70 2019年度版ドイツの制度 最新情報
毎年1月分の給与から給与額面が同じでも、少しだけ手取り額が上がっていることにお気づきですか? 年金の積立額は2005年には60%の所得税控除、その後毎年2%ずつ控除率が上がり2025年には100%控除されます。そこでこの2%分の控除額だけ毎年手取りが上がるという仕組みです。また、2018年までは従業員負担のほうが約1%多かった健康保険料負担が、2019年からは完全に労使折半になります。しかし介護費用の増加により介護保険は労使合わせ0.5% アップの3.05%。子どものいない人はさらに0.25%が加算されます。
● 基礎控除額 Grundfreibetrag
1人あたりの基礎控除額は2018年の年間収入9000ユーロから9168ユーロ(夫婦の場合は1万8336ユーロ)に引き上げられます。基礎控除額とは「最低限の生活を満たすため、控除額内の収入であれば所得税は課さない」というもの。
児童基礎控除額(Kinder-freibetrag)は大人の金額より少し低い金額で、年間7620ユーロ(昨年7428ユーロ)となります。児童基礎控除とは、子ども1人に対して掛かった金額に関係なく控除されるもので、実際の節税率は控除額×収入に応じた税率(%)となります。実は子どもの場合は、確定申告をした際に税務署が児童手当と児童基礎控除のどちらか有利なほうを自動的に選択します。児童手当も2019年7月より1人あたり10ユーロアップの204ユーロ、3人目は210ユーロ、4人目以降は235ユーロとなります。2019年の子ども1人あたりの年間の児童手当は204ユーロ(1〜2人目の場合)の12カ月分で2448ユーロです。児童手当の2448ユーロを受給するよりも児童基礎控除額の7620ユーロを控除したほうが、還付が多い場合は、確定申告により差額分の還付を受けられます。
● 年金保険の最大控除枠
1人あたり年間2万4305ユーロ(昨年2万3712ユーロ)、夫婦で4万8610ユーロに拡大されています。控除対象となる個人年金のリュルップ年金(Basisrente)は法定年金と合わせてこの金額まで控除可能。法定年金は最大でも年間7500ユーロ弱なので、夫婦では年間に追加で4万ユーロ以上の年金保険への積立を控除でき、最大で積立額の約40%もの所得税を控除できます。
● 最低賃金 Mindestlohn
8.84ユーロから9.19ユーロにアップ。これは手取りではなく給与額面の数字です。
● 法定健康保険の無料家族加入枠
毎月の収入限度額は10ユーロアップの445ユーロとなります。この金額は法定健康保険に家族加入している人がフリーランスや自営業として稼げる限度額で、売上から経費を差し引いた利益の平均です。限度額を超える月があっても平均収入がこの金額以下であれば家族加入を継続できます。平均収入を計算するための期間は税務署に申請した事業開始日からとなるため、年収を12で割るとは限りません。1ユーロでも限度額を超えれば最低毎月約180ユーロの保険料を1年分さかのぼって支払うことになるので注意が必要です。
● 法定健康保険の義務加入枠
毎月の給与が5062.50ユーロを超えていると、プライベート保険の加入も可能です。ただしプライベート保険のメリットとデメリットを考慮した上で選択すべきでしょう。