今回も読者からのお便りを紹介したいと思います。ドイツニュースダイジェストの読者層はグローバルなので、ドイツ国内に限らず日本からも多くのお便りが届きます。その中に「これから一家で渡独するが、長い滞在になりそうで、子育てが心配だ」という主旨の内容が何通か見受けられました。園児、小学生の低学年、高学年など、お子さんの年齢によっては語学のハンデを考える必要があり、どの学校に行かせるべきなのか、親としては大きな悩みの種ですね。特にリアルな実地体験となる現地校で、子どもの個性を伸ばすことに意義を見出す親にとっては、入学させたい反面、不安も多いことでしょう。
イラスト: © Maki Shimizu
一般的にドイツの公立小学校では、途中入学者を積極的には受け入れていないようです。それでも、現地の学校に編入させたい場合、希望する学校の校長先生と直に話しをするのが一番の近道だと思います。ドイツでは直接交渉の効力が強いので、親の希望や子どもの状況など、何でもしっかりと相手に伝えることが大切です。ドイツ語ができなくても、校長先生の中には英語ができる人も多いと思いますので、ここは勇気を持ってアタックです。ただし、ドイツの小学校ではここ数年、ドイツ語のできない子どもの新入学を制限するなど、語学力の評価が厳しくなってきています。教育法規も毎年変わっており、4 歳児に言語テストを受けさせる州もあります。このように、ドイツ語のできない子どもに対して寛容的でなくなっている傾向が見受けられる一方、移民の子どもへの語学習得援助プログラムも充実し始めています。
もし、お子さんが小学3 年生以上でドイツ語がまったく話せない場合、現地校に編入しても学業の面ではなかなか難しいかもしれません。また、小学校卒業後の進路問題もあるので、小学校内で行われる補習授業の充実度を調べておく必要があるでしょう。ドイツでは同じ市内の公立小学校であっても、それぞれが異なる教科書を採択できるほど、各学校に特色があります。入学させたい現地校のホームページを閲覧したり、フェイスブックなどのネットワークを利用したりして(ドイツの大きな街では、たいてい日本人会のような組織があります)情報を十分に確保できれば、少しは不安も解消されるでしょう。さらに編入可能な学校は公立小学校に限らず、ゲザムトシューレ(総合制学校)や寄宿学校、ヴァルドルフシューレ、モンテッソーリシューレなど私立の学校もあります。興味があれば実際に学校見学をお願いして、自分の目で確かめるのも良いでしょう。
イラスト: © Maki Shimizu
ところで、ヴァルドルフシューレは日本でも有名なシュタイナー教育の学校です。私は子安美知子さんの本に感激。ドイツに住み始めた頃は「我が子にもシュタイナー教育が良いかも!」と、ドイツ人ママと新しく知り合うたびにヴァルドルフシューレの情報を聞き出そうとしました。ところが、彼女たちのこの学校に対する見方はポジティブなものとは言えず、これには本当に驚きました。私はその後、娘2 人をヴァルドルフシューレに通わせているドイツ人ママと友達になりましたが、彼女の上の子が小学4 年生になった時、公立小学校に編入させようと悩んでいる姿を見て、また考えさせられました。シュタイナー教育の是非を問うのではなく、個々のドイツ人がこの学校を(またどの学校に対しても)どのように捉えているかは、実際にこの地に住んで、人と話して初めて見えてくるのでした。
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