ジャパンダイジェスト

第12回生粋のマンガ少女がドイツで牧師になるまで

今回の読書案内人
井野 葉由美さん

Hayumi Ino井野 葉由美さん

ドイツ留学中にイエス・キリストに出会い、声楽専攻から牧師に転身。2022年よりミュンヘン日本語キリスト教会牧師。少女マンガ、オペラ、ダンスが大好き。本誌連載「私の街のレポーター」では、ミュンヘン地域のレポートを担当。
www.muc-japan-christ.com

マンガとの出会いでドイツへ

小学校3年生の時にマンガに出会ってから、完全にマンガっ子になってしまいました。特に自分の好きなマンガは何度も読んで、コマ割りからセリフまで全て再現できるくらい。ドイツにはもともと声楽の勉強のために留学したのですが、これも中高生の頃に読んでいたマンガの影響で。『エロイカより愛を込めて』(秋田書店)や『オルフェウスの窓』(集英社)など、ドイツが舞台のマンガを通して、ドイツに憧れていました。

おすすめのマンガを一つだけ選ぶのは至難の業ですが、今回は田村由美さんの『BASARA』を挙げました。私は特に好きなマンガだけ単行本を買って手元に置いているのですが、その傾向を見ると、主人公が闘っているものが多かったです。本作も、父と兄を殺された主人公が敵討ちをするところから始まる物語ですが、その過程で自分自身も誰かの敵になってしまう。自分も追われる側になり、憎しみを持ち続けて戦うことが本当の解決になるのかと、主人公は葛藤します。善とは何か、悪とは何か、すごく考えさせられる作品です。

本当の意味で大切な人を守るには

2冊目の『たいせつなきみ』は、米国の牧師さんが書いた絵本。木彫りの小人たちがお互いを評価しながら生きていて、彼らは良いことをすれば「お星さまシール」、失敗したりすると「だめじるしシール」を貼られます。そんななかで、何のシールも付けていない女の子がいます。その子は、誰からもレッテルを貼られることがないのです。

以前、子育てで悩み中のお母さんにも、この絵本をおすすめしたことがありました。世の中に出ていけば、絶対に自分に対して好ましくないことをしてくる人がいる。親がどれだけ子どもを守りたくても、それは避けて通れません。どうしたら親がその子を守ることができるかというと、その子自身にとても価値があるということを伝え続けること。自分で自分の価値を分かっていれば、他人からの評価を気にせず、心を強く持って生きることができる。この本は、そんなことを教えてくれました。

昔も今も通じる「人間の取扱説明書」

ドイツ留学中にキリスト教に出会ってから今に至るまで、自分が最も影響を受けた本はやはり『聖書』です。それ以前は、ただ歌うことが好きで、技術的にも評価されなければと思っていました。ですが聖書を通して、音楽はもともと神を讃えるためのものということを理解する瞬間がありました。私が歌うことを通して、その場にいる人たちにも神様の愛がたくさん降り注がれたらいいなぁと思うようになって。自分にとって「なぜ歌うのか」ということが変わったのです。

聖書は「人間の取扱説明書」なんていわれますが、まさに人間にはこういう機能がありますよ、こういう扱いをしたら壊れますよ、ということが書かれていています。何より現代の私たちにも全く通用する。いくら技術が進歩してきても、人間がどう考え、どういう風に心で感じるのかということは変わらないのだなと思います。『聖書』というと、道徳的に素晴らしい人間ばかり出てくると思われるかもしれませんが、実は失敗している人たちがいっぱい。ですが、その人たちのことも神様は見放さないで、愛してくださっている。人間がより自由になって、自分らしく生きるためのさまざまな言葉が詰まっていて、私も日々励まされています。

おすすめの3冊はコチラ

『BASARA』 田村由美 著
小学館

『BASARA』

舞台は、暴君の王によって支配される未来の日本。人民を救う「運命の子」として生まれてきたタタラだったが、王の軍政に村を襲われ殺されてしまう。タタラの双子の妹である更紗 (さらさ)は、兄の死を隠すために自らタタラとなり、復讐の旅を始める。

『たいせつなきみ』 マックス・ルケード 著
いのちのことば社

『たいせつなきみ』

木彫りの小人たちの村では、褒めたい人に「お星さまシール」を、けなしたい人に「だめじるしシール」を貼る。だめじるしばかり貼られたパンチロネは、外出するのもいやになってしまう日々。そんななか、どちらのシールも貼られていない小人のルシアに出会う。

『聖書 新改訳2017』 新日本聖書刊行会 翻訳
いのちのことば社

『聖書 新改訳2017』

1600年の年月をかけて、約40人の著者を通して書かれたキリスト教の正典。本書では、最新の聖書学に基づいて『聖書 新改訳』を47年ぶりに全面・大改訂。原典に忠実かつ朗読に適した読みやすい日本語で書かれている。

 
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