57 フリーランス・自営業と書類の保存
ネットを使って誰でも簡単に、しかもドイツにいながら日本の仕事をすることができる時代になりました。ドイツで配偶者ビザを取得して滞在している場合には、そのままフリーランス・個人事業を行うことが可能です。子育て中で勤務が難しい方でもパソコンとネットさえあれば、好きな時間や合間の時間で仕事をすることもできます。子育てが一段落するまでの間は再就職先を見付けることが難しい場合も想定されます。
そこで子育て中から時間と場所に縛られない仕事の仕方を積み上げていけば、その後もより自由な形で仕事をすることができるようになるかもしれません。しかし、少しでも収入を得るようになれば、手続きや会計の必要が出てきます。日本ではパート収入が103万円まででそれ以外の収入がない場合には税金がかかりません。そのため年間100万円分くらい稼いでも申告しなくて良いと安易に考えている方もいるようですが、ドイツでは結婚している場合は配偶者の収入と合算した年収に対して税率が決まり、年間収入410ユーロ以上で所得税がかかるのです。
1年までの滞在やワーホリで滞在を延長する予定のない場合は、ドイツ滞在中のフリーランス収入も日本でのみの申告で済みます。1年を超えてドイツに滞在している場合は、日本側からすると非居住者扱いになり、仕事先が日本などのドイツ国外で、日本円の報酬を日本の銀行口座で受けていたとしてもドイツでの申告が必要になります。今年2017年より世界の銀行口座は各国間で情報交換されることになっており、現在は移行中です。そのため、申告しないでいると後で遡って徴税されるということもあり得ます。日本での収入で口座の記録や他の証拠書類が例え日本語であっても、ほかのドイツでの証拠書類同様に必ず整理して保存しておきます。いつ税務署に提出を求めてられても、税務署員が見て分かりやすいように、ドイツ語または英語で何の書類なのかを明記しておきましょう。フリーランス・個人事業主の場合は証拠書類は10年間の保存義務があります。従業員の場合は確定申告が終わり税務署発行の納税通知(Steuerbescheid)を受け取れば、書類は処分することができます。
バイマやそのほかの方法で個人輸入代行をしている場合には、単に請求書と入金の記録だけではなく、仕入れた商品がEU外に実際に輸出されていることを証明する書類が必要です。というのはEU内でのB2Cの販売の場合は売上税がかかりますが、EU外への販売はドイツの売上税が免除されます。税務署側からすれば売上があるのにそれに対する19%の売上税を免除するわけですから、その条件である商品が本当にEU外に対して販売するのかを確かめたいわけです。個人輸入代行業をしている場合はかなりの確率で、税務署の審査が入り税務署員が実際に自宅にやってきます。
そこで証拠書類が必要ですが、書留で送っている場合にはその書類だけでも足りる場合もあります。どちらにしても、いつ・どこの・誰に・いくらの・何を・どれだけ売ったのかの記録を取っておき、仕入れた商品と照合できるようにしておきます。バイマなどのプラットフォームを使っている場合には、英語版の販売リストを取得しておきます。輸出していることが充分に証明できない場合には、その分の売上に対する売上税を払わなければならなくなることがありますのでご注意ください。