理のように、この「3カ国半」が
踊りにも良い相乗効果をもたらしてくれると
いいのですが……

「何カ国語話せるの?」とよく聞かれる私は、いつも「3カ国語半」と答えています。3カ国語半とは、まずは日本語、フランス語、英語の3カ国語で、「半」に値する語学は、イタリア語となります。 どうしてイタリア語が半なのかと言うと、私の主人(編集部注: ロイヤル・バレエ団プリンシパル・ダンサーのフェデリコ・ボネッリ氏)がイタリア人のため、バカンスや仕事でイタリアへ行く機会が多く、彼の家族と話すときにはもちろんイタリア語を使うのですが、実際に住んだことはないため、相手の話の内容は理解できるものの、自分からはなかなか流暢に話すことができないからです。

母国語の日本語の次は、初めて海外留学した国の言語であるフランス語が来ますが、近年、その2位の地位を、フランス語と英語が競うようになってきたように感じます。

ちなみに、主人との家での会話はフランス語。英国に住んでいながら、日本人とイタリア人の日常会話がフランス語というのは不思議らしく、いつもその理由を聞かれます。どうしてイタリア人である主人との会話がフランス語なのかと言いますと、主人と出会った当時、彼と私はともにスイスのバレエ団に所属しており、バレエ団の共通語がフランス語と英語だったのです。私はその頃、まだフランス語しか話すことができず、主人もイタリア語に近いフランス語を話していました。

先ほどフランス語と英語が2位の地位を争うようになったと言いましたが、主人と話すときに、ある単語を英語では分かっているのに、その単語がフランス語で出てこないため、会話がチャンポンになってしまうことがしばしばあります。

例えば、「Tu peux mettre hot water in the ba thtub? ( Can you put hot water in the bathtub?)」とか、「Yes, je vais m'occuper tomorrow. (Yes, I will take care tomorrow.)」などなど……。さすがにフランス人の前で話すのが恥ずかしくなってきました。

今では、海外生活の中で英国が一番長く住んでいる国になったため、書くことも、読むことも、フランス語より英語の方が断然やさしくなってしまいました。3カ国半の言語を話せることは自分の宝となりましたが、逆にどれも中途半端になってしまっているような気もします。日本語でさえ、ロイヤル・バレエ団の日本人同士の会話で英語とチャンポンにしてしまったり、勝手に日本語を作り替えてしまい、よく皆に笑われます。日本語の本を読むことや、このようにコラムを書かせていただくことが、大の助けとなっています。

自分の踊りのスタイルにも、3カ国の要素を取り入れるようにしていますが、こちらも言語同様、そう簡単にはいきませんし、どれもまだ納得いくレベルまでには達していません。多国籍料理のように、バラエティーに富んでいるとおもしろいと思いますが、どれかしっかりしたベースがあると、他の要素を生かすのに役立つのではないでしょうか。そのベースが、英国になっていくような気がするこの頃です。

いつか英国をベースに、各国の要素を生かした踊りのスタイルを確立できる日が来る多国籍料理のように、この「3カ国半」が踊りにも良いといいのですけれど……。

 

小林ひかる
東京都出身。3歳でバレエを始める。15歳でパリ、オペラ座バレエ学校に留学。チューリッヒ・バレエ団、オランダ国立バレエ団を経て、2003年から英国ロイヤル・バレエ団に入団。09年ファースト・ソリストに昇進した。
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