#3 姓名判断は国境を越えて
私ごとですが、先日、息子が生まれました。それは出産予定日から1カ月前のある夜の出来事。一人呑気にビールを開けた僕の耳に、「破水したっ!!!」という妻の叫び声が届いた。僕はアパート中を疾風のごとく行ったり来たりしながら、スケッチブックやおにぎりなどをかばんに放り込む。
運ばれた先の病院では、オロオロしてばかりでドイツ語の聞き取りもままならず、しまいには助産師さんに「あなたはそこでじっとしてなさい!」と叱られてしまう。もう父親になるというのに……と自分の不甲斐なさに胸がえぐられたが、生まれた子を見たら、そんな思いは吹き飛んでいった。
だが困ったことに、あまりに突然だったのでまだ名前が決まっていない。数日中に出生届を出さなくてはならないので、まず僕たちは、彼に似合う名前をローマ字で考えた。さらに、日本の出生届のために漢字を決めなくてはならない。そこで問題になったのが画数である。
僕はもともと、姓名判断を当てにしていなかった。画数で未来が決まってしまうなんておかしな話だし、アルファベットの国にいる間もそれは有効なのだろうか?そんな疑問はありつつも、気になり始めると姓名判断サイトでの検索がやめられない。画数のせいで人生踏んだり蹴ったりになったら面目ない、という臆病心もある。いっそ名前を「大吉」にしようかとも考えたのだが、画数的には大凶と出るからなんとも難しい。悩んだ末、画数が大大吉の名前を選んだけれど、いずれにせよ人生ってそんなに簡単なものではない。だから息子よ、自分なりに大吉人生を見つけておくれ。