日本では昨年12月の衆議院議員選挙の結果、自民党が大勝し、2013年1月に第2次安倍内閣が発足した。その選挙で注目されたのが日本維新の会。橋下徹共同代表は「参議院の改革」に言及し、ドイツやフランスの参議院を手本にするとしている。今年7月、日本で行われる参議院選挙に向けて、日本の参議院とドイツ連邦参議院との違いについて見てみよう。
日本の衆議院と参議院
まず、日本の議員制度をおさらいしてみよう。日本は衆議院と参議院の二院制を採用している。
衆議院の議員定数は480人で任期は4年。参議院は242人で任期は6年である。参議院では3年ごとに半数の121人が改選される。衆議院が小選挙区比例代表並立制を採用しているのに対し、参議院では都道府県単位が選挙区となっている。衆議院と同じく比例代表枠もあり、それぞれ選挙区(都道府県単位)146人、比例代表(全国単位)96人である。
衆議院と参議院の大きな違いは、解散があるかないかだろう。戦後、任期満了を迎えた衆議院議員選挙は1976年の1回しかなく、その他はすべて解散総選挙となっている。
ドイツの連邦議会と連邦参議院
ドイツも日本と同じく二院制を採用しているが、国民の選挙によって選ばれるのは連邦議会議員のみである。連邦議会の議員定数は598人だが、超過議席で定数が前後する小選挙区制を加味した比例代表制を採用している。比例代表枠で得る議席数を上回る人数が選挙区で当選した場合、超過議席となる。任期は4年。次の選挙は2013年9月である。
連邦参議院の議員定数は69人。各州の代表により構成されている。各州の人口比に合わせて代表が派遣されるため、各州の代表者には3~6人と開きがある。任期も各州の議会の任期に合わせて4~5年となっていて、連邦参議院自体の任期は定められていない。
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[図]州別の人口と参議院議員数
各州から最低3人が選ばれる。
人口200万人以上の州は4人、600万人以上の州は5人、700万人の州は6人が選ばれる。上限は6人である。
ベルリン、ブレーメン、ハンブルクは特別市として独自の代表者を出している。
日本とドイツの参議院の違い
日本とドイツの参議院の一番の違いは、議員の選ばれ方と議員数だろう。日本の参議院議員が直接選挙で選ばれるのに対し、ドイツでは各州の政府によって選ばれた者が議員になる。各州の首相や閣僚がその役割を担うことが多いが、法律では厳密に定められていない。州の首相や閣僚は、市民からの直接投票によって選ばれるのではなく、州議会によって選ばれる。このように、連邦参議院議員は非常に間接的に市民から選ばれる。そのため、連邦議会に比べて権限が制限されている。主な役割は、州の代表として各州の意見を国政や立法、欧州議会に反映させること、重要な法案に対して”Nein”(いいえ)を突き付けることである。
このように、ドイツと日本では参議院議員の選出の仕方から、その役割までもが違う。日本の国会議員が多過ぎるという議論の中で、ドイツの国会議員の数を比較対象としていた例もあったが、連邦制で連邦議会と州議会があり、州の代表が参議院を構成するドイツと日本とでは、単純な比較が難しいことがわかる。
今回の日本の選挙報道を見ると、限られた時間の中で各政党の主張を把握するのがいかに難しいかを実感する。主張の背景までを情報として流すには報道時間が限られているからだ。そのせいか、今回の選挙結果を受けて気になるのは、戦後過去最低を記録した投票率(59.32%)。一方、ドイツの前回(2009年)の連邦議会選挙の投票率は70.8%で、こちらも戦後過去最低であった。9月のドイツ連邦議会選挙の投票率が気になるところだ。
不安定な連邦大統領のポスト
1月11日の世論調査ドイチュラントトレンドによると、「政治家としての仕事ぶりに満足している」という項目で、メルケル首相は65%の支持を獲得した。首相がころころ入れ替わる日本の政治家から見れば羨ましい話だろうが、ドイツにも近頃安定しないポストがある。それが、連邦大統領だ。
メルケル首相が連邦政府のトップであるのに対し、連邦大統領は州のトップである。政治には参加せず、すべてのドイツ市民と党の代表、つまり国家の顔という役割を担う。連邦議会の解散権を持っていることを除けば、日本の天皇にやや似た役割を担っていると考えてもらえば良い。
任期は5年であるが、その任を全うせず立て続けに2人の大統領が辞任した。まず、2009年に大統領に再選を果たしたばかりのホルスト・ケーラーが2010年5月に自身の政治的発言の責任を負って辞任し、ドイツで戦後初めて任期中に辞任した大統領となった。次に、クリスティアン・ヴルフが前職のニーダーザクセン州首相の任期中に、知人から低金利で融資を受けていたことが発覚。彼は、その情報を察知し、記事を掲載しようとした新聞社の編集長の留守番電話に脅迫めいた発言を残してしまい、正式な汚職捜査が始まった2012年2月に辞任した。こちらは夫人による暴露本や離婚騒動でご存知の方も多いだろう。
実はこの連邦大統領の辞任と参議院には深い関わりがある。連邦参議院の議長は、本会議の招集や議事の進行が主な仕事だが、連邦大統領が職務を遂行できない場合や任期終了までにポストが空いた場合の代理もその役目である。議長は各州の首相が持ち回りで務め、任期は1年。したがって、彼らにとって連邦大統領の代行は、あまり予想しない役回りだろう。新聞での華々しいスキャンダルの裏で、連邦参議院の議長の影の活躍があるのだ。
【単語】
この記事に出てきた主な単語は下記の通り。
● der Bundestag:連邦議会
● der Bundesrat:連邦参議院
● der/die Bundeskanzler/in:連邦首相
● der/die Bundespräsident/in:連邦大統領
● der Landtag:州議会
● der/die Ministerpräsident/in:州首相
(Präsidentと呼ばれるが、連邦大統領と違い、政治を遂行する立場である)
連邦会議
die Bundesversammlung
<参考文献とURL>
■ Zur Orientierung Basiswissen Deutschland (Hueber 2006) Bundesrat “bundesrat.de”
■ テレビ東京「池上彰の総選挙ライブ」(16.12.2012)
■ 参議院 “www.sangiin.go.jp”
■ 財団法人自治体国際化協会「ドイツの地方政治」(10.2011)
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