尿路の結石って何?
腎臓から尿道までの尿路で見付かる石が尿路結石です。結石の部位により、腎臓結石(腎結石)、尿管結石、膀胱結石、さらに尿道結石に分類されます(図1)。日本人に見付かるのは、ほとんどが腎臓結石と尿管結石。エジプトのミイラからも膀胱結石が見付かったというくらい古くからある病気です。
図1 尿路の結石
尿管結石では尿の流れが妨げられ、腎臓に尿が溜まって
水腎症を来たすことがあります
尿路結石の症状は?
比較的大きい腎結石でも腎臓に留まっている限りは、通常は無症状です。結石がいったん腎臓から尿管に移動し、運悪く尿管の途中で引っ掛かると尿管結石となります。尿管結石の3大症状は「血尿」「痛み」「石の排出」。突然、腰から背中にかけて生じる痛みや下腹部の痛み、吐き気、血尿が出現します。
なぜ尿管に結石が引っ掛かるの?
腎臓と膀胱を繋ぐ尿管の長さは約25cm、途中で解剖学的に尿管の細くなっている箇所が3カ所もあります。そのため、腎臓から落ちてきた結石はここで引っ掛かることが少なくありません。
合併症の危険は?
尿管結石には合併症もあります。石の上流側に停滞した尿に圧迫されて腎盂(じんう、腎臓の尿を集める漏斗のような部分)が大きく拡張してしまった状態を「水腎症(Hydronephrose)」と言い、腎障害の原因にもなります。停滞した尿に細菌感染が加わると、悪寒や発熱を伴う「腎盂腎炎」となります。
結石の診断は?
急性期には典型的な症状により尿管結石が疑われます。しかし、見た目にも分かる血尿は約20% で、ほとんどの場合、尿検査で分かる潜血尿です。結石の位置や水腎症の有無は、腹部超音波や腹部レントゲン検査、腹部CT などで確認します。一方、腎結石は、ほとんどのケースで明確な症状が出ず、健康診断時の超音波検査などで偶然に見付かることも少なくありません。
男女で罹患率に差はある?
腎・尿管結石の男女比は2.4対1で男性に多い病気です。男性では30〜50歳代に、女性では閉経後の50歳代にピークが見られます。最近は男女とも頻度が急増していて、男性では7人に1人、女性では15人に1人が生涯で一度は経験する救急疾患です。増加の背景として、高脂肪食や過食など食習慣の変化を指摘する意見もあります。
結石の種類は?
最も多いのは「カルシウム結石」で、尿路結石の約90%を占めます。最も多い結石成分はシュウ酸カルシウム。その他、高尿酸血症の人にみられる「尿酸結石」や、感染の繰り返しによってできる「感染結石(スツルバイト結石)」があります。原発性副甲状腺機能亢進(こうしん)症という病気では血中カルシウム濃度が高くなり、腎結石ができやすくなります。
尿管結石の治療
大きさが5mm以下の結石は自然排石が期待できます。急性期の痛みに対しては非ステロイド系の鎮痛薬、結石の刺激に反応し、収縮している尿管に対しては鎮痙薬を用います。自然排石を促すため、1日2リットル以上の水分摂取と適度な運動が推奨されています。
直径1cm以上の腎結石の積極的治療法として、体外から音波を結石に集中させて結石を砕き尿と共に排出させる「体外衝撃波結石破砕術(ESWL)」があります。また内視鏡的を用いて経皮的(PNL)、経尿道的(TUL)にて石を取り除くこともあります。各々適応があるので、医師に相談してみましょう。
日常生活での再発予防法は?
腎結石が排出された後に2度目の結石が形成される確率は、5年で40%、10年で80% と言われています。一般に尿が濃くなると結石ができやすくなるので、予防のため毎日2リットル以上の水分摂取を心掛けましょう。
清涼飲料水の大量摂取は尿中カルシウムを増加させ、結石形成を抑える尿中クエン酸が減るので好ましくありません。また、コーヒー、紅茶、濃い煎茶には結石の成分となるシュウ酸が多く含まれています。高脂肪食や過食は腸管からのシュウ酸の吸収を促進するため、シュウ酸カルシウム結石では注意が必要です。ビールは確かに尿量を増加し、結石排出を促す可能性もありますが、一方で尿酸値を上昇させるプリン体含有量がほかのアルコール飲料の15倍も高いので、尿酸結石には不向きです。尿酸結石では高尿酸血症の薬物治療と肉類・アルコールを控えるなどの食事療法が基本となります。食事に関しては、「正常」なカルシウム摂取が推奨されています。
・ 清涼飲料水、コーヒー、紅茶、濃い煎茶の飲み過ぎに注意
・ 脂肪分・蛋白質の摂り過ぎ、過食を避ける
・ 尿酸結石の人はビール、肉類はほどほどに
・ 結石の排出がみられたら、できるだけ確保する
ドイツの硬水との関係は?
カルシウムを多く含む硬水が腎結石を作りやすいかどうかについてですが、硬水と結石との因果関係はないというのが現在の結論です。むしろ、硬水はシュウ酸の腸管からの吸収を妨げ、シュウ酸カルシウム結石の形成を抑えるとも考えられています。
ほかにもある、尿潜血をきたす疾患とは?
尿に潜血をみる疾患は尿路の結石だけではありません。腎臓や膀胱の腫瘍、膀胱炎、日本人に多いとされるIgA腎症、さらに体位の変換や運動後にみられる腎臓下垂による潜血尿もあります。尿潜血が続く場合には医師に相談してみてください。