ニュースダイジェストの制作業務
Wed, 17 December 2025

LISTING イベント情報

角田光代さんインタビュー

作家
角田光代さん
インタビュー

1990年のデビュー以来、数々の文学賞を受賞している人気作家の角田光代さんが訪英し、ロンドンで国際交流基金主催のトーク・イベントにゲストとして出席した。このイベント前の忙しい時間の合間を縫ってインタビューに応じてくださった角田さんに、翻訳について、そして現代社会で女性が置かれている立場について、お話を伺った。

Profile


かくた みつよ: 神奈川県出身。早稲田大学第一文学部文芸専修卒業。1990年に「幸福な遊戯」で第9回海燕新人文学賞を受賞し、プロ・デビュー。以来、「空中庭園」で第3回婦人公論文芸賞、「対岸の彼女」で第132回直木三十五賞、「八日目の蝉」で第2回中央公論文芸賞、「紙の月」で第25回柴田錬三郎賞などを始め、多くの文学賞を受賞。また作品の多くがテレビ・ドラマ化、映画化されている。

今回、英国のあと、すぐスペインへ行かれるそうですね。

スペインのバルセロナで「サロン・デル・マンガ ※1」というイベントがあり、吉本ばななさんと一緒に出席する予定です。

※1 今年で22回目を迎えた、日本の文化を紹介する大規模 なイベント。マンガだけに留まらず、今年は「日本文学」がテーマだという。

角田さんの作品は英語だけでなく、スペイン語やブルガリア語など様々な言語に訳されています。ご自身も絵本の翻訳をされますが、英語に訳されたご自分の作品をチェックすることはありますか。英語では現在、短編5作がキンドルの形で発表されています。

読んでも、そのニュアンスが正しいかどうか分かるほどの英語力はないので……。ただ読んで感激するばかりです(笑)。

海外の読者が、翻訳されたものを通してどのように角田さんの作品を理解しているか、気になり ますか。例えば角田さんの作品の幾つかは、日本ならではと思えるような独特な状況に置かれた女性を主人公にしています。

最初に英訳された作品は「対岸の彼女」ですが、このプロモーションのため米国へ行き、現地で大学生の人たちとトークをするイベントに出席する機会がありました。このとき、彼らから「 いじめ」が日本ではこんなにすごいのかというような質問をたくさん受けました。実は話の大筋とはあまり関係のないこの「いじめ」に大きなスポットが当たったのは意外に思いました。また、ヨーロッパでは「八日目の蝉」に対して、「日本で女性はこんなに虐げられているのか」というようなことを言われたりもしました。

違和感のみに目がいってしまったということでしょうか。では、あえて海外の読者に向けて書いてみるというチョイスは考えたことはありますか。

いえ、それはありません。日本の社会の中で女性として生きて、何が息苦しく、何が問題なのか。その空気の中で書くのが私の基本になっているのです。翻訳されることを前提にして書くというのは考えられません。ただちょっと思ったのは、先ほどの米国でのトークで気が付いたのですが、彼らは翻訳された小説を読むこと自体に慣れていないのではないかと。日本では、私もそうですが、皆が小さいころから海外の翻訳本を読んでいます。例えばキリスト教的考え方というのも、それが何かよく分からなくても、そういう宗教や文化があるとして、日本人はそのまま受け入れる。米国などではそういう読書感覚が薄く、文化の違いに戸惑う場合もあるのかもしれません。

翻訳といえば、角田さんはNGOのプラン・インターナショナル・ジャパンで、ボランティアで翻訳活動をされているそうですが、これはどういった経緯で始まったのですか。

2009年に女性誌の依頼で、プラン・インターナショナルの「Because I'm a Girl ※2」というキャンペーンの取り組みを紹介するため、アフリカのマリを視察したのが最初です。それがきっかけでこのキャンペーンに賛同し、サポーターになりました。2年に1度、女性が虐げられている国へ行き、視察リポートを書いています。そんな中、「Because I'm a Girl」という本が英国で出たので、これを訳してほしいという話になったのです。

※2 Because I am a Girlは、国際NGOプラン(本部は英国)が展開する世界的なキャンペーン。女性であるゆえに、様々な困難に直面する途上国の少女たちの問題を訴え、彼女たちが生きていく力を身に付け、途上国の貧困が削減されることを目指す。角田さんが訳したのは、キャンペーンの主旨に賛同した7人の作家がそれぞれ異なる国を取材し、その体験を基に執筆した短編集「Because I am a Girl ―― わたしは女の子だから」。

角田さんの作品は、多くの女性の読者が主人公に自分を重ね合わせて、「自分でもこう行動するだろう」「こんな風に思うだろう」と共感しています。女性について描くことが多いのは、自然にそうなるのでしょうか。それとも、次はこのプロジェクトでいこうという風に決めるのですか。

女性に興味があります。今の日本で生きていると、やはり女性の方が大変だと思うし、立場としての変化が激しいので、描くのが面白いということもあります。女性ばかり描くと言われて反発して、男性を主人公にしたこともありますが、基本的にはやはり女性を描きたいという気持ちの方が強いです。

では最後に、今後のご予定をお聞かせいただけますか。

去年から始めたのですが、2018年までは3年掛けて「源氏物語」を現代語に訳しています。これは河出書房の日本文学全集の一環で、現代作家が古典を訳すシリーズのうちの一つです。2018年までは自分の小説は連載も入れず、こちらに集中する予定です。2019年には、新聞連載が決まっています。東京オリンピックが2020年なので、何かオリンピックに関連したものをと言われていますが、まだきちんとした構想は立てていません。

 

フォトコンテスト2016受賞者発表!

ニュースダイジェスト主催フォトコンテスト2016受賞者発表!

フォトコンテスト2016日常のふとした発見から、欧州ならではの伝統と歴史を切り取ったものまで、各自の解釈に基づく多くの力作が届いた、ニュースダイジェスト主催のフォトコンテスト2016、いよいよ受賞者の発表です。審査員によると今回は例年以上にレベルが高く、選考が非常に難しかったとのこと。では応募者の皆さんの思いがこもった作品を早速、見ていきましょう。

テーマ「海外生活の一コマ」

王冠 マチュア部門大賞

「見て!!」
クリチンスキ グジェゴジュさん英国

「夏。」カステルノー キミコさん

息子の2歳の誕生日に、家族で彼の大好きな蒸気機関車に乗りに行ったときに撮影しました。初めて聞く汽笛の音にワクワクしている表情がガラス越しに見えているところが、とても気に入っています。思い出に残る写真をこれからも撮っていけたらと思います。

審査員コメント

汽車の窓から外を見る男の子の本当に幸せそうな顔が窓に映っていますが、この表情が作品の主役ですね。喜びと期待に満ちた様子が見事に捉えられています。親御さんとしても誇れる一枚ではないでしょうか。 by Canon Europe

大賞 キッズ部門大賞

「負けた~」
加藤 仁菜さん(7歳)英国 

「負けた~」加藤 仁菜さん(7歳)

ロンドン日本人学校の運動会で、白組の私は勝ちました。負けてしまった、赤組のお兄ちゃんとお友だちは、芝生に寝転んで悔しがっていました。大賞に選ばれたと聞いてびっくりしたけれど、すごくうれしかったです。これからは自分のカメラで、お友だちや家族の面白い写真をたくさん撮りたいです。

審査員コメント

小さなフォトグラファーの視点で世界を見つめ直すのは新鮮ですね。疲れ切った少年たちのうちの一人の妹さんによって撮影されたという点に興味惹かれました。才能ある妹さんによって、非常に親密な瞬間が捉えられています。 by Canon Europe

大賞 マチュア部門特別賞

「お誕生日おめでとう!」
関根 祥二郎さんイギリス 

「「実感、夏の終り。」留岡忠雅さん

カメラ歴は50年程です。王室の公式行事には、英空軍アクロバット・チーム「レッド・アローズ」のフライパスがあるので、以前にも撮ったことがあります。エリザベス女王90歳誕生日の今回は、今までの失敗と経験が生かされ、タイミング良く撮れたと思います。

審査員コメント

この作品は要点を押さえ、構図もほぼ完ぺきです。あっという間に飛び去るレッド・アローズと、スマートフォンを構える観客の姿が絵になっており、煙とユニオン・ジャックの色彩も鮮やか。新聞の1面にも使えそうです。by Canon Europe

「ある雨の日の偶然」
高橋 志帆 さんイギリス

「ある雨の日の偶然」高橋 志帆 さん

イギリスに着いたばかりで知り合いも少なく、物思いにふけることが多かったときに撮った写真です。イギリスの街には建築も雰囲気も、雨の日だからこそ気付く美しさがあるように思い、その一瞬を写真にすることができました。今回 の入賞を自信につなげていきたいです。

審査員コメント

石畳の水たまりに映った風景を切り取るアングル、カメラ・ポジションが素晴らしい。人・建物・空の構図と、モノトーンの画像の中に建物の装飾の煉瓦色だけを写し込んだ色の構成が印象的です。by JSTV

「Union Jack and London Bus」
渡邉 一正 さん英国

「Union Jack and London Bus」渡邉 一正 さん

初応募初受賞でチョーうれしいです。もう宝酒造しか飲みません(笑)!ロンドンに駐在して約1年。あまりに街並みが美しいので一眼レフを購入して写真を始めました。夜ご飯を食べた帰り道に撮ったのが、ユニオン・ジャックに2階建てバスという、いかにもロンドン!な光景です。

審査員コメント

夜空の群青色とバスの赤色が国旗にぴったりとマッチして、ネオンのきらびやかさと対照的な落ち着きと重厚感を醸し出しています。バスから中段、上段に位置する国旗へと、逆三角形に広がっていくダイナミックな構図が絶妙です。by Takara Shuzo

「Happy Birthday!! エリザベス女王陛下」
牟田 彩乃 さん英国 

「Happy Birthday!! エリザベス女王陛下」牟田 彩乃 さん

競馬ロイヤル・アスコットの開会式で今年90歳を迎えられた女王陛下の乗る馬車が到着されたときの写真です。会場からハッピー・バースデーの合唱が湧き上がり、温かい空気に包まれました。絵のように美しいこの瞬間のすべてを残しておきたいと思いシャッターを切りました。

審査員コメント

新聞に使えそうな程、完璧な構図。手前の観客の配置も良いです。御者の制服や山高帽の客など伝統的なものと、現代的なスマートフォンの対比が面白く感じられます。ユニオン・ジャックも効いています。 by Baltic Trader

キッズ部門入賞

「おとうと」
塩田 愛菜さん(5歳)イギリス 

「おとうと」塩田 愛菜さん

弟の3歳のお誕生日プレゼントだったバランス・バイクを初めて外に下ろした日に撮りました。場所はフラットの共有ガーデン・スペースです。普段は旅行先で目に付いたものを写真に撮ってみたりしています。これから撮りたいものは、弟とその友達が楽しく遊んでいるところです。

審査員コメント

自転車に乗れたところではなく、奮闘しているところを撮ったというのがユニーク。少しだけ見えている保護者の方の足から、ちょっと離れて見守っている様子なども想像でき、物語性があります。 by Kanada-ya

キッズ部門入賞

「My Sisters」
ピラヤ 治美さん(9歳)英国 

「My Sisters」 ピラヤ 治美さん

賞をもらったことを、外から帰ってきたお母さんに教えたら「えっ!」と言って驚いたのが一番面白かったです。応募して良かった! と思いました。私と妹たちのrelationship を撮りました。撮るときに、バランス良くしないといけないと思ったら緊張したので、リラックスするように気を付けました。

審査員コメント

スコットランドに泊まっていたときに撮影したということですが、ギュッと手を繋いでいる2人の妹さんたちの様子から、真夏ではないちょっと寒そうな温度感が伝わってきます。空と砂浜のバランスも良いと思います。 by Kanada-ya

審査員総評

今年も素晴らしい作品が勢ぞろいし、大変審査の難しいコンテストでした。マチュア部門では、構図など技術的な面が洗練されていることに加え、写真の背景にあるストーリーを感じさせる作品が多く、見るものに訴える力を持つハイレベルな作品が集まりました。キッズの作品についても、大人とは異なるピュアな視点で世界を切り取っており、才能溢れる注目すべき作品が数多くありました。 by Canon Europe

受賞者と賞品

    大賞・特別賞

  • マチュア部門大賞 :「 見て!! 」 クリチンスキ グジェゴジュさん(英国)
    Canon Europe より
    デジタルSLR カメラ Canon EOS 750D レンズ:EF-S 18-55mm f/3.5-5.6 IS STM
  • キッズ部門大賞:「 負けた~」 加藤 仁菜さん(英国)
    Canon Europe より コンパクトデジタルカメラ Canon IXUS 175
  • マチュア部門特別賞 : お誕生日おめでとう! 」 関根 祥二郎さん(英国)
    Canon Europe より インクジェット・フォトプリンター Canon PIXMA MG6850
  • 英国マチュア部門入賞

  • 「ある雨の日の偶然」 高橋 志帆さん
    NHK Cosmomedia (Europe) Ltd. より JSTV無料視聴3カ月分
  • 「Union Jack and London Bus」 渡邉 一正さん
    宝酒造株式会社より 清酒・焼酎・みりんのセット 100ポンド相当
  • 「Happy Birthday!! エリザベス女王陛下」 牟田 彩乃さん
    Baltic Trader Ltd より ポーリッシュ・ポタリーのバウチャー 100ポンド相当
  • 英国キッズ部門

  • 「おとうと」 塩田 愛菜さん
    金田家ラーメン・バーより バウチャー 25ポンド相当
  • 「My Sisters」 ピラヤ 治美さん
    金田家ラーメン・バーより バウチャー 25ポンド相当

受賞作品は日本語テレビ局 JSTV で、2017年1月より順次放送予定

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次点作品

惜しくも受賞には及ばなかったものの、審査で高い評価を得ていた次点作品をご紹介します。

「 もう少し若ければ……」
英国マチュア「 もう少し若ければ……」

「 幸せな瞬間」
英国マチュア「 幸せな瞬間」

「夏のそりすべり」
英国キッズ 「夏のそりすべり」

「鳥の想い」
英国キッズ「鳥の想い」

 

【フランス】フォトコンテスト2016受賞者発表!

ニュースダイジェスト主催
フォトコンテスト2016受賞者発表!

フォトコンテスト2016日常のふとした発見から、欧州ならではの伝統と歴史を切り取ったものまで、各自の解釈に基づく多くの力作が届いた、ニュースダイジェスト主催のフォトコンテスト2016、いよいよ受賞者の発表です。審査員によると今回は例年以上にレベルが高く、選考が非常に難しかったとのこと。では応募者の皆さんの思いがこもった作品を早速、見ていきましょう。

テーマ「海外生活の一コマ」

王冠 マチュア部門大賞

「見て!!」
クリチンスキ グジェゴジュさん英国

「夏。」カステルノー キミコさん

息子の2歳の誕生日に、家族で彼の大好きな蒸気機関車に乗りに行ったときに撮影しました。初めて聞く汽笛の音にワクワクしている表情がガラス越しに見えているところが、とても気に入っています。思い出に残る写真をこれからも撮っていけたらと思います。

審査員コメント

汽車の窓から外を見る男の子の本当に幸せそうな顔が窓に映っていますが、この表情が作品の主役ですね。喜びと期待に満ちた様子が見事に捉えられています。親御さんとしても誇れる一枚ではないでしょうか。 by Canon Europe

大賞 キッズ部門大賞

「負けた~」
加藤 仁菜さん(7歳)英国 

「負けた~」加藤 仁菜さん(7歳)

ロンドン日本人学校の運動会で、白組の私は勝ちました。負けてしまった、赤組のお兄ちゃんとお友だちは、芝生に寝転んで悔しがっていました。大賞に選ばれたと聞いてびっくりしたけれど、すごくうれしかったです。これからは自分のカメラで、お友だちや家族の面白い写真をたくさん撮りたいです。

審査員コメント

小さなフォトグラファーの視点で世界を見つめ直すのは新鮮ですね。疲れ切った少年たちのうちの一人の妹さんによって撮影 されたという点に興味惹かれました。才能ある妹さんによって、非常に親密な瞬間が捉えられています。 by Canon Europe

大賞 マチュア部門特別賞

「お誕生日おめでとう!」
関根 祥二郎さんイギリス 

「「実感、夏の終り。」留岡忠雅さん

カメラ歴は50年程です。王室の公式行事には、英空軍アクロバット・チーム「レッド・アローズ」のフライパスがあるので、以前にも撮ったことがあります。エリザベス女王90歳誕生日の今回は、今までの失敗と経験が生かされ、タイミング良く撮れたと思います。

審査員コメント

この作品は要点を押さえ、構図もほぼ完ぺきです。あっという間に飛び去るレッド・アローズと、スマートフォンを構える観客の姿が絵になっており、煙とユニオン・ジャックの色彩も鮮やか。新聞の1面にも使えそうです。by Canon Europe

「真夏に咲く笑顔」
キドグチ タツヤさんフランス

「真夏に咲く笑顔」キドグチ タツヤさん

7月下旬、近所の公園でのひとコマです。噴き出す水に始めは恐る恐るの息子でしたが、慣れてきていたずらをするようになったときの様子です。息子の笑顔と妻の苦笑いが非常に印象的で、夏ならではの良い思い出になりました。

審査員コメント

画像の中から子供の歓声が聞こえてくるような躍動感がありますね。動画を観ているようです。ハイスピード撮影による水しぶきの広がりに包まれた母子の表情に、さわやかな夏の一瞬を感じさせてくれました。by JSTV

「築200年の家と猫」
木曽 綾子さんフランス

「築200年の家と猫」木曽 綾子さん

この写真は、彼の親戚のお宅にお邪魔したときに撮影したものです。郊外にある築200年の家と、のんびり気ままに過ごす猫がフランスの日常らしいなと思い応募しました。初めて応募したコンテストで入賞するとは思っていなかったので、驚いていますが光栄です。

審査員コメント

まず、猫の表情(あくび)にくぎ付けになりました。バックになる夕陽が反射し築200年と言う家の感じも暖かく写っていて、ほのぼのとした気持ちになれる作品ですね。 by Fromagerie Hisada

キッズ部門入賞

「パパ撮るよー!」
池田 小桜さん(3歳)フランス 

「パパ撮るよー!」池田 小桜さん

プロヴァンス地方の小さな村々を車で巡っていたとき、お外でお弁当を食べたあと、車に向かったパパの後ろを追いかけて、「パパ、撮るよー!」と言ったらパパが急いでポーズを取ったのが面白かったです。ブレないようにギュッとカメラを持ってボタンを押しました。賞をもらえてうれしいです。いつもパパとママの写真を撮ってあげているので、今度はパパとママ2人の写真で賞をもらいたいです。

審査員コメント

車もお父さんもしっかり大きく画面に入っている上、余計な空間もなくインパクトがあり、撮影者が3歳というお歳を考えると驚きです。急いでポーズを取ったお父さんの自然な表情も良いですね。 by Paris Miki

キッズ部門入賞

「おもちゃの街に行ったら……」
菊池 ゆりさん(10歳)フランス 

「おもちゃの街に行ったら……」菊池 ゆりさん

賞を取れてとてもうれしいです。賞をもらえたと知ったとき、これは夢なんじゃないかと思いました。この写真は、夏休みにベネツィアのブラーノ島に家族で行ったときに撮りました。そこが載っている記事を読んで、どうしても行きたくなったからです。私がこの写真で好きなところは、橋の上から撮ったので、人がカラフルなおもちゃの街に住んでいるお人形のように小さく見えるところです。普段は家族の写真を撮るのが好きで、これからはカメラのいろいろな機能を使いこなしてみたいです。

審査員コメント

建物の色はもちろんですが、青い空もはっきり美しく撮れています。この写真を見て、今度ブラーノ島へ行ってみようと思う人がいるかもしれませんね。運河の先はどうなっているのか見たくなります。 by Paris Miki

審査員総評

今年も素晴らしい作品が勢ぞろいし、大変審査の難しいコンテストでした。マチュア部門では、構図など技術的な面が洗練されていることに加え、写真の背景にあるストーリーを感じさせる作品が多く、見るものに訴える力を持つハイレベルな作品が集まりました。キッズの作品についても、大人とは異なるピュアな視点で世界を切り取っており、才能溢れる注目すべき作品が数多くありました。 by Canon Europe

受賞者と賞品

    大賞・特別賞

  • マチュア部門大賞 :「 見て!! 」 クリチンスキ グジェゴジュ さん(英国)
    Canon Europe より
    デジタルSLR カメラ Canon EOS 750D レンズ:EF-S 18-55mm f/3.5-5.6 IS STM
  • キッズ部門大賞:「 負けた~」 加藤 仁菜 さん(英国)
    Canon Europe より コンパクトデジタルカメラ Canon IXUS 175
  • マチュア部門特別賞 : お誕生日おめでとう! 」 関根 祥二郎 さん(英国)
    Canon Europe より インクジェット・フォトプリンター Canon PIXMA MG6850
  • フランスマチュア部門入賞

  • 「真夏に咲く笑顔」キドグチ タツヤ さん
    NHK Cosmomedia (Europe) Ltd. より JSTV無料視聴2カ月分
  • 「築200年の家と猫!」木曽 綾子 さん
    Fromagerie Hisadaより チーズの食べ放題ご招待券1組2名様(70ユーロ相当)
  • フランスキッズ部門入賞

  • 「パパ撮るよー!」 池田 小桜(こはる)さん
    Paris Miki より 子ども用レイバンのサングラス(80ユーロ相当)
  • 「 おもちゃの街に行ったら……」 菊池 ゆり さん
    Paris Miki より 子ども用レイバンのサングラス(80ユーロ相当)

受賞作品は日本語テレビ局 JSTV で、2017年1月より順次放送予定

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ヨーロッパのクリスマスの伝統と今 - 英国とドイツのクリスマスを比較

英国・ドイツで過ごす聖なる季節 - 欧州のクリスマスの伝統と今

キリスト教が生活に根付く欧州で、イエスの生誕を祝うクリスマスは1年の中でも特別なイベント。 シーズン目前の今号では、英国とドイツの過ごし方を徹底比較!その祝い方は国や地域によってさまざまだが、クリスマスにまつわる伝統文化や風習からは一様に、身近な人の幸せと平和を願う市民の顔が見えてくる・・・・・・。 (ニュースダイジェスト編集部)

クリスマス英国とドイツを徹底比較
クリスマスの過ごし方

クリスマスのスケジュール

UKクリスマス商戦開始のゴングが鳴り響き……

11月上旬には早くもクリスマス商戦が開始。日を追うごとに街は賑やか、華やかになっていく。学校が休みになると、ロンドンの劇場街ウェスト・エンドで子ども向けのミュージカルや、クリスマスならではの大衆演劇パントマイムなどが増える。12月24日、クリスマス・イブは翌日の用意のためスーパーで買い物をする人の長い行列ができ、プレゼントの用意をしていなかった人が最後のショッピングに走る日。また、パブやレストラン、クラブなどで友人同士で過ごすことも。25日、クリスマス当日。あらゆる公共交通網がストップし、動いているのは特別料金のタクシーのみ。基本的にほぼ全てのショップやデパート、美術館などが閉まってしまう。人々は家族や親戚などと腰を据えて飲み食いし、午後3時ごろにテレビで放映されるエリザベス女王(2023年からチャールズ国王が行う予定)のクリスマスのスピーチを観たり、プレゼント交換をしたりと、地味で家庭的なクリスマスを過ごす人が多い。明けて26日はボクシング・デー(祝日)。元々は、クリスマスに忙しく働いた使用人たちをねぎらうための休日だった。教会が貧しい人たちのために寄付を募ったクリスマス・プレゼントの箱(box)を開ける日であったことからBoxing Dayと呼ばれるのだそう。現在ではバーゲン・セールの初日としても知られ、ハロッズなど有名デパートの前には朝から行列ができる。

ロンドンのクリスマス

UK4週間かけてクリスマス・ムードを盛り上げる

クリスマスの4週前の日曜の朝、4本のろうそくを飾り付けたアドヴェンツ・クランツ(リース)の1本目に火を点けて、クリスマスへのカウント・ダウンが本格的にスタートする。12月1日~24日まで、毎日1つずつ小さなプレゼントをもらえるアドヴェント・カレンダーも欠かせないアイテムだ。ドイツでは、「アドヴェント(降待節)」の1カ月こそが、クリスマスの醍醐味。そして、日本からの観光客の期待を裏切るように12月24日の午後から26日までのクリスマス本番は、街中が静まり返る。交通機関は間引き運行、一部地域では運休。店のシャッターは固く閉ざされ、クリスマス・マーケットも終わっているところがほとんど。皆、家族や大切な人たちと、温かい部屋の中で特別な時間を過ごしている。12月24日は、朝から教会を訪れたり、夕方から始まるプレゼント交換や食事を楽しむ「Bescherung(贈り物)」の時間の準備をする。意外にも、家庭用のクリスマス・ツリーの飾り付けもこの日に行うことが多い。25日の朝食も大切な家族の行事。レストランやホテルを予約する家庭もある。24、25、26日は、日本の三が日のような感覚で、親戚へあいさつへ行ったり、家でゆっくり過ごす。クリスマスには欠かせないクラシック音楽と言えば、バッハの「クリスマス・オラトリオ(BWV248)」。

ドイツのクリスマス

クリスマスの食事

英国TVで女王陛下のメッセージを聴きながらいただく

家族そろってのクリスマス・ディナーは、英国では25日の午後以降。それぞれの席にはクリスマス・クラッカーが置かれ、隣人と引っ張り合って、中から出てきた紙の王冠を被って食事をするのがお約束だ。テーブルに載るのは、メインがローストしたターキーかガチョウ。クリスマスにターキーを食べることが定着したのは17世紀ごろで、それ以前の中世の英国ではクマや白鳥などを食していたのだとか! ロースト・ターキーとその詰め物(スタッフィング)には赤いクランベリー・ソースか白いブレッド・ソースをかけるのが定番。ローストしたポテトやパースニップ、スェードなどの根菜類、色が変わるまでクタクタに茹でた芽キャベツが付け合わせに並ぶ。デザートはクリスマス・プディングやミンス・パイなどのドライ・フルーツを使ったリッチな菓子が伝統で、明かりを消した部屋に、ブランデーをかけ火を付けたプディングが運ばれるころにはパーティーも最高潮。切り分けたものにブランデー・バターやラム・バターをかけていただく。また、プディングを作る際にコインを1枚入れておき、食べていてそれが出てきた人には幸運が訪れるとも。シェリー酒、モルド・ワイン、シャンパンなどを手にしながらエリザベス女王のクリスマス・メッセージを聴いて、ハッピー・クリスマス! 2022年に女王が亡くなったため、この伝統はチャールズ国王になっても引き継がれる予定だ。

イギリスのクリスマス:女王のメッセージ、ローストターキー、クリスマス・プディング

ドイツ肉とシュトレンとグリュー・ワインと

クリスマスのメイン・イベントとなる12月24日のディナーのメイン・ディッシュは、ガチョウや鴨のロースト、いつもよりもご馳走感のある牛肉料理が人気で、北部ではコイ料理(カルプフェン・ブラウ)が定番という地域もある。「ソーセージとジャガイモ・サラダ」と、いつものメニューでクリスマスを祝う家庭も。アドヴェント期間中は、焼き菓子もいっぱい。家庭で作るクッキー「プレッツヒェン」、香辛料の効いた「レープクーヘン」やジンジャー・ビスケットの「シュペクラティウス」、三日月型の口溶けなめらかなアーモンドのビスケット「バニラキプフェル」など、家庭でも職場でも、常時、焼き菓子やチョコレートに手を伸ばせるような「ヴァイナハツ・テラー」で来客をおもてなし。ドイツのクリスマス・ケーキ「シュトレン」は、ドライ・フルーツとマジパンたっぷりのどっしりとした焼き菓子。薄くスライスして、クリスマスまで少しずつ食べ進めるのだが、だんだんと味がなじんでいくのが分かる。クリスマスの代表的な飲み物はあつあつの「グリュー・ワイン」。凍てつくような寒さがこたえる夜のマーケット探索で身体を温めるには、これが一番。温かいアイヤープンシュ(エッグノック)も、お試しあれ。カップはデポジット制だが、屋台や街ごとにデザインが違うので、いろいろ集めるのも楽しい。

ドイツのクリスマス

クリスマス・プレゼント

英国寝る前に靴下を吊るして

英国ではファーザー・クリスマスと呼ばれているサンタクロース。子どもたちはクリスマス・イブに大きな靴下(英語ではクリスマス・ストッキング)を吊るし、サンタとトナカイがやって来てくれるのをワクワクして待ちながらベッドに入る。靴下の横にはサンタ用にミンス・パイやシェリー酒、トナカイのためにはニンジンを用意するが、子どもが寝た後、「サンタ」がこっそりそのミンス・パイを一口だけ食べたり、ニンジンをかじったりする。朝起きた子どもは、一目散にプレゼントへ。彼らにとっては、この瞬間こそがクリスマス! だろう。その一方で、家族や親戚、恋人など大人同士のクリスマス・プレゼント交換は、商業主義が幅を利かせており、義理でプレゼントをそろえることもしばしば。総じて毎年のプレゼント選びに頭を悩ませる人が多い。また、カラフルな包装紙があちこちで売られ、自力でプレゼントを包むのが基本。そのため、時々セロテープだらけの工作のようなプレゼントに遭遇することもあるのは、ご愛嬌だ。サイズの合わない服や気に入らないプレゼントをもらった人のために、返品サービスを行う店もあるなど、夢のない合理性がみられるのはちょっと残念。一方で、ホームレスの人々のために、ボランティアによってクリスマス・ランチが供されるなどの、チャリティー活動も静かに行われている。

英国のクリスマス

ドイツプレゼントをもらうチャンスが2度来る!

12月に入ると毎日、アドヴェント・カレンダーで小さな贈り物を楽しむドイツだが、12月のプレゼント攻勢はそれだけに留まらない。12月6日は、紀元270年ごろ、貧しい者たちに施しを与えたとされる聖人ニコラウスの日。サンタクロースのモデルとなった人物とも言われており、子どもたちはこの日、靴下を下げてニコラウスからのプレゼントを待っている。一部地域では、クネヒト・ループレヒトという強面の従者も、ニコラウスと一緒に子どもたちの前に現れ、良い子にはプレゼントを、悪い子にはクネヒト・ループレヒトからのお仕置きがあるという、日本の「なまはげ」的な演出も。そして、24日の夜には、クリストキント(幼児キリスト)というクリスマスの天使からプレゼントが贈られる。24日に来るのが、クリストキントだったり、ヴァイナハツマン(いわゆるサンタクロース)だったり、地域や家庭によって違いがあるのもドイツの特色だろう。質素な倹約家というイメージのあるドイツ人だが、この時期は財布のひもがゆるくなる。ドイツ小売業連盟(HDE)は、今年の1人当たりのプレゼントの予算は昨年から40ユーロアップし、500ユーロになると予想している。大切な人へプレゼントを準備するのは、楽しみでもあり、プレッシャーでもあるようで、近年はデパートや通販の商品券の人気も高まっている。

ドイツのクリスマス

クリスマスの風景

英国クリスマス・ツリーの露店が街角に現れる

クリスマス・イルミネーションが街を飾るころ、街角ではクリスマス・ツリーにする生のモミの木が売られ始める。手ごろなサイズのものを買い求め、時に2人掛かりでモミの木を担いで帰る人々は心なしか皆にこやか。ツリーの飾り方に特に決まりはないようで、デパートなどで売られるオーナメントを付ける家庭、ライトだけの家庭と様々。玄関ドアには赤いリボンを付けたヒイラギのリースを打ちつける。白っぽい実の付いたヤドリギ(ミスルトゥ)の枝を室内に逆さに吊るすのは、ケルトのドルイド信仰からきており、元々は魔除けだったそう。だがどう変化したのか、「ヤドリギの下に立つ女性は男性からのキスを拒めない」など、ロマンティックな習慣となって、別名クリスマス・キッシング・ボールとも呼ばれている。また、ロンドン中心部のトラファルガー・スクエアには巨大なツリーが飾られるが、そのモミの木は毎年ノルウェーからやって来る。これは第二次世界大戦時に英国がノルウェー軍を援護したお礼に送られたのが最初だと言う。ツリーは十二夜に当たる1月6日の公現祭の夜直前まで飾られる。これを過ぎて飾るのは不運を呼ぶとされ、クリスマスが過ぎたら早々に始末してしまう家庭も。道端に無造作にうち捨てられたツリーは物悲しさを誘うが、これもまたこの時期の見慣れた風景の一つであることには違いない。

トラファルガー・スクエアのもみの木とミスルトゥ(ヤドリギ)

ドイツドイツ全土が大小のクリスマス・マーケットで彩られる

ドイツのクリスマスの風景は、クリスマス・マーケットなしには語れない。大都市のマーケットだけでも2500以上を数え、自治体の大小を問わずドイツ全土にマーケットが立っている。一番有名なニュルンベルクの「クリストキンドレスマルクト」は、毎年200万を越える訪問者を数えるほどの人気だ。ドイツの冬を明るくロマンティックに彩るマーケットは、長い冬を越すために必要不可欠な市民の心の支えでもある。マーケットや教会には、キリスト生誕の馬小屋を人形で再現した「クリッぺ」も出現する。家庭用のミニチュア・サイズのものもあり、ジオラマのような本格的な装飾をほどこす人も。くるみ割り人形やスモーク人形、クリスマス・ピラミッドなど、木製のクリスマス用装飾品は職人の手仕事が光る品質の良さから、国内外で根強い人気を誇る。また、クリスマス・ツリー発祥の地と言われるドイツではこの時期、約3000万本のツリー(生の木)が出荷される。伝統的なオーナメントは、りんご。そしてりんごを模したガラスや陶器で出来た球体(クーゲル)。ツリーは1月6日の公現祭までリビングや庭に飾られる。その後は、英国と同様、道端に放置され、ごみ収集業者が回収。2階より上の階の住人がツリーをバルコニーや窓から投げ捨てるのも許されているとのこと。頭上注意!

クリスマス・マーケット、クリッペ、くるみ割り人形

クリスマス休戦の奇跡「1914年12月25日」
Christmas Truce / Weihnachtsfrieden

クリスマスは奇跡を起こす時間。誰もが幸福と平和を想い、「クリスマス・キャロル」のスクルージが最後に心を入れ替えたように、隣人にとって少しでも良い人間でありたいと願う。それは、絶望の中で迎えた1914年のクリスマスでも同じだった。

1914年7月に勃発した第一次世界大戦は、短期決戦を想定していたドイツの目論見が外れ、また、「クリスマスは故郷で過ごせるだろう」という兵士たちの願いむなしく、フランス・英国との西部戦線、ロシアとの東部戦線ともに泥沼の持久戦に突入していた。

12月24日、西部戦線。塹壕(ざんごう)の中で夜を明かそうとしていた英国兵は、ドイツ語で歌われる「きよしこの夜」を耳にする。戦場で声を発することは、敵に自分の居場所を知らせる危険な行為。すぐに攻撃を受けることになりかねないが、このときは違った。銃弾のかわりに、英語で歌う声がドイツ兵に届いたのだ。戦争に疲れきっていた両軍の兵士は、武器を置き、顔を出す。お互いの距離を縮め、ついには一時的な休戦が実現したのだ。

とても奇妙なクリスマスだった。数時間前まで互いの命を奪い合う激戦を繰り広げていた者たちが、一緒にクリスマス・ツリーを飾り、戦友の遺体を共同で埋葬。さらには、友人に語るように自分の妻や恋人を自慢し合い、たばこの火を交わし、プレゼント交換まで始めた。ドイツ兵と英国兵によるサッカーの試合が行われた記録もある。

「クリスマス休戦」は、西部戦線の各地に広がり、一部では数日間の休戦が実現した。世界に向けて休戦を提案した人物は、当時のローマ教皇ベネディクトゥス15世。ドイツ軍はこの提案を承諾し、戦場で決死の覚悟で敵兵に呼び掛けたのだった。

当時の写真が残っている。そこには、違う軍服を着た、同じ人間が並んでいる。

その後、4回のクリスマスを戦下で迎えたが、二度と奇跡は起こらなかった。犠牲者1500万人とも推定される第一次世界大戦は、1919年にベルサイユ条約が締結され、ようやく終結。世界は、その未曾有の被害を前に不戦の誓いを立てたが、それが守られなかったことを、私たちは知っている。

クリスマス休戦

 

劇作家 / 演出家 永井 愛さん インタビュー

劇作家 / 演出家
永井 愛さん インタビュー

永井 愛さん日本のとある都立高校の音楽講師が、卒業式で「君が代」斉唱推進派と反対派の対立に巻き込まれる騒動を描いた芝居「歌わせたい男たち」のリーディング(朗読)公演が10月12日、ここロンドンで、日本人を始めとするアジア系の俳優たちによって英語で行われた。なぜこのような内容の作品が、英国で、英語で上演されたのか。上演に合わせて来英された作・演出の永井愛さんに、話を伺った。

Profile


ながい あい:東京都出身。桐朋学園大学短期大学部演劇専攻科卒。1981年に大石静と「二兎社」を結成。2人で同劇団の脚本、演出、出演をこなす。1991年の大石退団後、二兎社は演劇ユニットとして永井の作・演出作品を手掛けるようになる。1999年には「兄帰る」で日本の劇作家にとっては最も栄誉ある賞とされる岸田國士戯曲賞を受賞。「君が代」斉唱という社会問題に真正面から取り組み、ブラック・ユーモアとともに描き出した2005年「歌わせたい男たち」は、第13回読売演劇大賞最優秀作品賞 / 女優賞、及び優秀演出家賞を含む多数の演劇賞を獲得した。

今回リーディング公演された「歌わせたい男たち(英題: Got to Make Them Sing!)」は、「君が代」斉唱をめぐる都立高校内の騒動を描いた作品ですが、どのようなきっかけでこのようなストーリーを書こうと思われたのでしょうか。英国での上演が前提にあったと伺いましたが、なぜ海外公演でこのようなテーマを?

2004年の春、公立学校の式典で「君が代」の斉唱や伴奏を拒否したために、先生方が大量に処分されたという新聞記事を読んだことがきっかけでした。民主主義の世の中でこんなことが起きるのかと驚愕しました。処分された「250名」の数字の背後にある人間ドラマをどうしても知りたくなって書こうと思ったのです。  

もともとは、英国ブッシュ・シアターの当時の芸術監督から新作を依頼され、「日本で起きている問題なら、(国が変わっても)人類の普遍的な問題であることに変わりはないので、自由に書いていい」と言われました。これは非常に日本的な問題なのだけれども、「ローカルはかえってグローバルである」ということもあるのかなと思って。海外公演優先というよりは、日本語の公演を想定して書いています。

その後、「この芝居をロンドン市民に理解させることは不可能」という芸術監督の判断で、当時はロンドンでの上演には至りませんでした。今回、リーディング上演が実現したのにはどのような経緯があったのでしょうか。

まず、日本劇作家協会が海外に日本の戯曲を紹介するために発行した「ENGEKI」という雑誌に、マリ・ボイドさんがこの作品を選んで英訳してくださったこと、その英訳をイエロー・アース・シアター*1の芸術監督、クミコ・メンデルさんが読み、今回のリーディングで取り上げたいと推薦してくださったという幸運な流れがありました。さらに、この企画に大きく関わっていた白坂恵都子さん、演出のキム・ピアースさん、主演の森尚子さんなど、女性たちの連携プレーと、ストーンクラブズ・シアター*2、イエロー・アース、国際交流基金にご尽力いただけたことが大きかったと思います。

*1 イエロー・アース・シアター: Yellow Earth Theatre。英国に在住する東アジア系俳優の役柄の多様化を目指すカンパニー
*2 ストーンクラブズ・シアター: StoneCrabs Theatre。世界の演劇作品を紹介することを目的とする、ロンドン南東部ルイシャム拠点のカンパニー

歌わせたい男たち2005年、東京のベニサン・ピットで初演された「歌わせたい男たち」

今回の公演は英国在住の翻訳者、演出家が手掛けられました。また、英語上演でアジア系の俳優たちによって演じられるという形態でしたが、永井さんはどの程度、制作プロセスに関わられたのでしょうか。

私は制作プロセスには全く関わっていません。「こういう企画がありますが、どうですか?」と言われたので、「喜んで!」とお返事しました。キャスティングにも関わっておらず、滞在中は慌ただしくて、アジア系の俳優を選んだ理由を詳しく聞くことはできませんでした。

ロンドンでの上演ということで、戯曲の内容や演出などで大きな変更点などはありましたか。数人の登場人物が話す名古屋弁を英語公演でもあえて織り交ぜていましたが、それはなぜでしょう。

戯曲の内容を変えることは全くありませんでしたが、翻訳をアメリカ的な英語からイギリス的な英語に変えるということで、「台詞をマッサージする」という面白い言い方をして、演出家と主演俳優の森尚子さんがイギリス的な話し言葉になるように直されたと聞きました。名古屋弁をあえて残すのも(名古屋出身の)森さんから出された提案で、私は名古屋弁が英語にできるとは思わなかったので、面白いなと。グッド・アイディアでした。

日本人以外の観客も大勢いましたが、作品の意図は伝わったと思われますか。

私がアフター・トークで(参加者の感想を)聞いた際には、よく理解してくださったと思いました。日本で上演したときと同じところで笑いが起きたので、ホッとしましたね。

日本と英国で、観客の反応に大きな違いはありましたか。

観客は大体、同じところで笑っていましたけれど、細かい部分、まだ言葉がよくこなれていなくて、伝わらなかったのかな、という部分はありますね。もうちょっと稽古を積めば、もっと面白くなったかなと感じたところはありました。

日本で初演した際には、(「君が代」斉唱を訴える)校長先生の演説の場面で客席からずいぶん笑いが起こりましたが、再演では笑いが少なくなったのです。校長の演説が作者の言いたいことだと誤解した人がいましたので、ちょっと心配になりました。ロンドンの人たちはそのような誤解はなかったようですが、笑い声はあまり聞こえず、ここをブラック・ユーモアと受け止めていただけたのかどうかはよく分かりません。

今回はリーディング公演という形になりましたが、近い将来、ぜひ通常の公演の形でも拝見することができればと思いました。

私もぜひ公演できたらと望んでいます。実現した場合は、ディスカッションを重ねて、よりロンドンの観客に通じる言葉を探っていくのが翻訳公演の場合には非常に大事なことだと思いました。もし機会があったらアジア系以外の俳優にも出演してもらえたらうれしいです。

英国における昨今の演劇事情についてはどのようにお考えですか。最近は日本でも映画館で英国の演劇作品の映像を鑑賞することができるようにもなりました。

私は英語が苦手なのですが、日本でもナショナル・シアター・ライヴを通して日本語字幕付きで英国の演劇作品を観ることができるので楽しんでいます。「The Curious Incident of the Dog in the Night-Time(夜中に犬に起こった奇妙な事件)」も先に字幕付きで観ていて、衝撃的でした。デービッド・ヘア作の「Skylight(スカイライト)」も良かったです。

翻訳もたくさんされているので、日本語で観られるイギリス演劇は多いと思います。イギリス演劇は、シンプルでありながら多彩な仕掛けが施されているなど、舞台機構も優れていますし、身体性のあるステージングでも、その中心には会話劇としての面白さがあり、言葉を大切にする国としての伝統を感じます。ブロードウェイのお芝居ほど派手ではないのもいいですね。大人っぽい感じがしますし、幅広い年齢層の人たちが観に来ていて、日本と比べて演劇文化を人々が豊かに享受していることが客席からも感じられました。

 

演出家・蜷川幸雄が英国演劇にもたらしたもの

専属通訳を務めたジャーナリストが語る
演出家・蜷川幸雄が
英国演劇にもたらしたもの

舞台演出家の蜷川幸雄が今年の5月12日、永眠した。自身が芸術監督を務める彩の国さいたま芸術劇場でシェイクスピア全37作品の上演を行う「彩の国シェイクスピア・シリーズ」を手掛ける一方で、井上ひさしや村上春樹など様々な日本人作家 / 劇作家の作品も積極的に取り上げてきた蜷川は、演劇大国である英国でも多くのファンを魅了し続けてきた。蜷川幸雄が英国の演劇界に遺したものとは何なのか。長年にわたり専属通訳として蜷川の英国上演作品に携わってきたロンドン在住のジャーナリスト秋島百合子さんに、英国における蜷川幸雄について語ってもらった。
(取材・文: 本誌編集部 村上 祥子)

参考文献: 秋島百合子「蜷川幸雄とシェークスピア」(角川書店)

蜷川幸雄(写真右)と通訳を務める秋島百合子さん
1991年、「タンゴ・冬の終わりに」の制作現場にて。蜷川幸雄(写真右)と
通訳を務める秋島百合子さん(同左) / 秋島百合子さん提供

蜷川幸雄蜷川幸雄(にながわ・ゆきお)略歴
1935年埼玉県生まれ。2016年5月12日死去。(財)埼玉県芸術文化振興財団芸術監督、Bunkamura シアターコクーン芸術監督などを兼任。1983年「王女メディア」のイタリア・ギリシャ公演以降、ヨーロッパ、米国など世界各国で数多くの作品を上演しており、英国では85年「NINAGAWA マクベス」以来、数多くの作品を発表。シェイクスピア作品のみならず、寺山修司作「身毒丸」や村上春樹原作「海辺のカフカ」など、日本の作家 / 劇作家の作品も演出し、日本国内外で高い評価を受けた。英国では87年に英国の演劇賞ローレンス・オリビエ賞演出家部門ノミネート(「NINAGAWA マクベス」及び「王女メディア」にて)。2002年、大英帝国勲章(CBE)の叙勲を受ける。
秋島百合子秋島百合子(あきしま・ゆりこ)略歴
1950年生まれ。青山学院大学文学部英米文学科卒。米経済紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」東京支局勤務後に来英、75年から78年まで、BBC で日本語放送に携わる。その後はジャーナリストとして活躍。1985 年には「この世はすべて舞台」で第1回ノンフィクション朝日ジャーナル大賞優秀賞を受賞。「蜷川幸雄とシェークスピア」(角川書店)ほか著書多数。

物語と現実をつなぐ枠組み

今年の5月、英国のメディアに一人の日本人演出家の死を取り上げる記事が踊った。「ガーディアン」紙の大物劇評家、マイケル・ビリントンは「驚くべき視覚的華麗さと、東洋と西洋を融合させる力を備えた作品を手掛けた偉大な日本人演出家」と評し、その業績を称えた。1985年、スコットランドのエディンバラで「NINAGAWA マクベス」を上演。以来、昨年2015年に藤原竜也主演「ハムレット」と村上春樹原作「海辺のカフカ」をロンドンのバービカン劇場で連続上演するまで、ほぼ毎年英国で公演を行い、追っかけと自認する英国人ファンもいた蜷川幸雄は、ここ英国の演劇界でも大きな存在感を放っていた。

1985年、鮮やかに舞い散る桜の禍々しいまでの美しさがエディンバラの観客の心をわしづかみにした「NINAGAWA マクベス」、その観客席に秋島さんはいた。英語に堪能で、過去にはBBC の日本語放送を担当していた秋島さん。当時、友人が蜷川の演出補で、日本では舞台関係の通訳や制作の仕事を時折手伝っていたこともあり、次の英国公演である1986年の「王女メディア」から制作現場やプレスのインタビューなどで通訳を担当する現地スタッフとして英国における蜷川作品に携わるようになった。

蜷川が手掛けたシェイクスピアと言うと、舞台上に巨大な仏壇を設け、その中で武士の衣装に身を包んだ登場人物たちが物語を展開する先述の「NINAGAWAマクベス」を始め、佐渡の能舞台や京都・龍安寺の石庭を舞台とするなど日本的な視覚的要素が強調された作品が複数みられる。一部からは海外向けの「ジャポネスク」であると言われたこうした演出はしかし、決してそのような意図に基づいたものではなかったと秋島さんは語る。「あのような演出は、むしろ日本人にとって分かりやすくするためのものでした。当時は海外へ持って行こうという話もなかったのですから。元々アングラ*1 出身で、日本人が西洋人の格好をしてシェイクスピアを演じることは『格好悪い』と考えていた蜷川さんが、ではどうしたらいいかという観点から生み出したのが『枠』を付けることだったのです」。ここで言う「枠」というのは、芝居の本編が始まる前に、これから日本人の役者たちがシェイクスピア劇を演じます、と芝居の中で「宣言」することで、初期の「NINAGAWAマクベス」から昨年の「ハムレット」まで、蜷川はいくつかの作品で採用している。それはこうすれば「短い足で白いタイツを履いた日本人がシェイクスピアを演じてもリアルなんじゃないか」という、日本人がシェイクスピア劇を演じるジレンマを解消する一つの方法だったというわけだ。

*1 アングラ(演劇): ヨーロッパの近代演劇を手本とした新劇に対抗する形で1960~70代に興隆した演劇のスタイル

こうして実際の芝居と現実の間にワンクッションを置く枠付けは、日本人が西洋劇を演じるための入り口としてのみ使われたわけではなかった。例えば、イラク戦争勃発直後の2003年にナショナル・シアター(NT)の大劇場オリビエで上演された「ペリクリーズ」では、現代の戦場と思しき荒地に心身に傷を負った旅役者たちが集まって「ペリクリーズ」を演じるという枠を設定した。これは特にイラク戦争を念頭に置いた演出ではなかったそうだが、離ればなれになった家族があり得ない偶然の積み重なりで再び相まみえるという幻想(ファンタジー)と、厳しい現実をつなげる架け橋の役割を果たした。

1999年の「リア王」のリハーサル風景
1999年の「リア王」のリハーサル風景。ナイジェル・ホーソーン演じるリア(写真右から2人目)と、道化役の真田広之(同右端)

数十年後に下された 「評価」

これまで蜷川は、20を優に超える英国公演を行っているが、その大多数は日本で制作されたプロダクションだ。だが中には英国の役者を使い、英国制作もしくは日本と英国で共同制作されたケースもある。1991年に上演された清水邦夫作「タンゴ・冬の終わりに」では、人気と実力を兼ね備えた英国人俳優の故アラン・リックマンを迎え、エディンバラに加え英国随一の劇場街ウェスト・エンドで長期公演を敢行。1994年の「ペール・ギュント」は英国人キャストの中に蜷川作品常連の壌晴彦(じょうはるひこ)が加わるという構成だった。そして驚くべき制作過程を経て生まれたのが、シェイクスピア演劇の本丸とも言えるロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)との共同プロジェクトである1999年の「リア王」である。出演者は一人を除き英国人、制作チームは日本という混合編成。稽古は出演者を日本に数週間滞在させて行い、日本公演の後にバービカン劇場、そしてRSC の本拠地であるストラトフォード=アポン=エイボンのロイヤル・シェイクスピア劇場でも上演するという、壮大なスケールだった。制作現場ではさぞや多くの紆余曲折があったことと思われるが、まずは唯一の日本人キャスト、真田広之が出演に至った経緯を秋島さんに聞いてみた。

「『リア王』における道化の役というのは異質な存在でしたから、始めから蜷川さんは日本人俳優にしようと思っていました。真田さんの名前を出したのは、(リアを演じる)ナイジェル・ホーソーン*2。その前年に真田さんが『ハムレット』を演じていたのを観て、『僕のフール(道化)には彼がいい』と言ったのです。それで蜷川さんとセルマ・ホルト(プロデューサー)、私の3人で真田さんのところに行って話したら、『えっ……僕……!?』って(笑)。最終的に彼に決まって、真田さんは演劇専門の発声 / 発音のベテラン・トレーナーについて発音などを猛特訓。元々、英語を話すのは上手だったけれど、演じるのはまた別でしょう? アメリカでも色々活躍されていますが、あれだけ訓練したことが役に立っているのではないでしょうか」。

*2 ナイジェル・ホーソーン: BBC ドラマ・シリーズ「Yes Minister」で人気を博し、映画、舞台で活躍。ローレンス・オリビエ賞、トニー賞の受賞経験もある実力派俳優

鳴り物入りで開幕した「リア王」だったが、当初、英国における劇評家の評価は、決して高いものとは言えなかった。「ナイジェル・ホーソーンの俳優としての資質がリアとしては優しすぎる、と。リア王と言えば、獰猛な専制君主というイメージがありますから。ナイジェルなんて打ちひしがれてしまって大変でした」。では、この蜷川版「リア王」は英国では受け入れられなかったのか。まず、観客の反応は劇評とは対照的に翌日も満席、キャンセル待ちの行列ができたほどだった。そして劇評も、先に出る日刊紙こそ厳しいものが多かったが、その後は日曜紙などで絶賛する評も出て持ち直したのだと秋島さんは言う。そしてもう一つ。「ナイジェルが蜷川さんにね、老人の病気を専門にするお医者様から手紙をたくさんもらったんですよと言いに来たんです。老人の頑固さや獰猛さといった点だけでなく、混乱し錯乱する部分まで良く出ていて良かったって」。この話を聞いて思い出したことがある。英国演劇界にあってシェイクスピア俳優の名をほしいままにする名優サイモン・ラッセル・ビールが2年前にタイトル・ロールを演じ称賛されたNTの「リア王」。この中でラッセル・ビールは、手を小刻みに震わせて激高し、哀れさを伴う混沌を纏う老齢の王を演じ、まさに認知症の要素を押し出したのである。すると間髪入れず、秋島さんもこのラッセル・ビールのリア王について言及した。

「サイモン・ラッセル・ビールも、認知症を研究してああいう役柄をつくり上げたのですよね。今でこそ『ディメンシア(認知症)』と言われるけれど、シェイクスピア の時代にはそういった言葉はなかった。けれども実際にそうした人たちは大勢いたわけで、それを取り上げたシェイクスピアはすごい、それも一つの解釈だ、と最近になって医学の専門家からの説も出たと言います。だからある意味、蜷川さんは時代を先取りしていたとも考えられる。今、蜷川さんがあの舞台を上演していたら、また評価も違っていたのではないかと思うんですよ。でも芸術とは時代、時代で受け取られ方が変わってくる。そういうものですからね」。

2つの才能が出会う

数十年にわたり、通訳という立場で蜷川の制作現場を見続けてきた秋島さん。制作過程はもちろんのこと、それ以外でも心に残る思い出があるだろう。それはもう色々ありますよ、そう笑う秋島さんに、2つのエピソードを伺った。

まずは2003年、NT で上演された「ペリクリーズ」でのこと。当時の同劇場トップである芸術監督は、過去にはRSC で芸術監督を務め、ミュージカル「レミゼラブル」の演出などでも知られるトレバー・ナン。「『ペリクリーズ』はやりにくいから俺にやらせたんだよ(笑)」と蜷川が冗談交じりに語ったという通り、英国の演劇ファンの間でも地味な存在である同作をナンの肝入りで上演することになった蜷川だったが、初日の休憩中、ナンが息せき切って蜷川のところにやって来たそうだ。「蜷川さんは本番中、客席に座らないんですよ。後ろに立ってうろうろしている。たぶん落ち着かないのでしょう。それで私も蜷川さんと一緒に立って観ていたら、トレバー・ナンが駆けつけてきて涙を流して感動しているんです。『こんなに分かりやすいペリクリーズは初めてだ』って。まだあと半分ありますよ、という感じだったですけれどね(笑)」。

そしてもう一つが、格調高い文体で英国の生活や文化を綴ることで定評のある作家、カズオ・イシグロとのエピソードだ。2007年に出版社の社長の厚意でイシグロと会食をする機会があった秋島さんは、彼から蜷川について、「こういう名前の演出家は知っている?」と聞かれた。なんでもイシグロは演劇好きで、同時期にバービカン劇場で上演された「コリオレイナス」を鑑賞していたのだという。以前から蜷川がカズオ・イシグロのファンだったことを知っていた秋島さんは、2人を引き合わせようと思い立った。「片方だけだったらそんなことは考えなかったでしょうが、両想いだったから(笑)、それだったらと思ったのです。『コリオレイナス』の次の英国公演となった『NINAGAWA十二夜』のときでしたか。休憩時間に3人だけで会いました。その後は毎回、会っていたみたいですよ」。この2人の交流は2014年、彩の国さいたま芸術劇場の開館20周年記念に、蜷川がイシグロの著作「わたしを離さないで(Never Let Me Go)」を基にした同名の芝居の演出を手掛けるという形で花開いた。イシグロは蜷川が亡くなった際にも、日本の演劇雑誌に追悼文を寄せている。

蜷川「コリオレイナス」2007年にバービカン劇場で上演された「コリオレイナス」。舞台全体を覆う大階段が圧巻

蜷川幸雄、カズオ・イシグロ、秋島百合子2009年、蜷川、イシグロとともに写真に収まる秋島さん

シェイクスピアの「矛盾」を楽しむ

ロンドンの街には至るところに大小の劇場が点在し、 観劇文化が一般に浸透している。国内に才能あふれる演出家が星の数ほどもいるのに、日本人である蜷川がなぜここまで受け入れられ、長年にわたり愛され続けたのか。その理由の一つは、「リア王」などの稽古場で蜷川が目の当たりにした、日英の演技手法の違いにありそうだ。

「イギリス人はまるで実際にそこで物事が起こっているかのようにリアリズムで演じようとする。大きな劇場でも3、4人でぼそぼそとしゃべっていて本当にナチュラルに見える芝居ってあるじゃないですか。彼らは発声が上手だから、ぼそぼそしゃべっていてもはっきりと声が聞こえるし、それが良い芝居と考えられている。一方で、蜷川さんが言うには、日本人はどんなにナチュラルにやろうとしても様式が出てくるって。身体にしても、話し方にしても、骨の髄まで様式が入っている。どんなに日本人がナチュラルにやってもイギリス人のようにはならない。だったら逆に様式をやろうというのが彼のポイントなわけです」。

様式とリアリズム。日英の演技手法の違いを逆手に取って、日本人が演じるシェイクスピアを、そして英国人が演じる日本のプロダクションをつくろうと蜷川は考えた。「日本人が演じるシェイクスピアを演出するときは様式を生かし、歌舞伎のような技術も取り入れた。一方でイギリス人を使う場合には、基本的な枠組みは日本的な部分もかなりあるのだけれど、そこにイギリス人のリアリズムをぶち込んで衝突させた。蜷川さんは『能の舞台に泥のついた長靴を履いてどかどか上り込んでほしい』という言い方をしていましたね」。

今でこそ英国でもフィジカルな芝居が増えてきたが、まだまだ言葉や台詞を重視する傾向が強かった数十年以上も前、珠玉の言葉が散りばめられたシェイクスピア作品に様々な「型」をはめ、視覚的な演出を施したプロダクションを見せつけられた英国の観客は、「逆カルチャー・ショック」とでも言うべき衝撃を受けたことだろう。そしてもう一つ、「シェイクスピアの作品自体、必ずしもナチュラリズムを追求したものではない」という点がある。

「特に『シンベリン』のようなロマンス劇*3や『間違いの喜劇』などの喜劇は矛盾だらけじゃないですか。ここでこんな偶然が起こるなんてあり得ない。ナチュラリズムでやっていたら行き詰ってしまうわけです。例えば『シンベリン』で生き別れた兄妹が出会うときに「あら、お兄さん!」「ああ、お前!」とかリアルに演じると逆に不自然なことになってしまう。でもイギリスでは矛盾を少しでも矛盾ではなくなるようにナチュラリズムで解決しようとした。だからシリアスになる。『それじゃ笑えなくなっちゃうじゃないか!』っていうのが蜷川さん。『これはおかしいんだよ。こんな偶然続きっこないんだから』って。シェイクスピアの喜劇には結構ドタバタ要素もあるのですが、おかしいところはどんどんおかしくして、これでもかこれでもかってやったら、こちらの観客にもすごく受けて。蜷川さんが手掛ける余地がシェイクスピアにあったということかしらね」。かつては一般市民の娯楽として愛され、時には馬鹿馬鹿しくも、下世話でもあったシェイクスピアの世界の埋もれていた一面が、時代を経て、期せずして異国の演出家によって蘇ったということなのかもしれない。

*3 ロマンス劇: シェイクスピアの後期の4作品の総称。家族の別離から再会、和解までの過程を空想やスペクタクルな要素を織り込み描いていく

来年、ロンドンのバービカン劇場では、英国の観客の度肝を抜いた「NINAGAWAマクベス」が再び上演されることが決まった。スコットランドの残虐な栄枯盛衰の物語を荘厳な日本の伝統美で彩り、現在の英国人のシェイクスピア観を吹き飛ばした蜷川の桜が、30年ぶりに英国の劇場に舞う。

蜷川「ハムレット」のひな壇2015年にバービカン劇場で上映された「ハムレット」では、劇中劇のシーンにひな壇が登場した

蜷川幸雄、英国公演の軌跡


*赤は英国または日英制作作品
1985年 「NINAGAWA マクベス」 エディンバラ
1986年 「王女メディア」 エディンバラ
1987年 「NINAGAWA マクベス」 ロンドン(ナショナル・シアター、リトルトン)
王女メディア」 ロンドン(ナショナル・シアター、オリビエ)
-両作品で1987年ローレンス・オリビエ賞演出家賞ノミネート
1988年 「テンペスト」 エディンバラ
1989年 「近松心中物語」 ロンドン(ナショナル・シアター、リトルトン)
1990年 「卒塔婆小町」 エディンバラ
1991年 「Tango at the End of Winter」(タンゴ・冬の終わりに)
エディンバラ、ロンドン (ピカデリー劇場)
-アラン・リックマン主演
1992年 「テンペスト」 ロンドン(バービカン劇場)
1994年 「Peer Gynt」(ペール・ギュント)
ロンドン(バーピカン劇場)、マンチェスター
-マイケル・シーン主演
1995年 「夏の夜の夢」 プリマス、ニューカッスル
1996年 「夏の夜の夢」 ロンドン(マーメイド劇場)
1997年 「身毒丸」 ロンドン(バービカン劇場)
1998年 「ハムレット」 ロンドン(バービカン劇場)
-真田広之主演
1999年
〜2000年
「リア王」 ロンドン(バービカン劇場)、ストラトフォー ド=アポン=エイボン
-ナイジェル・ホーソーン主演
2001年 「近代能楽集」 ロンドン(バービカン劇場)
2003年 「ペリクリーズ」 ロンドン(ナショナル・シアター、オリビエ)
2004年 「ハムレット」 プリマス、ノーリッジ、プール、エディンバラ、サルフォード、
ロンドン(バービカン劇場)、ノッティンガム、バース
-マイケル・マロニー主演
2006年 「タイタス・アンドロニカス」 ストラトフォード=アポン=エイボン、プリマス
2007年 「コリオレイナス」 ロンドン(バービカン劇場)
2009年 「NINAGAWA十二夜」 ロンドン(バービカン劇場)
-歌舞伎版
2010年 「ムサシ ロンドン・NY バージョン」 ロンドン(バービカン劇場)
2012年 「シンベリン」 ロンドン(バービカン劇場)
2015年 「ハムレット」 ロンドン(バービカン劇場)
-藤原竜也主演
2015年 「海辺のカフカ」 ロンドン(バービカン劇場)
 

ガイ・フォークス・ナイトを楽しむための6つの豆知識

ガイ・フォークス・ナイトを楽しむための6つの豆知識

花火といえば夏祭りというのが定番の日本とは異なり、英国では11月初旬が花火真っ盛りとなる。もはや冬時間に突入し、夜間は時に震えるほどの寒さを感じる時期になぜ花火大会を行うのか。そのきっかけとなった約400年前の火薬陰謀事件を中心に、現在は「ガイ・フォークス・ナイト」(Guy Fawkes Night)、「ボンファイヤー・ナイト」(Bonfire Night)として親しまれるこの花火大会について紹介する。(文: 英国ニュースダイジェスト編集部)

ガイ・フォークス

1. 400年前の英国では宗教対立が深刻化

16世紀前半に、ヘンリー8世が王妃との離婚問題を契機として英国国教会を創立。しかし、その娘であるメアリー1世はカトリック以外のキリスト教徒たちを弾圧し、その王位を受け継いだエリザベス1世は再び英国国教会を軸に据える政策を展開するなど、約400年前の英国は深刻な宗教対立の最中にあった。

1603年にはジェームズ1世が即位。カトリック教徒の母と妻を持つジェームズ1世は、カトリック教徒たちを擁護する政策を打ち出すことが期待されていた。

2. 当時の権力者たちが結集する国会開会日にテロを計画

しかし期待に反して、ジェームズ1世は英国国教会の護持を宣言。極端な信仰を掲げる異教徒たちを排除する方針を打ち出した。これに反発した一部のカトリック教徒たちはテロを計画。国王や国会議員、聖職者といった権力者たちが一堂に会する11月5日の議会開会日に国会議事堂を爆破することを決めた。

共謀者らは国会議事堂の地下室の賃貸契約を結び、ここに大量の火薬を運び込んで国会の開会日を待ち続けたという。

19世紀に描かれた火薬が運び込まれた国会議事堂の地下室19世紀に描かれた火薬が運び込まれた国会議事堂の地下室

3. テロ決行日の直前に届いた密告の手紙

しかし、11月5日の直前になり、当日に国会への出席を予定していた1人に手紙が届く。差出人の名前はなかったが、そこには議会開会日に爆弾が仕掛けられる可能性があるので、当日は議会に近付かないようにとの警告を発する内容が書かれていた。

この手紙がジェームズ1世の臣下へと渡り、王室にも陰謀の存在が知られることになる。一方のテロリストたちは、密告の手紙の存在を知りながらも、テロ計画を実行する決断を下した。

4. 現行犯で逮捕されたテロリストの名前とは

国会が開会する当日、テロの動きを察知したジェームズ1世によって議事堂内に多数の衛兵が送り込まれ、テロは失敗に終わる。このとき、現行犯として逮捕された唯一の男の名前がガイ・フォークス。フォークスは、当時監獄として使用されていたロンドン塔に幽閉され、拷問を受けた揚げ句に死刑宣告を受ける。

しかし、フォークスは絞首台へ続くはしごから突如飛び降り自ら命を絶った。後に遺体は四つに切断され、こういったテロ活動の抑止力としてロンドン各地で展示されたという。

5. 花火とかがり火で国家の平和を祝う

国家の平和を祝うため、事件の翌年には11月5日を祝日として定める法律が制定された(この法律は1859年に廃止)。以後、市民がガイ・フォークスをかたどった人形をこしらえて街中を引き回し、さらにはその人形をかがり火で燃やした後に花火を打ち上げて平和を祝うことが慣習化。

花火とかがり火で国家の平和を祝う

またこの事件をきっかけとして王室のカトリック教徒に対する不信は決定的となり、現在至るまでカトリックの信者が王位を継承することは認められていない。

6. アンチ・ヒーローの象徴となったガイ・フォークス

フォークスの名は次第に本来の意味から離れていったが、1980年代に英作家アラン・ムーアとイラストレーターのデービッド・ロイドによるグラフィック・ノベル「V フォー・ヴェンデッタ」(V for Vendetta)の出版により再び注目を浴びる。同作の舞台はファシズム国家に近い体制の英国。フォークスの仮面を着けたアナーキストの謎の人物「V」が、その非凡な才能駆使して既存の体制を崩壊させようとする物語なのだが、ここからこのマスクに反政府主義のイメージが付き、現在は世界中で反体制への抗議活動の象徴となっている。

アンチ・ヒーローの象徴となったガイ・フォークス

ガイ・フォークス・ナイト関連イベント

毎年11月初旬、英国各地で大規模な花火大会が開催される。開始時間や料金などの詳細は下記サイトを参照

 

おいしいと評判のロンドンの魚屋さん

ロンドンでおいしいと評判の魚屋さん

ロンドンの魚屋さん英国のスーパーではタラとサーモンしか目につかない、魚屋は日本と勝手が違うような気がして敷居が高い、でもおいしい魚は食べたい。そんな悩みを抱える英国在住者は多いはず。秋は夏の魚と冬の魚が両方出まわり、魚介類のチョイスが最も増える時期でもある。この機会に、どんな魚を、どうやって買うのか、ロンドンで評判の魚屋さんに聞いてみよう。魚のプロによる小技やレシピも紹介!
(Steve Hatt 取材: Keiko Lippard)

ロンドン北部で3代続く老舗
Steve Hatt スティーブ・ハット

スティーブ・ハット大通りに面し、ブルーの店構えが良く目立つ
スティーブ・ハットすべての魚は採れた場所や養殖であるか否かを明記
スティーブ・ハット
鮮度を保つためしばしば大量の氷を補充
スティーブ・ハット
今が旬の、脂がのった大きなサバ

大通りに面していながら商店は少なめ、落ち着いた雰囲気の街角に位置する。3代にわたりこの土地で商いをする、今年で創業121年の老舗魚屋は、ほかの魚屋からも一目置かれる存在だ。鮮やかなブルーで統一された店の間口幅いっぱいに、更に鮮やかな光沢を放つ鮮魚が所狭しと並べられている。「先代まではウインドーなんてない、露店売りスタイルだったらしいよ」と、セミリタイアしたオーナーに替わって店を切り盛りするマネージャーのスティーブ。しばしば勢いよく大量の氷を補充し、商品の鮮度を保つのに余念がない。

国内産は主にコーンウォールから毎日届けられ、新鮮さは保証付き。生食用に求めるにもまぐろやサーモンはもちろん、鮮度の落ちやすいサバやイワシなども含め、あらかじめ注文しておく必要もないとの自信を見せる。「なじみのない魚でもぜひ試してみてほしい。予算を言ってくれればそれに見合った魚を選ぶし、レシピも教えてあげられるよ。最も新鮮な魚の一番の調理法はあまり手を加えず、味付けも軽く塩コショウしただけのシンプル・イズ・ベスト。何より火を通し過ぎないのがコツだね」と自らも大の魚好きの言葉だ。

魚に捧げる大きな愛情
Fin & Flounder フィン&フロウンダ―

フィン・アンド・フロウンダ―新鮮な魚介類がどんどん並べられていく
フィン・アンド・フロウンダ―「エラと平らな魚」という意味の店名らしい
フィン・アンド・フロウンダ―
魚のタトゥーも見せてくれたマネージャーのダン
フィン・アンド・フロウンダ―
スモークされた魚や塩、瓶詰のマサゴなども並ぶ
フィン・アンド・フロウンダ―
店の前には配達用の可愛い自転車

おしゃれなカフェが連なるロンドン東部のブロードウェイ・マーケット。その一角にある水色の小さな可愛いショップがこのフィン・アンド・フロウンダ―だ。マネージャーのダンは左腕に魚のタトゥーを入れたほどの魚好き。取材時はちょうど新鮮な魚介類が運ばれてくる時間帯だったが、忙しい合間をぬって「見てこのキレイなマコウダイ」「ほら、お刺身にもできる新鮮なホタテ」と大事そうに商品を見せてくれた。ここの商品はすべて海洋保全協会のルールに則って採られたものか、土壌協会のお墨付きをもらった養殖場から仕入れたものだという。入口の左側には貝類やカニ、燻製の魚、調味料などが並ぶ。

土曜日のマーケットで賑わうときにはストールを出し、ブリオッシュのロブスター・バーガーやタパス的なメニューも特別に作るといい、魚だけではなく料理にも一家言ありそうだ。ストールはマーケットにやって来る食にうるさいヒップスターたちにも人気で、行列ができるほど。今日のお勧めは? と聞くと「サバ」。そう言ってる間にも、後ろから入ってきたお客さんが早速3匹買い上げていった。比較的落ち着いている平日は配達もするそう。

  • 71 Broadway Market , London E8 4PH
  • Bethnal Green駅から徒歩10分
  • 020 7998 4929
  • 火~金 8:00-19:00、土9:00-17:30、日9:00-17:00
  • www.finandflounder.co.uk

元シェフたちが作ったこだわりの店
The Fishmongers Kitchen
ザ・フィッシュモンガーズ・キッチン

ザ・フィッシュモンガーズ・キッチン店は明るい雰囲気が漂う
ザ・フィッシュモンガーズ・キッチン奇麗に並んだ魚にはたっぷりと氷がかかる
ザ・フィッシュモンガーズ・キッチン
どの魚を持つかでもめたお二人
ザ・フィッシュモンガーズ・キッチン
オリーブ・オイルやパスタと一緒に米酢も並ぶ
ザ・フィッシュモンガーズ・キッチン
ケータリング・サービスも行っている

ロンドン西部ハマースミスの駅から歩くこと5分。落ち着いた雰囲気の「ブルック・グリーン」と呼ばれるエリアにある、大通りに面した店舗。ショーウインドーから見える魚には氷がたっぷりかかっており、天井の高い店内はとても清潔なのが印象的だ。この日店で働いていたのは、ジェロームとルドビックというフランス人の2人組。マネージャーでもあるジェロームは、以前東京や大阪のホテルでシェフとして働いていたこともあるのだとか。

この店のオーナーであるトニー・リカストロも、元々は高級和風レストラン「ノブ」などで働いていたシェフで、2010年にこの地に鮮魚の店をオープンした。スタッフの料理の腕を生かし、店ではロブスターのビスクや海老のカレーなども販売するほか、シーフード・プラターのケータリング・サービスも行っている。今日のお勧めはスズキだと言うので、どうやって調理するか尋ねると、意外にもシンプルに「焼きでしょ」と一言。ほとんどの魚は英国近海、3マイル以内で採れたものばかりだから新鮮。新鮮なものはシンプルに食すのが一番、ということのようだ。

  • 119 Shepherds Bush Road, London W6 7LP
  • Hammersmith駅から徒歩5分
  • 020 7603 0673
  • 火~金 9:00-18:00、土9:00-17:00
  • http://fishmongerskitchen.com

気軽にレシピの交換ができそうな空間
Moxon’s Fishmongers
モクソンズ・フィッシュモンガーズ

モクソンズ・フィッシュモンガーズヒラメやマトウダイは英国でも好まれる魚
モクソンズ・フィッシュモンガーズ日本人のお客さんもたくさん来るそう
モクソンズ・フィッシュモンガーズ
まじめでフレンドリーなマネージャーのポール
モクソンズ・フィッシュモンガーズ
天ぷら粉を始め、便利な調味料がいっぱい
モクソンズ・フィッシュモンガーズ
レモンやハーブ類も売られている

ロンドン各地に店舗のあるモクソンズのイースト・ダリッジ店は、独立系映画館「ダリッジ・ピクチャーハウス」の斜め前。地元民に愛されるカフェやレストランに囲まれた、賑やかな一角に店を構える。店の外にはレモンやフェンネルなど、魚料理に合いそうな野菜が積まれ、窓際には天ぷら粉や寿司酢が並ぶなど、関連の商品がここですべてそろうようになっている。

「以前、日本のテレビ局が取材に来たんだよ」とうれしそうな、マネージャーのポール。牡蠣の街ウィスタブルの出身で、お店に置けるような牡蠣を現在、現地で育てているところだという。あと2年くらいしたら店で売れるはず、とのこと。「それまではフランスからの輸入品だけどね。牡蠣には何種類もあるって知ってた? 今、週に3種類ずつ試しているけど、全部味が違うよ! 」穏やかな笑顔だが、牡蠣に対する熱い想いが伝わってくる。横で話を聞いていた客の一人が「あなた日本人なの? 私、日本風のカラアゲをマーケットで売ってるんだけど……」と話しかけてきた。魚をさばいてもらう間、皆がおしゃべりをする和気あいあいの空間に、参加してみるのも楽しいのでは。

  • 149 Lordship Lane, London SE22 8HX
  • East Dulwich駅からバスで5分
  • 020 8299 1559
  • 火~土 9:00-17:30
  • www.moxonsfreshfish.com

フランスのエスプリと日本の品質
La Petite Poissonnerie
ラ・プティ・ポワソヌリー

ラ・プティ・ポワソヌリー怖い顔の魚。由香さんに調理法を聞こう
ラ・プティ・ポワソヌリー
話し好きの明るいオーナー
ラ・プティ・ポワソヌリー店の外に置かれているのは2種類の牡蠣
ラ・プティ・ポワソヌリー
長いカニの足はこの後すぐ買われていった
ラ・プティ・ポワソヌリー
フランスのグルメな食材も多々置いてある

「プリヒル姉さん」こと、由香ベルトンさんの勤務する魚屋。フランス人オーナーのニックは元シェフだが、ロンドンで一番の魚屋になることを目指し、2010年にロンドン北部の高級住宅街、プリムローズ・ヒルに1号店を開店した。日本での魚屋勤務経験の長い由香さんが勤務を始めたことで、客層も商品も一気に広がりを見せ、今ではご近所のみならず、フランス人や日本人が電車やバスを乗り継いでやって来るほどの人気店に。鮮魚ばかりでなく、フランスのバターから日本の七味唐辛子まで、調味料や惣菜なども置かれている。

店内ではフランス語が飛び交い、オーナーと客との熱心な料理談義も展開する。土曜日の取材時には引きも切らずに現れる客が、ニックのアドバイスを受けようと行列を作っていた。なお、お刺身が欲しい場合は事前に電話連絡し、受け取る方式。「サタデーズ・サシミ」は2人前が20ポンド、スターター・サイズなら18ポンドだ。ほかにオイスターやロブスターを使った盛り合わせもある。2号店はマーブル・アーチ(19 New Quebec Street, London W1H 7RY)にあり、木曜日には由香さんもこの2号店で働いている。

  • 75a Gloucester Avenue, London NW1 8LD
  • Chalk Farm駅から徒歩10分
  • 020 7483 4435(本店) 020 7723 1960(マーブル・アーチ店、日休)
  • 火~土9:30-19:30、日10:30-17:30
  • www.lapetitepoissonnerie.com

魚に関するABC

在英邦人の魚食向上のため日夜活動されている「プリヒル姉さん」こと由香ベルトンさんにご協力いただき、魚に関する役に立つ豆知識やヒントをご紹介。
文: 由香ベルトン @puriketsunesan

知っていると便利な一口メモ

Plaice プレイス(カレイの一種)
フィレになったものはムニエルに、丸ごとならぜひ煮付けに。離乳食にもぴったり。

Lemon sole レモンソール(カレイの一種)
クセがなく上品な白身の魚。ムニエル、煮付け、塩焼き、何にしてもおいしい。

Mackerel マックロウ(サバ)
発音に注意、「真っ黒」と言うように発音。季節を問わず脂があり美味。

Squid スクイド(ヤリイカ)
ヨーロッパのイカは日本では高級とされるヤリイカが主流。加熱しても柔らかく甘みがあるので炒め物にも煮物にも。

Skate スケイト(エイヒレ)
お勧めは煮付け。軟骨に沿ってたっぷり身が取れ甘辛味とよく合う。鮮度の良いものを選んで。

Monkfish モンクフィッシュ(アンコウ)
売られているのはアンコウの尾の部分。崩れにくいのでトマト煮込みやカレー、唐揚げにも。

Hake ヘイク(メルルーサ)
非常に柔らかい白身魚で、ホイル焼きや自家製さつま揚げの原料に最適。なめらかなさつま揚げに仕上がる。

Sea bass シーバス(スズキ)
英国で一般的な魚の一つ。塩焼きやアクアパッツァに良く合う。

Sea bream シーブリーム(タイの一種)
塩焼きに良い。フィレの状態ならソテーにしても。

Herring ヘリング(ニシン)
旬の冬場に出回るニシンは脂がのり、塩焼きにすればホクホクの身が楽しめる。サンマの代用にも。

Swordfish ソードフィッシュ(メカジキ)
焼肉のタレが意外によく合うのでお弁当にも。食感がブリに近く、照焼きでもおいしい。

Razor clam レーザークラム(マテ貝)
酒蒸しが簡単で貝の甘みが存分に味わえる。中の貝はすべて食べられる。

Clams クラムズ(アサリ)
砂抜きのコツは、塩水をアサリの頭が見える程度の量で。水の量が多いとアサリが呼吸できず、砂を吐かない。

Mussels マッソルズ(ムール貝)
ワイン蒸しは蓋をして3〜4分もあれば充分。加熱し過ぎは身が痩せてしまう原因に。安価なのでたっぷり食べられる。

Scallop(s) スカロプ(ス)(ホタテ貝)
基本的に加熱用。英国産ホタテは甘みがありクリーミー。オレンジ色の卵巣もおいしい。貝ヒモも堪能するなら殻付きを。

魚屋のワンポイント!

カレイ、ムール貝

カレイのフィレ
買う際には茶色い皮目の方を選ぶ。なぜなら、白い方を下にして泳いでいるため白い方は身が平ら。茶色い背側は身がふっくらしている。

ムール貝のヒゲ
引っ張ると中の貝が死んでしまうため、貝からはみ出たところをハサミで切り取る方が良い。貝に付いているフジツボなどは自然のものなので特に取る必要はない。

塩焼きにする際には
塩を振って最低20分は置く。一晩置いてもOK。塩がまんべんなく浸透し、中までほんのり塩味の効いたおいしい塩焼きが堪能できる。

簡単でおいしいプリヒル姉さんレシピ

お野菜と一緒にオーブン焼き

魚と野菜のオーブン焼き 材料(2人分)
  • お好きな魚(シーバスやシーブリーム、タラの切り身、サバなど)
  • スライスした野菜(セロリ、フェンネル、パプリカやキノコ類、玉ネギなど、どんな野菜でも。タイムなどのハーブも3本ほど入れると風味がアップ)
  • 塩、コショウ
  • オリーブ・オイル(ゴマ油に変えるとアジア風オーブン焼きに)

  1. 魚に塩を振って20分以上置いてなじませる。(重要! )
  2. オーブンを180度に予熱しておく。(オーブンは扇風機マークもしくは上下のバーが付いたマークに合わせるとオーブン内で熱風が行きわたり上手に焼ける)
  3. オーブン用皿もしくはオーブン・トレイに魚を載せ、お好きな野菜をスライスして魚のまわりに置く。(ニンジンやジャガイモ、スクオッシュなど硬い野菜はあらかじめ少しレンジで加熱しておくと良い)
  4. コショウを全体に軽く振る。
  5. オリーブ・オイルを野菜、魚の表面にかかるように(目安は大さじ2ほど)回しかける。上面のみで良い。
  6. 180度に熱したオーブンで約20分焼く。アルミをかぶせて焼くとスチーム効果でふっくらしたオーブン焼きに、アルミなしだと香ばしく。お好みで。
 

第60回 ロンドン・フィルム・フェスティバル London Film Festival 2016

第60回 ロンドン・フィルム・フェスティバル London Film Festival 5-16 October 2016

6月に行われた国民投票で欧州連合離脱が決まった英国。文化面における多様性の危機がささやかれているが、ロンドン・フィルム・フェスティバル(LFF)の最高責任者アマンダ・ネビルが「このフェスティバルにブレグジットはない」と明言した通り、今年も同フェスティバルには世界74カ国から245作品が集結する。12日にわたってロンドン各地の映画館で上映される、英国ならではの作品から国や人種を超えた作品まで、千差万別のラインナップを一足先にチェックしてみよう。

www.bfi.org.uk/lff

今年のハイライト

Opening Night Gala

アフリカの王子と英国人女性の国境を超えた愛
A United Kingdom

A United Kingdom
(UK 2016 / 105分)
監督: Amma Asante / 出演: David Oyelowo, Rosamund Pike, Jack Davenport ほか

今年のオープニング作品に選ばれたのは、「ベル-ある伯爵令嬢の恋-(Belle)」(2013年)で、18世紀のイングランドで海軍士官とアフリカ人女性との間に生まれた女性ベルの生涯を描いたアマ・アサンテ監督の最新作「ア・ユナイテッド・キングダム(原題)」。「グローリー / 明日への行進(Selma)」(2015年)などで世界的な注目を集めるデービッド・オイェロウォと、「ゴーン・ガール」(2014年)でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたロザムンド・パイクが、ボツワナ共和国の初代大統領セレツェ・カーマとその妻ルースを演じている。

1940年代の英国。英領ベチュアナランドのングワト族の王子セレツェは、オックスフォード大学留学中にロイズ保険組合で働いていたルース・ウィリアムズと出会い、恋に落ちる。しかし、結婚は一族の女性とすべしという長老たちや、ベチュアナランドの隣国でアパルトヘイト政策を推進していた南アフリカからの圧力を受けた英国からの強硬な反対に遭って……。

10月5日(水)19:00 Odeon Leicester Square
10月5日(水)19:45 VUE, Screen7
10月6日(木)11:30 Odeon Leicester Square
10月11日(火)21:00 Curzon Mayfair

Closing Night Gala

血と汗、アイロニーが交錯する
Free Fire

Free Fire
(UK 2016 / 90分)
監督: Ben Wheatley / 出演: Sharlto Copley, Armie Hammer, Brie Larson ほか

昨年のロンドン・フィルム・フェスティバルのフェスティバル・ガラ作品「ハイ・ライズ」でトム・ヒドルストンを主演に迎えてスタイリッシュな美を演出したベン・ウィートリー監督が、再び同映画祭に戻ってくる。今回クロージング作品となった「フリー・ファイアー(原題)」は、昨年「ルーム」でアカデミー賞主演女優賞を獲得したブリー・ラーソン始め、シャールト・ コプリーやキリアン・マーフィー、アーミー・ハマーなど個性派俳優がそろったアクション・スリラーだ。

ジャスティーンは、2人のアイルランド人が怪しげなギャング、バーノンとオードから銃を購入する仲介を務めていた。しかし、使われていない倉庫で行われようとしていた取引は、とあることがきっかけで血で血を洗う惨事となり……。撮影が行われたのは、イングランド南部ブライトン郊外の倉庫内。職人技が光る、血と汗、そしてアイロニーが交錯するシーンの数々は、暴力描写に定評のあるサム・ペキンパーやリンゴ・ラムらの作品を彷彿とさせる。

10月16日(日)19:00 Odeon Leicester Square
10月16日(日)20:00 Embankment Garden Cinema

American Express Gala

25年ぶりの再会を壮大なスケールで描く
Lion

Lion
(Australia-India 2016 / 128分)
監督: Garth Davis / 出演: Dev Patel, Rooney Mara, Nicole Kidman ほか

インド生まれ、オーストラリア育ちのビジネスマン、サルー・ブリアリー氏の自伝「25年目の『ただいま』(A Long Way Home)」を基にしたドラマ。「スラムドッグ $ ミリオネア」(2008年)後の活躍が目覚ましいインド系英国人俳優、デブ・パテルが故郷のインドで家族と離ればなれになり、オーストラリアで養父母と暮らすようになるサルーを演じたほか、ルーニー・マーラ、ニコール・キッドマンらが脇を固めている。

インドの貧困地域に住む腕白な少年サルーはある日、停車していた列車に乗り込み遊んでいたが、気付いたときには列車は既に出発。途中下車することもできず、数日後には家から数百キロ離れたコルカタにいた。結局、孤児院で暮らすことになったサルーは、やがてオーストラリア人夫妻の元に引き取られることに。新しい環境にも慣れ、25年という年月が経ったころ、何度も繰り返し頭の中に去来する過去の記憶にとらわれるようになったサルーは、グーグル・アースを使って故郷の家族を探し始める。

10月12日(水)19:15 Odeon Leicester Square
10月13日(木)11:15 Odeon Leicester Square
10月15日(土)14:45 Hackney Picturehouse

注目の監督作品

Headline Gala

色彩鮮やかに贈る洒脱な世界
La La Land

La La Land
(USA 2016 / 130分)
監督: Damien Chazelle / 出演: Ryan Gosling, Emma Stone, John Legend ほか

ドラマーの師弟の過酷な日々を生々しく追った「セッション(Whiplash)」(2014年)で一躍注目を浴びた新鋭デミアン・チャゼル監督の最新作。米ロサンゼルスを舞台に、フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースが活躍した古き良きハリウッド・ミュージカル映画を彷彿とさせる、ほろ苦いラブ・ストーリーが展開する。成功を夢見る女優の卵、ミアをエマ・ストーンが、レストランで演奏する売れないジャズ・ピアニストのセバスチャンをライアン・ゴズリングが演じる。

10月7日(金)18:00 Odeon Leicester Square
10月8日(土)10:30 Odeon Leicester Square
10月16日(日)20:30 Curzon Mayfair

Headline Gala

現実と過去、そして小説の世界
Nocturnal Animals

Nocturnal Animals
(USA 2016 / 116分)
監督: Tom Ford / 出演: Amy Adams, Jake Gyllenhaal, Michael Shannon ほか

コリン・ファース主演、2009年公開の「シングルマン」で映画監督として鮮烈なデビューを果たしたファッション・デザイナーのトム・フォードが手掛ける2作目は、オースティン・ライト著「ミステリ原稿(Tony and Susan)」を基にした、フォードの透徹した美意識が光るスリラー。ロサンゼルスで画廊のオーナーをしているスーザンは、人がうらやむような生活をしている一方で、2度目の結婚も危機的状況にあった。そんなある日、前夫から自作の小説が届けられて……。

10月14日(金)18:00 Odeon Leicester Square
10月15日(土)11:30 Odeon Leicester Square
10月16日(日)15:30 Ciné Lumière

The Mayor of London’s Gala

プロパガンダに「女性らしさ」を
Their Finest

Their Finest
(UK 2016 / 115分)
監督: Lone Scherfig / 出演: Gemma Arterton, Sam Caflin, Bill Nighy ほか

デンマーク出身ながら、「17歳の肖像(An Education)」(2009年)や「ライオット・クラブ」(2014年)など、英国を舞台にした作品を手掛けるロネ・シェルフィグ監督が、第二次大戦中の英映画業界を描くロマンティック・コメディー。原作はリサ・エバンズの「ゼア・ファイネスト・アワー・アンド・ア・ハーフ(原題)」。ロンドンで情報省が製作するプロパガンダ映画に「女性らしさ」を加えるため、ウェールズ出身のコピーライター、カトリンがスタッフとして採用される。

10月13日(木)19:15 Odeon Leicester Square
10月14日(金)11:15 Odeon Leicester Square
10月15日(土)13:00 Ciné Lumière

注目のファミリー向け作品

The May Fair Hotel Gala

孤独な少年と木の怪物の触れ合い
A Monster Calls

A Monster Calls
(USA-Spain 2016 / 108分)
監督: JA Bayona / 出演: Lewis MacDougall, Sigourney Weaver, Felicity Jonesほか

シボーン・ダウド原案、パトリック・ネス著の児童小説「怪物はささやく」の映画化。勧善懲悪の概念を超えた人間の「真実」を見つめるダークなファンタジーとなっている。12歳の少年コナーは母親と強い絆で結ばれているが、その母は不治の病に侵されていた。学校ではいじめられ、祖母はコナーをがんじがらめにしようとし、頼りない父親はしょっちゅういなくなる。そんな孤独を抱えるコナーの元にある日、イチイの木の怪物(声はリーアム・ニーソン)がやって来る。

10月6日(木) 19:15 Odeon Leicester Square
10月7日(金)11:30 Odeon Leicester Square
10月11日(火)18:15 Hackney Picturehouse

 

孤児院で生きる9歳の少年の日々
My Life as a Courgette

My Life as a Courgette
(Switzerland-France 2016 / 66分)
監督: Claude Barras / 声の出演: Michel Vuillermoz, Paulin Jaccoud, Gaspard Schlatter ほか

スイス出身のクロード・バラスが監督を務め、成長の過渡期にある少年少女を瑞々しく描いた作品で知られる仏出身のセリーヌ・シアマらが脚本を担当したストップ・モーション・アニメ。淡々とした語り口調と静謐な魅力をもつ世界観で大人も楽しめる作品になっている。主人公は、母親から「コジェット(ズッキーニ)」というあだ名を付けられた9歳の男の子。アル中だった母親が亡くなり、コジェットは孤児院で生活することになる。そこでは子供たちが現実を受け止めつつ共同生活を送っていて……。

10月8日(土) 18:00 Ciné Lumière
10月9日(日) 15:30 VUE, Screen5

 

一組の夫婦の半生を優しく紐解く
Ethel & Earnest

Ethel & Earnest
(UK-Luxembourg 2016 / 94分)
監督: Roger Mainwood / 声の出演: Brenda Blethyn, Jim Broadbent, Luke Treadaway ほか

「スノーマン」「風が吹くとき」でおなじみの英絵本作家レイモンド・ブリッグズによる「エセルとアーネスト ほんとうの物語」をアニメ映画化。ブリッグズの両親をモデルに、第二次大戦前後の英国に生きた一組の夫婦の半生を静かに淡々と綴っていく。ロンドンでメイドとして働いていたエセルは牛乳配達人のアーネストと結婚。やがて息子のレイモンドが生まれ、家族3人で仲睦まじく暮らしていたが、ロンドンの街がドイツ空軍の爆撃を受け、大きな被害を受けてしまう。

10月15日(土)15:15 Curzon Mayfair
10月16日(日)18:00 Haymarket Cinema

注目の日本作品

 

夢がつなぐ2つの人生
Your Name「君の名は。」

Your Name「君の名は。」
(Japan 2016 / 107分)
監督: 新海誠 / 声の出演: 神木隆之介、上白石萌音、長澤まさみ ほか

「星を追う子ども」「言の葉の庭」などで海外での知名度も高く、第二の宮崎駿とも言われる新海誠監督による最新作「君の名は。」。息苦しい田舎町の生活に辟易としていた女子高生の三葉は、ある日、東京に住む男の子になる夢を見る。一方、東京で高校生活を送る瀧は、自分が田舎の女子高生になる夢を見ていた。やがて、自分たちが入れ替わっているのではないかと気付くのだが……。1000年ぶりに日本に姿を現す彗星が、2人の人生を変える。

10月14日(金) 18:00 Embankment Garden Cinema
10月15日(土)12:00 Embankment Garden Cinema
10月16日(日)18:15 Ritzy Cinema

 

父親らしくあろうとするダメ男
After the Storm「海よりもまだ深く」

After the Storm「海よりもまだ深く」
(Japan 2016 / 117分)
監督: 是枝裕和 / 出演: 阿部寛、真木よう子、小林聡美 ほか

英国でもファンの多い、是枝裕和監督の最新作が登場。阿部寛、真木よう子、リリー・フランキーなど是枝作品おなじみの俳優たちが勢ぞろいしている。文学賞を受賞した過去の栄光にすがる良多。妻には愛想をつかされ離婚、探偵事務所に勤めてはいるものの、あくまで自分は作家だと言い張っている。一人息子の養育費も満足に払えないまま、必死に父親であろうとする良多だが、元妻に恋人ができたことにショックを受けて……。

10月6日(木) 11:30 Embankment Garden Cinema
10月13日(木) 21:00 Ciné Lumière

 

一家失踪事件と奇妙な隣人の関連は
Creepy「クリーピー 偽りの隣人」

「クリーピー 偽りの隣人」
(Japan 2016 / 130分)
監督: 黒沢清 / 出演: 西島秀俊、竹内結子、香川照之 ほか

2015年には「岸辺の旅」でカンヌ国際映画祭「ある視点」部門監督賞を獲得した黒沢清監督のサスペンス・スリラー。前川裕の「クリーピー」を基に、奇妙な隣人に日常生活を侵食されていく犯罪心理学者とその妻の恐怖をあぶり出す。6年前の一家失踪事件について、刑事から分析を依頼された犯罪心理学者の高倉。事件解決の糸口をつかめずに苦心している一方で、隣人の不可思議な行動にも困惑させられることとなる。

10月8日(土) 20:30 Haymarket Cinema
10月9日(日)12:30 VUE, Screen5

チケット入手方法

一般販売は9月15日(木)午前10時からスタート。

オンライン
公式ウェブサイト(www.bfi.org.uk/lff)から直接申し込む。
電話
Box Office Tel: 020 7928 3232(毎日10:00~20:30)
会場にて直接
BFI Southbank(毎日11:00~20:30)
Embankment Garden Cinema(10月6日~16日のみ。毎日11:00~21:00)
チケット再販売 / スタンドバイ・チケット
運悪く売り切れの場合にも諦めないこと! 9月29日(木)からさらにチケットが販売されるので、ウェブサイトをチェック、または Box Office に電話して問い合わせを。なお新しいチケットは連日出る可能性があるので、最後までチャレンジして。それでも購入できなかった場合には、当日各会場で上映開始45分前からキャンセル待ちの行列に並んでみよう。
*入手可能なチケットはこちらでチェック http://www.bfi.org.uk/lff/ticket-availability

チケット料金

スタンダード・チケット
平日マチネ(17:00以前に上映開始。Odeon Leicester Square を除く): £9
平日マチネ(17:00以前に上映開始。Odeon Leicester Square): £12.75
平日イブニング & 週末(ウェスト・エンド以外): £12.75
平日イブニング & 週末(ウェスト・エンド): £16
ガラ & 特別上映
Special Presentations and Surprise Film: £16
Strand Galas: £20 
Headline Galas: £28
Opening and Closing Night Galas(初回): £38 
Opening Night Gala(初回以外): £28
割引料金
16歳未満: £5.00
(ファミリー・ガラ作品の場合は 大人£10、子供£7。大人1人につき
子供券は最高3枚まで購入可能)
学生 / 高齢者など(身分証明書必須。平日17:00以前に上映開始): £6.50
学生イブニング & 週末(身分証明書必須。ガラを除く): £9.00
 

ロアルド・ダールを観る・聴く・食べる - 人気童話作家ロアルド・ダール生誕100年記念

ロアルド・ダールを観る・聴く・食べる - 英国人が大好きな童話作家

英国の子供ならきっと誰でも知っている、
人気児童小説家ロアルド・ダール。
ダールの作品はどれもユーモアと
温かみに溢れるが、
ブラックな毒も仕込まれており、
それが子供だけではなく
大人にも人気の秘密だろう。
9月13日はそんなダールの生誕100年記念日。
各地で様々なイベントが企画されている。

ロアルド・ダールRoald Dahl ロアルド・ダール
(1916年9月13日~1990年11月23日)
1916年9月13日、カーディフ生まれ。第二次大戦中は英軍戦闘機パイロットとして従軍し、そのときの経験を基に小説を書くようになった。米ワシントンで駐米英国大使館付き空軍将校として働きながら、英国のスパイとして活躍したとされるなど逸話も多い。また、児童小説だけではなく大人向けに「あなたに似た人」「キス・キス」といった短編や、長編小説「オズワルド叔父さん」なども書いている。007シリーズで知られるイアン・フレミングの友人でもあり、映画「007は二度死ぬ」の脚本も手掛けた。1990年11月23日、オックスフォードで死去。Roald Dahl ロアルド・ダール

1
ダールといえば、この挿絵画家
The BFG in Pictures

クエンティン・ブレイク

ロアルド・ダール作品の挿絵でおなじみのイラストレーター、クエンティン・ブレイクがダールの「The BFG」(邦題「オ・ヤサシ巨人BFG」)のために描いたオリジナル挿絵40点が初公開展示されている。ちなみに、この博物館はブレイクによって2014年に創設された。

10月2日(日)まで 火~日 10:00–18:00
£7
House of Illustration 2 Granary Square, London N1C 4BH
020 3696 2020
Kings Cross St.Pancras駅
www.houseofillustration.org.uk

2
シャードでお茶とダールが楽しめる
Roald Dahl 100 Afternoon Tea

ロアルド・ダールのアフタヌーンティー

欧州一の高さを誇る高層ビル、ザ・シャードの31階で、ダール作品にちなんだメニューのアフタヌーン・ティーが楽しめる。「アッホ夫婦」の鳥のパイ、「ジャイアントピーチ ダールのおばけ桃の冒険」からはピーチ・メレンゲなど。ブレイクのイラスト付きの食器でサーブされる。シャンパン・アフタヌーン・ティーのメニューもあり。

9月30日(金)まで 月~金 13:00–17:00 
£45~62
Aqua Shard
Level 31, The Shard, 31 St. Thomas Street, London SE1 9RY
020 3011 1256
London Bridge駅
www.aquashard.co.uk

3
人気のロングランをこの機会に
Matilda The Musical

マチルダは小さな大天才 Matilda The Musical

ダールの「マチルダは小さな大天才」を基に、ミュージシャンで俳優、コメディアンとしても活躍するティム・ミンチンが作詞作曲したミュージカル。天才少女マチルダが、子供の心を理解しようとしない大人たちに立ち向かっていく様子を描く。2012年には英演劇賞「ローレンス・オリビエ賞」で7部門を受賞した。

月~土19:30(水・土は14:30もあり)、日15:00
£20~122.50
Cambridge Theatre 32-34 Earlham Street, London WC2H 9HU
0844 412 4652
Covent Garden駅
http://uk.matildathemusical.com

4
怖いもの知らずの食通さんにぴったり
Dinner at the Twits

アッホ夫婦

ダール作品の「The Twits」(邦題「アッホ夫婦」)の登場人物、意地悪なアッホ夫妻があなたをディナーに招待、という設定で考案された不気味なコース料理が楽しめる。作品中ではミミズ入りスパゲティーを作っていた夫婦。どんなものが供されるかはお楽しみ。コースは90分で、作中人物になりきったキャストたちが盛り上げてくれる。

9月4日(日)~10月30日(日) 火~日 時間はサイトを参照 
£76.50~111.50
The Vaults Leake Street, London SE1 7NN
0844 248 1215
Waterloo駅
www.twitsdinner.com

5
ファンだったら訪れてみたい
The Roald Dahl Museum and
Story Centre

ロアルド・ダール・ミュージアム&ストーリーセンター

ロンドン郊外バッキンガムシャーの小さな街にある、ダールが1990年に死去するまで36年にわたり住んでいた家。ここは現在、ダールの児童文学を紹介する博物館になっている。劇や朗読会など様々なイベントも開催されているので、ウェブサイトで確認を。ショップにはブレイクのイラスト・グッズがいっぱいだ。

ロアルド・ダールのショップ

火~金 10:00-17:00、土・日 11:00-17:00
£6.60
The Roald Dahl Museum and Story Centre
81-83 High Street, Great Missenden, Buckinghamshire HP16 0AL
01494 892 192
Great Missenden駅(Marylebone駅から45分)
www.roalddahl.com/museum

6
街を挙げてのダール祭り
City of the Unexpected

カーディフでダールの生誕を祝う記念イベント

ダールの生まれ故郷であるウェールズのカーディフでは、市を挙げて2日にわたりダールの生誕を祝う記念イベントが開催され、街はダール一色に染まる。当日は街の各所で様々なイベントが行われるので、ファンの方は泊りがけで訪れても楽しめそう。城や教会、庭園など、思わぬ場所でのブック・リーディングもある。

9月17日(土)& 18日(日) 土13:00-21:30 日10:30-17:00
無料
カーディフ各地
029 2063 6464 (Wales Millennium Centre)
Paddington駅から列車でBristol Parkway駅まで。
以西は週末に工事が行われるため、振替バスを使いCardiff Centralまで。
詳細はサイトを参照
www.cityoftheunexpected.wales

7
ウンパ・ルンパやリスも登場
Charlie and The Chocolate Factory

チョコレート工場の秘密

英国の映画監督サム・メンデス演出による、人気ロングラン・ミュージカルは「チョコレート工場の秘密」が原作。チョコレート工場の社長ウィリー・ウォンカは、チョコレートの包み紙の中に金色の当たり券を見つけた子供だけ、自分の工場に招待するという。偶然にも当たり券をつかんだ貧しいチャーリー少年が工場で見たものは……。

2017年1月7日(土)まで 月~土 19:30(水・土は14:30もあり)
£17.50 ~ 125
Theatre Royal Drury Lane Catherine Street, London WC2B 5JF
08448 588 877
Covent Garden駅
wwww.charlieandthechocolatefactory.com

何冊読んでる?
ダールの代表的な児童小説

すばらしき父さん狐
(父さんギツネバンザイ)

Fantastic Mr Fox
すばらしき父さん狐 (父さんギツネバンザイ)

丘の上で暮らす子だくさんなキツネ一家の主人が、残虐な農場主と食糧をめぐって知恵比べ。子供たちにご飯を食べさせるため、父さんギツネが大奮闘する姿を描く。ウェス・アンダーソン監督が「ファンタスティックMr. FOX」のタイトルで映画化。

ジャイアント・ピーチ 
ダールのおばけ桃の冒険

James and The Giant Peach
ジャイアント・ピーチ 
ダールのおばけ桃の冒険

両親を亡くし、2人の意地悪なおばさんと暮らす可哀想なジェームズ少年が、巨大化した桃の中に入り込み、友人になった虫たちとともに大冒険に出掛ける。ヘンリー・セリック監督が「ジャイアント・ピーチ」のタイトルで映画化。

The BFG
オ・ヤサシ巨人 BFG

The BFG
オ・ヤサシ巨人 BFG

ある夜、巨人にさらわれたソフィー。巨人の名は、オ・ヤサシ巨人BFG。連れて行かれたのは巨人の国だった。そこでは巨人たちはニンゲンマメ(人間)を好物にしていて……。スティーブン・スピルバーグ監督により今年、映画化されている。

The Enormous Crocodile
大きな大きなワニのはなし

The Enormous Crocodile
大きな大きなワニのはなし

川から出て人間の子供を食べに街へ向かった大きなワニ。ココナッツの木のふりや校庭のシーソーのふりをして、何とか子供に近付き食いつこうとするが、そのたびにカバ、サル、ゾウといったほかの動物たちに邪魔されてしまい……。

アッホ夫婦

The Twits
アッホ夫婦 (いじわる夫婦が消えちゃった!)

意地悪で醜いアッホ夫婦と暮らし、常に彼らに虐待されているサルのマグル=ワンプ氏。英語のできないマグル=ワンプ氏は、庭にやって来た故郷アフリカからの渡り鳥に現状を告げ、ついに復讐のために立ち上がる。

アッホ夫婦

The Witches
魔女がいっぱい

お話好きの優しいおばあさんと住む少年がある日、魔女の集会を見てしまう。魔女たちは、英国中の子供をネズミにしてしまおうと話し合っていた。彼らに気付かれネズミに変えられてしまった少年は、おばあさんと一緒に魔女たちと戦うことになる。

www.penguinrandomhouse.co.uk

 
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