Nr.19 ドイツの年末
ドイツの年末には、大きな行事が集中しています。中でも、老いも若きも、誰もが待ち焦がれているのがクリスマス。12月24日の午後は慣例で仕事が休みになることが多いのですが、正式なクリスマスの休日は25、26日です。(宗教的には翌年1月6日まで続きます)そしてその後訪れるのが大晦日(Silvester)。しかし、両行事の祝い方は対照的です。
異教の冬至祭に起源を持つクリスマスは、復活祭、聖霊降臨祭と並ぶキリスト教最大の祝日で、何よりも家族を中心に静かに祝います。遠くに住む成人した子どもが親元に戻り、しばし家族みんなで敬虔(けいけん)な思いに浸るのは、日本のお盆とも似ています。プレゼントを交換し、美味しい家庭料理を一緒に楽しみ、年に1度、家族の絆を確かめ合うのです。
しかし、こうしたクリスマスのあり方に対する批判もあります。それは、宗教色が薄まり世俗化している、商業主義に毒されているといった批判です。他方で、キリスト教に由来する「閉店法」のため普通なら日曜は買い物ができませんが、クリスマス直前の日曜くらいは、ゆっくりプレゼントを買えるよう開店を許してはどうかという議論もあります。(実際の対応は地方ごとに違います)まさに宗教と商業主義の対立です。また、家庭内でお祝いの準備をするのはストレスがかかり、女性に伝統的な「主婦」のイメージを押し付けるものという反発もあります。このように現代を見事に反映しているのも、クリスマスの特徴と言えます。
これに対し、大晦日の晩は仲間と一緒に外で盛大に祝います。夕方からたっぷり飲んで食べて気分を盛り上げ、夜になると厳しい寒さもなんのその、ワインやシャンパンを片手に街に繰り出します。いよいよ夜中の12時になると騒ぎはクライマックスに達し、一斉に花火が打ち上げられます。プロが打ち上げる大がかりな花火だけでなく、お店で買ったロケット花火も数多く打ち上げられます。お祭り好きなケルンでは、煙で対岸から大聖堂が見えなくなるほどです。この時ばかりは、環境問題など忘れたかのようです。(ドイツ全国でこの晩に排出されるCO2は何トンでしょうか?)
日本では花火は「夏の風物詩」ですが、規制の厳しいドイツで花火が買えるのは大晦日直前の3日間だけです。面白いことに日本でも、外国の年越し花火の様子が紹介されるようになり、大晦日に花火を楽しむ人が増えているようです。逆にドイツでも、日本製花火が打ち上げられるデュッセルドルフの「Japantag」を始め、夏にも花火大会が催されるようになってきています。これもグローバル化ということでしょうか。