87年金はドイツと日本、どっちで課税?
●原則的には居住地で課税
米国やフィリピンの課税は「属人主義」と呼ばれ、国籍のある国への申告義務があります。日本やドイツは「属地主義」のため、原則的には居住地で課税されますが、実際には多くの例外が存在します。職種や所得の種類により、相手国によっては非居住者でも課税される場合があります。
不動産所得は、原則的に不動産がある国で課税されます。ドイツ在住の場合は、世界中どこの国からの収入であっても、また外国の銀行口座への入金であっても、全ての収入は居住国であるドイツで申告します。日本と違い、ドイツでは主婦(主夫)の副業収入の非課税枠は年間410ユーロまでと非常に低いため、日本からの収入であってもこの金額を超えていれば申告が必要です。
また、2018年からは共通報告基準(CRS)に基づく自動情報交換が各国税務当局間で始まったため、当局が他国での収入を把握することは今後さらに容易になってくるでしょう。また個人事業主・フリーランサーの方は、書類保管義務が6〜10年あります。
ドイツ・日本間の年金収入については居住国のみでの課税でしたが、2017年よりそれぞれの国で課税され、居住国でも申告することになりました。この制度は相手国によっても異なります。
●ドイツの年金はどれだけ課税されるの?
ドイツの年金は、2004年までは非課税枠が大きかったのですが、2005年に受給を開始した人から受給額の50%が課税されることになりました。受給開始年が1年遅くなるごとに課税対象率は2%ずつ上昇し、今年2020年から受給する人の課税対象率は80%。2040年以降の受給開始の場合は100%課税されるため、1973年以降生まれの方はフルに課税されることになります。
その代わりに、現役時代の法定年金やリュルップ年金の所得税控除率は毎年上昇します。税率の高い現役時代にリュルップ年金保険に加入すれば、メリットが得られるようにデザインされているため、連邦政府は個人年金加入を推奨しています。ただし、一度年金受給を開始したらその後の課税対象率は変わりません。
●日本でドイツの年金を受け取る場合
帰国してドイツの年金を受給する場合、ドイツの年金が収入全体の90%に満たないと、非課税枠はなく最初の1ユーロからドイツで源泉徴収されます(beschränkterSteuerpflicht)。なお、役員報酬は30%課税となります。
収入の90%以上がドイツからの年金の場合は、その申請(Antrag auf „unbeschränkte Steuerpflicht“)をすることにより、ドイツに居住している場合と同じように控除が受けられます(unbeschränkter Steuerpflicht)。基礎控除枠は独身で9408ユーロ、既婚者は1万8816ユーロです(数字はいずれも2020年、毎年少しずつ上昇)。
ドイツ国外での収入が上記の基礎控除枠以下の場合も、これと同じく控除が得られます。一方、日本の年金をドイツで受給する場合には、やはり日本で課税されます。
●国外年金受給者のための問い合わせ先
ドイツ国外居住者専門の税務署であるFinanzamtNeubrandenburg (RiA) が問い合わせ先になっています。サイトは英語もあり。クレジットカードでの納税も可能です。また国外で年金を受給する場合は、定期的に生存確認書が届くので必ず返信しましょう。