ジャパンダイジェスト

デンタルフロスのすすめ

デンタルフロスのすすめ

ドイツで歯科診療をしていると、日本人の患者さんに「毎日歯を磨いているのに、虫歯がたくさんできるのはどうして?」「ドイツ人はなぜ、歯が丈夫な人が多いの?」と聞かれることがよくあります。実際にドイツ人よりも日本人のほうが、歯周病にかかる人の割合も多いのですが、私がドイツで歯科診療を通して印象的なのは、全年齢を通じて、日本人の口腔衛生状態がドイツ人と比較してかなり悪いということです。

その理由の1つとして、日本の国民皆保険制度では虫歯の治療の多くが保険診療に適用され、虫歯になれば歯科治療を気軽に受診することが可能なので、歯科予防の意識が低くなりがちということが挙げられます。

さらに日本の歯科医療の現場での大きな問題は、虫歯治療をしたところから再び虫歯が発生する二次虫歯。虫歯を治療するときは原則的に細菌に感染したところを削って詰め物をするのですが、削った部分と詰め物の境界は場合によって簡単に細菌の侵入を許してしまうため、再び感染を起こしたときには、さらに歯の奥まで侵蝕してしまうのです。

そのため、せっかく虫歯治療をしても口腔衛生状態が悪ければ、虫歯治療がさらなる問題を引き起こすことに。また、保険診療で施される虫歯治療は保険点数(医療費)が非常に低いうえに使用する材料も限られているため、二次う蝕(しょく)が避けられないことも多いのが現状です。

話は日独の口腔衛生の違いに戻ります。日本人とドイツ人では予防歯科の意識に大きな差がありますが、特に違うのは日常的なデンタルフロスの使用の有無。日本では「糸ようじ」という名称のほうが馴染みがあるかもしれません。糸ようじは30年ほど前に発売されたもので、その当時すでにデンタルフロスが歯科クリーニング用品として一般的だった欧米に対し、日本でも普及させようと手軽に使用できる形状(弓状のスティックにデンタルフロスを張ったもの)に開発されました。

日常的な口腔衛生のメインはもちろん歯ブラシですが、歯ブラシでクリーニングできるのは歯が口腔内に露出して見える部分のみ。しかし、歯はすべて生え揃っていれば上下で、親知らずを除くと28本が隙間なく隣り合って並んでおり、歯と歯が接触している部分(コンタクトポイント)は表面からは見えません。そしてコンタクトポイントとその周囲は歯ブラシの先端が当たらないため、磨くことが難しいのです。

また虫歯の発生源の多くはコンタクトポイント近辺なので、虫歯を予防したり治療後の二次虫歯の発生リスクを抑えるためにも、この歯ブラシでは磨けない部分の清掃が重要になります。それを効率良く清掃できる道具が、デンタルフロスです(詳しくはNr.1014参照)。

dmのデンタルフロスと歯間の汚れを染め出した写真
dmのデンタルフロス(写真左、筆者撮影)、歯間の汚れを染め出した写真(写真右)

夜寝る前の歯磨き時にすべての歯と歯の間をデンタルフロスで清掃するだけで、虫歯と歯周病のリスクを大きく下げることができるのです。「痛い」「出血する」とデンタルフロスを避ける人もいますが、これは細菌感染によって歯肉が炎症を引き起こしているから。毎日正しく使用すれば、2週間後には細菌数が劇的に減少するため、痛みや出血はほとんどなくなります。

デンタルフロスは薬局やスーパーマーケットで多くの製品が販売されていますが、個人的なおすすめはdmブランドの「DONTODENT Zahnseide Sensitiv Floss」。いろいろな製品を試してみた結果、これが使い心地が良く清掃性が高いうえに1個1ユーロと値段もお手頃! 歯科医院で口腔クリーニングをする際に、デンタルフロスの使用方法を歯科衛生士さんに教えてもらうとより効果的です。

1日1回、たった2分のデンタルフロスの使用が歯や歯周組織の寿命を延ばします。今日からデンタルフロスを始めてみませんか?

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最終更新 Dienstag, 23 April 2019 09:31  
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