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Mon, 23 December 2024

知っているようで知らない
英国のチーズ。

英国のチーズ。

オランダ、フランスとチーズの有名な国はあるが、英国にも優れたチーズがたくさんあることをご存知だろうか。英国内でチーズが製造されるようになったのはさかのぼること2000年以上前。当時は修道院など局所的に作られていたチーズだが、現在はオンラインで英国各地の名産チーズを身近に楽しめる良い時代になった。今回は英国を代表するチーズとそのエピソードを紹介する。(文: 英国ニュースダイジェスト編集部)

参考: www.gourmetcheesedetective.com、www.petersyard.com、www.theguardian.com、www.bbc.co.uk、https://cheese-store.com ほか

あなたに合うのはどのチーズ?
英国の有名なチーズ

英国には750種以上も国産チーズがある。その中からスーパーマーケットで買えるものから変わり種までを厳選してみた。あなたの好みに合うのはどのチーズ?

 

スーパーで買える 王道チーズ

Double Gloucester ダブル・グロスター

Double Gloucester
ダブル・グロスター

15世紀から英西部グロスターで製造されているハード・タイプのチーズ。さっぱりとした酸味が感じられる「シングル」と、まろやかで濃厚な「ダブル」の2種があり、どちらもグロスター牛の乳から作られている。丘の上からチーズを転がすクーパーズ・ヒルのチーズ転がし祭りで使われる品種だ。

Stilton スティルトン

Stilton
スティルトン

ロックフォール、ゴルゴンゾーラに続く世界三大ブルーチーズの一つで、ダービーシャー、ノッティンガムシャー、レスターシャーの3地方のみで生産されている。外皮も食べられ、塩気のあるクリーミーな味わいが特徴で、強い香りがあるものの比較的食べやすい品種。王室の食卓にもよく上るのだとか。

Cheddar チェダー

Cheddar
チェダー

英南西部サマセットにあるチェダー村発祥のチーズ。名前が法律で保護されていないため世界各地で同名のチーズがあるが実は英国発のもの。牛乳から作られ、ポロポロと崩れるものからなめらかなものまで、チーズの成熟度によって異なる食感が楽しめる。英国人が好きなチーズの上位によくランクインする。

Red Leicester レッド・レスター

Red Leicester
レッド・レスター

牛乳から作られているハード・タイプのチーズ。熟成が進むにつれ味が強くなり、少し甘めで、キャラメルのような旨味を感じられる頃合いが良いとされている。特徴であるチーズのオレンジ色は植物由来の色素、アナトーで着色。チェダーに似ているが、こちらの方がよりマイルドな味わいだ。

Cornish Brie コーニッシュ・ブリー

Cornish Brie
コーニッシュ・ブリー

フランス産が有名だが、英西部コーンウォール発のクリーミーで柔らかなブリーも負けていない。現在はコーニッシュ・カントリー・ラダーなど、特定の業者によって製造されている。サラダやサンドイッチ、パスタなどあらゆる料理に合わせやすく、大変使い勝手の良いチーズだ。

Cheshire チェシャー

Cheshire
チェシャー

英国の最も古いチーズの一つ。長時間の輸送に耐えられるようハードに作られており、かつ簡単に製造できるため、現代では工場での大量生産と小規模の生産者によるより濃厚な味わいの2種に大きく分けられる。ピリッとした後味のアップルビーズ・チェシャーなど、数多くの種類がある。

 

特定のドリンクに合わせて 〇〇に合うチーズ

Wensleydale ウェンズリーデール

Wensleydale
ウェンズリーデール

12世紀に修道院で作られ始めた歴史あるしっとりタイプのチーズ。ヨーグルトのような程良い酸味があり、デザート感覚で食べられる。クランベリーやアプリコット、ルバーブなどの果物や野菜が練り込まれた商品も人気。クランブル、フルーツ・ケーキやリンゴなどに添えて、紅茶と共に食べるのがお勧め。

Sage Derby セージ・ダービー

Sage Derby
セージ・ダービー

緑色の大理石模様で見た目もインパクトがあるチーズ。緑色の要因はセージで、元々はクリスマスなど特別なときに食べられていた。味はチェダーのようなマイルドな食感で、クリーミーな味わいの中にハーブの香りが感じられる。果物や鶏肉料理、白ワインに合わせれば、より爽やかな味が堪能できる。

Lancashire ランカシャー

Lancashire
ランカシャー

クリーミー、クランブリーなどさまざまなタイプがあり、バターのような濃厚な風味が美味。同味のクリスプスも販売されているほど、ビールのおつまみとして最高の組み合わせだ。トーストに載せたり、サンドイッチにしても◎。黒いワックスでコーティングされたランカシャー・ボムも有名だ。

 

一度は食べてみたい 変わり種チーズ

Stinking Bishop スティンキング・ビショップ

Stinking Bishop
スティンキング・ビショップ

「臭い司教」という不名誉な名前の通り、独特で鼻をつく強い香りがする。この特徴的な香りは同名の梨の果汁を発酵させた液体で外皮を洗い、熟成させたため。スライスしたパンやクラッカーに付けて食べると、もったりとした濃厚な味が楽しめる。保存の際はラップやタッパーで密閉するのが安心だ。

Cornish Yarg コーニッシュ・ヤーグ

Cornish Yarg
コーニッシュ・ヤーグ

牛乳から作られたセミ・ハードタイプで、イラクサの葉で包まれたキノコのような味のチーズ。17世紀のレシピを偶然見つけたアラン・グレイという人物によって1980年代に製造されたもので、グレイの名前を逆さにし、ヤーグと名付けられた。イラクサの代わりにニンニクの葉で包んだガーリック味も人気。

Hereford Hop ヘレフォード・ホップ

Hereford Hop
ヘレフォード・ホップ

チーズ製造会社のチャールズ・マーテルが作った比較的新しいチーズ。牛乳から作られたチーズを焼いたホップでコーティング。外側はカリカリ、内側はわずかな苦味とレモンのような柑橘系の味が感じられる複雑な味わいが特徴で、ビールはもちろん、トーストに載せても良い。

ここで買える! ロンドンにあるチーズ専門店

pistachio & pickle

6 Camden Passage, London N1 8ED
Tel: 020 7354 0656
火~日 10:30-17:00
www.pistachioandpickle.com

Cheese Hub

52 Broadgate Link, North Mall, London EC2M 7PY
Tel: 020 7628 6637
月~木 10:00-17:00 金 11:00-19:00
https://cheesehub.com

Neal's Yard Dairy

Covent Garden Shop, 17 Shorts Gardens,
London WC2H 9AT
水~土 10:00-18:00
www.nealsyarddairy.co.uk

英国人はどう付き合っている?
チーズにまつわるエトセトラ

英国人はチーズをどのように楽しんでいるのだろうか。英国産チーズとの付き合い方から、チーズにまつわるエピソードまでを集めてみた。

英国チーズの歴史

欧州の北部に位置し、温暖な気候と頻繁に降る雨によって牧草が育つ自然条件に恵まれている英国。牛乳を長期間保存するために生まれた同国のチーズづくりは、古代ローマ時代以前にさかのぼる。初期の製造元は農民や修道院などに限定的されていたが、時代の荒波に揉まれた結果、その生産方法などは著しく変化を遂げていった。

16世紀前半にヘンリー8世がアン・ブーリンと結婚するためにローマ・カトリック教会から分離し、修道院を閉鎖したことにより、同国のチーズ製造は大々的にストップしてしまい、英国のチーズ製造業は衰退の一途をたどる。17世紀ごろ、町の発展と人口増加に合わせた大規規生産を可能とした近代的なチーズづくりが復活したが、一方で職人たちによる小規模なチーズづくりは減少。20世紀に入ってからも第一次、第
二次世界大戦の被害を受け、再び安定して生産が始まったのは今からたった50年あまり前のこと。現在目にできる元祖英国チーズのチェシャーとランカシャーは、そんな負の圧力に耐えながらこの数世紀で洗練されていったものなのだ。

英国には現在750種を超えるチーズがあり、これはフランス産約400種のほぼ2倍にあたる。英国内のスーパーマーケットの棚に並ぶもの、日本に輸入されるものはこれらのほんの一部でしかない。チーズ専門店はもちろん、オンライン・ショップもたくさんあるので、ぜひお気に入りの一品を探してほしい。

第一次世界大戦中、仏人店主に「ミサのためにパンとバターとチーズをください」と尋ねる英准大尉第一次世界大戦中、仏人店主に「ミサのためにパンとバターとチーズをください」と尋ねる英准大尉

チーズは食後にいただくもの

日本や米国のレストランでは、前菜にチーズの盛り合わせが提供されることがあるが、フランスなど欧州の国ではデザート前、英国ではデザート後にチーズがサーブされることが普通。デザートを食べた後にチーズ、というのは数世紀前からの伝統で、英作家チャールズ・ディケンズの小説「マーティン・チャズルウィット」(1843年)でも食事の最後にセロリと一緒にチーズが提供されているくだりがある。昨今では「デザートの後に赤ワインを飲みたくない」と、チーズが出される順番に疑問を感じている英国人もおり、しばしば新聞のネタに上がるほど。ちなみに科学的にはチーズを食事の最後に食べることは良いとされており、人間は食事をすると口の中が中性から酸性に変わるので、チーズを食べることでアルカリ性に保ち、歯の酸化を防ぐのに活躍してくれるそう。

英国チーズは、ポート・ワイン、ブドウ、リンゴ、洋ナシ、セロリ、ピクルス、チャツネ、クラッカーなどを合わせて食べるのが定番だ。

ウイスキーとのペアリングも人気があるウイスキーとのペアリングも人気がある

スティルトンを食べると変な夢を見る

チャールズ・ディケンズの有名な小説「クリスマス・キャロル」のなかに、スクルージがチーズひとかけで知覚が狂ってしまう、と表現するシーンがある。そのエピソードから「寝る前にチーズを食べると悪夢を見る」という説が定着し、特に英国が誇るブルーチーズ、スティルトンを就寝前に食べると変な夢を見る、というまことしやかな説が有名だ。スティルトンを含む英国産のチーズを食べると良い夢、悪い夢を意図的に見ることができるのか、という夢の研究が2005年になされた。一言断っておくと、この研究は英国でチーズを宣伝する団体ブリティッシュ・チーズ・ボード(British Cheese Board)によるもので、巧妙なマーケティング手法の一つであったようだが、興味深い結果が出た。男女200人、7日間に渡る調査により、「スティルトンを食べると奇妙な夢、レッド・レスターでは学生時代などの過去、ブリティッシュ・ブリーを食べる女性はリラックスした情景、男性は謎めいた夢、ランカシャーは未来、チェダーは有名人のことを夢に見る割合が上がった」のだそう。就寝前のチーズがさまざまな夢を誘発し、より現実離れした面白い光景を見せてくれるということは事実のようだ。

寝る前のスティルトンで不思議な冒険に出てみ
てはいかがだろうか寝る前のスティルトンで不思議な冒険に出てみてはいかがだろうか

 

チーズを使った表現

英語にはチーズという言葉を応用した表現やことわざがある。その一部を紹介しよう。

To Cheese (someone) Off
誰かを怒らせたり、イライラさせたりすること

Cheese it!
やめろ! よせ! 相手に何かをやめるか、逃げるかを言うこと。19世紀に泥棒たちの間で使われていたスラング

Chalk and Cheese
見た目が似ているが、中身は全く異なる性質のもの

Tough/Hard/Stiff Cheese
苦難を受けている人に同情していない、相手のためにできることが何もないことを示すために投げかける言葉

Cheesy
安っぽい

Cheesy romance
感情的で安っぽくロマンティックすぎる、安っぽいラブソングにも使える。また、公共の場での過度なイチャつきや愛情表現など安っぽい男女間のやりとりを表す

Cheeze
お金。またはヴィーガン用チーズのこと

Cheeseparing
お金を使いたくない人、ケチケチした、しみったれた様子

 

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