第2回 非課税の諸手当
2月から隔月でスタートした「ドイツ税制案内」。連載2回目となる今回は、被用者が毎月の税込給与に加えて、どのような諸手当を非課税で受け取れるかをまとめてみましょう。以下の項目は賃金税の対象から除外されているため、被用者に手当がそのまま支給され、雇用者と被用者双方にメリットがあります。ただ、実際にこれらの手当を支給するかどうかは雇用者の判断となります。
● 高齢者勤務モデルへの対応(Altersteilzeit)
ドイツには、高齢に達した従業員がそれまでよりも減額された給与で数年間、フルタイムで勤務し、その後数年間休職している状態(事実上の退職)に切り替えて、引き続き定年まで同額の給与を受け取るという非常勤モデルがあります。この場合、減額した給与を補う意味で雇用者が任意に給与を上乗せし、さらに給与減額に伴って減った法定年金保険の積立金についても、後に受給額が大きく減らないように追加積立金を払い込むことがあります。その際の給与上乗せ分と年金の追加積立金は、高齢者勤務法に従って非課税扱いとなります。
● 業務用機器
会社所有の携帯電話やタブレットPCなどを個人が使用する、また会社が使っているコンピューターのシステムやソフトウェアを個人が使用するという特典は、非課税扱いです。ただし、非課税扱いになるのはあくまで使用についてのみで、基本的に会社所有の機器そのものを被用者に贈与することは禁じられています。
● 会社主催の行事
会社が主催するクリスマスパーティーなどは、厳密に言えば従業員が受け取る非物質的恩恵であり、会計上は賃金とみなされるため、課税対象です。しかし、そのイベントが主に企業側の関心により行われるもので、従業員1人当たりのコストが110ユーロ以下であれば、年に2回までは雇用者側の出費が非課税扱いとなります。
● 二重家計
勤務地などの都合で従業員の家計が二重になる場合には、1世帯以上の出費は雇用者から非課税で精算されます。特に交通費、食費、第2の住居の家賃と引越し費用がこれに当たります。
● 研修
業務に必要な研修については、この研修を企業側の関心で実施する場合は非課税となります。
● 健康増進目的
従業員が健康状態を改善する目的であれば、雇用者は従業員の給与に加え、年額500ユーロまでを非課税で支給することができます。
● 幼稚園手当
学齢期に達していない子どもがいる従業員に対し、子どもの幼稚園入園・通園に掛かる費用を雇用者が従業員の給与に上乗せして支給した場合、これは非課税扱いとなります。
● 茶菓代
社内での打ち合わせなどの際の茶菓代(コーヒーやクッキーなど)は賃金とみなされないので、非課税です。
● 社員割引
雇用者が企業の製品やサービスを割引価格で従業員に販売する場合、 従業員がそれを特に必要としていないという前提であれば、割引分の金額について年額1800ユーロまでは非課税となります。
● 交通費
公共交通機関の利用については実費、自家用車による通勤には走行距離1km当たり30セント、出張時の宿泊費と食事手当については規定に則した定額が非課税で精算可能です。この項については前回(2月7日発行971号)詳しく取り上げています。
● 現物給与
商品、給油チケットなどの現物給与については、月額44ユーロまでは非課税扱いとなります。
● 電話
私物の電話の通話料金のうち、業務用に使用した部分については非課税で精算可能です。
● 引越し費用
仕事の都合でやむなく引越しをする場合には、被用者は引越しの実費について、雇用者から非課税で精算を受けることができます。また、引越しに付随するその他の費用も、一時金として支給を受けることが可能です。
● 日曜祝日出勤・夜勤手当
被用者が日曜、祝日、夜間に勤務した場合の手当は非課税で給付されます。
以上の諸手当は、一定金額以下であれば非課税扱いとなり、控除されることなく被用者は100%受け取ることができます。このほかにも税制上優遇される諸手当があり、中には雇用者が定額税で被用者に提供できるものも少なくありません。ただし、非課税扱いの条件を満たしているかどうかについては、各々のケースを精査する必要があります。ご不明点が生じた場合は、お気軽に弊社までお問い合わせください。
(著:ファブリス・ベーナー)
リンケ・トロイハント会計税理事務所
ジャパンデスク
担当:田中
www.rinke-japan.de
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