皆さん、こんにちは。今月からドイツでの子育てについてのコラムを担当する内田博美です。今、このコラムに目を通している読者の皆さんの中には、いろいろな事情で日本を離れ、異国の地で子育てに頑張るお母さんやお父さんがいることと思います。皆さんは、ドイツでの子育てをどのように感じているのでしょうか。
イラスト: © Maki Shimizu
私がドイツで生活を始めたのは10年ほど前。4歳になった東京生まれの娘を連れて歩いては、言葉の壁を感じつつも「ドイツは子どもに優しい国だなぁ」と実感したものでした。
何より嬉しかったのは、外出中、幼いわが子に誰もが笑顔を向けてくれることでした。子どもが泣いて迷惑顔を向けられたことは1 度もありません。
大きなベビーカーでも、たたむことなくバスや電車に乗れて、乗り降りするときには、頼まなくても周りの人がすぐに手を貸してくれました。パン屋や精肉屋のおばさんが、買い物に付き添う子どもにミニパンやハムを必ず1枚サービスしてくれるのも、ドイツでは見慣れた光景だと思います。
子どもの声やベビーカーの存在を“邪魔扱い”しない。ドイツにはそんな“子どもにやさしい雰囲気”があるので、子連れでも肩身の狭い思いをすることなく、楽な気持ちでいられますね。
「Kinder sind unsere Zukunft」という言葉をよく耳にしますが、「子どもは国の将来を支える宝だ」という認識がドイツ人には強くあります。そうした意識が、子どもへの温かい眼差しを生み出す一因となっているのかもしれません。
しかし残念ながら、良いニュースばかりでは終わりません。長く住めば、イヤなこともはっきりと見えてくるものですが、実はドイツには根強い教育問題が山積みになっているのです。私の目にそれがだんだんと明らかになってきたのは、娘が小学3年生の頃でした。
当時、娘が通っていた現地の公立小学校は、“学級崩壊”のような状態でした。生徒は授業中に歩き回り、先生が宿題を告知しても、騒音で後ろの席にいる子どもの耳には届きません。そんな日は放課後になると、「今日の宿題は何?」とクラスメートからの電話が絶えませんでした。
さらに気になるのは教師の欠勤が多く、それを代行する先生もいないことです。学校設備も充実しているとはとても言えない状態で、「トイレの扉が壊れても修理しない」「教室の時計が壊れても買い換えない」など、ドイツの公立学校がいかに財政難に苦しんでいるかが、手に取るように分かってしまうほどです。
そんなドイツに住みながら私は日々、自分の子どもにとってベストだと思う道を探して悩みました。「どの学校に通わせるべきなのか?」「バイリンガルに育てて大丈夫なのか?」「ドイツにいじめはあるのか?」「日本語教育は?」「帰国するときのタイミングは?」などなど、細かい不安や疑問は尽きませんが、大筋では“肩肘を張らずに自由で気楽なドイツの子育て”を楽しんでいるのも確かです。
せっかくの海外生活、子どもだけでなく親にとっても、自分を豊かにする大きなチャンスだと思って、楽しく子育てをしていきたいですよね。ドイツの子育てに関して知りたいこと、困ったことなどがあれば、ぜひ編集部へご連絡ください。みなさんの情報や体験を分かち合い、できるだけ役に立つ情報を盛り込んだコラムにしたいと考えています。
イラスト: © Maki Shimizu
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