ジャパンダイジェスト

第8回 引っ越し費用の税制上の扱い

就職や転職、転勤に際して、引っ越しはつきものです。しかし、その費用は被用者にとってはかなりの金銭的負担となることが少なくありません。被用者の引っ越しは、 それが職業上の理由であれば、雇用者から非課税で費用の払い戻しを受けることができます。また、確定申告の際に必要経費として費用の控除を受けるという選択肢もあります。今回は、被用者の引っ越しについて、税制上のメリットを享受するための条件と、実際にどのような優遇措置が適用されるかについてまとめました。本文中の上限額は、2015年3月1日以降に完了した引っ越しを対象とします。

1. 条件

雇用者が被用者の引っ越し費用を非課税で支給する、もしくは、被用者が確定申告時に控除を受けるための条件は、その引っ越しが職業上の理由で発生したものであること。そして対象となるのは、実際に発生した実費だけです。

職業上の理由とは、引っ越しの決定的な理由が雇用関係にあり、雇用者が被用者に転居の機会を与えた場合を指します。例えば、転勤や海外駐在のほか、雇用者の業務上の必要性に応じて被用者が引っ越す場合などです。新卒採用で就職した場合や、遠方への転職もこれに含まれます。さらに、引っ越しにより自宅と勤務先の距離が大幅に短縮されるケースもこれに当たります。「大幅な短縮」とは、往復の通勤時間が少なくとも合計1時間以上短縮されること、と定義されています。

2. 支給対象となる費用

具体的に、どのような費用が対象となるかは、以下の通りです。これらの費用については雇用者から払い戻しを受けるか、または必要経費として確定申告時に控除を受けることができます。

• 輸送費
荷物の輸送に必要な費用(物流業者への支払い)。

• 旅費
被用者とその家族(配偶者、長期間安定した関係にあるパートナー、子ども)の交通費、食事代、宿泊費。実際に引っ越すときの旅費だけではなく、住居探しの際の費用も含まれます。

• 二重払いの家賃
解約告知期間の関係で、転居後も、それまで住んでいた住居に対する家賃の支払い義務が一時期継続する場合の家賃(最長6カ月まで)。

• 仲介費用
不動産業者への仲介料の支払い、広告掲載費、電話代など。

• 子どもの授業料
転居のために子どもの補習授業が必要になった場合の授業料。ドイツ国内の転居の場合は上限が1841ユーロ、国外転居では同4085ユーロ。

3. 定額支給

その他の引っ越し関連の費用については、 支払い額を証明することなく、雇用者から一定額の支給を受けることができます。実際の出費がこの額を超える場合は、領収書など支払い額の証明書類を揃え、雇用者から実費を支給してもらうか、確定申告時に控除を受けます。ここで言うその他の費用とは、例えば元の住居の修繕費、新居のキッチンや家電機器の据え付け費などです。

ドイツ国内での転居時の支給定額は、独身者は730ユーロ、既婚者は1460ユーロです。子どもやその他の同居人については、1人当たり322ユーロが支給されます。

欧州連合(EU)域内への転居時の支給定額は、独身者は1022ユーロ、配偶者またはパートナーに対しては別途971ユーロが支給されます。子ども1人当たりの支給額は511ユーロです。

EU域外への転居の支給定額は最高となり、独身者は1073ユーロ、既婚者または長期的なパートナー関係にある者にはカップルに対して計2146ユーロ、子ども1人当たり715ユーロが支給されます。

定額支給には、費用が必要経費と認められるかどうかは査定されません。ただし、実費が定額より結果的に高くなった場合は、これらの出費が本当に必要経費の性格を持つのか、また控除対象とならない出費が含まれていないかどうかが査定されます。

引っ越し費用とみなされないものには新居用の家具代などが挙げられ、こちらは控除の対象とはなりません。

4. 個人の事情による引っ越し

純粋に個人的な理由から引っ越しをする場合でも、部分的に引っ越し費用の控除を受けることが可能です。住居内で行われる各種サービス業務(清掃など)や、 改装、修理、改修などの職人に対する支払いについて、支払い額のうち人件費部分の20%(上限額はサービス業務が4000ユーロ、その他改装費などが1200ユーロ)が、納税額から直接差し引かれます。

まとめ

このように、引っ越し費用については様々な項目で税制上のメリットを享受することが可能です。雇用者による非課税の現金支給は、被用者にとって最も便利な優遇措置と言えるでしょう。弊社は、払い戻しが可能な出費や必要経費の限度額などのお見積もりをはじめ、オールラウンドに皆様をサポートいたします。また、国外転居の場合でも、職業上もしくは個人の理由による引っ越しにかかわらず、ドイツの税務署とすぐに関係が絶たれるわけではありません。ドイツでの課税義務を怠りなく履行するためにも、ぜひ弊社のサービスをご利用ください。

(著:税理士クリスティーネ・フュッセル)

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リンケ・トロイハント会計税理事務所

ジャパンデスク
担当:田中
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