フランクフルトの魅力を堪能した後は、そこからちょっと足を延ばして、ドイツらしい風景が見られる町へ出掛けてみませんか。まだ誰も知らない自分だけの発見を求めて、初めての土地を歩くのはワクワクするもの。ここでは、有名どころからあまり知られていない小さな町まで、観光で訪れる人も、市内やその近郊に暮らす皆さんも楽しめる散策スポットをご紹介します。
(編集部:林 康子)
フランクフルトから南へ
情報協力:JALPAK International (Germany) GmbH
ドイツ・ロマンの真髄に触れる
ハイデルベルク Heidelberg
ツーリスト・インフォメーション:中央駅前
ドイツ最古の大学を擁する町ハイデルベルク。名所の1つである「哲学者の道」の名が想起させる通り、旅情溢れるハイデルベルク城や、凝った装飾が施された建物が並ぶ旧市街の景観は、どこか知的な雰囲気を 醸し出し、古くからゲーテやショパン、ユーゴーなど、数多くの詩人や芸術家を魅了してきた。ドイツ・ロマン主義の骨頂とも言えるこの町は、学生の町ならではの活気に満ちている上、年間を通して世界中から訪れる観光客で大賑わい。旧市街へと続くハウプト通りへ一歩足を踏み出せば、どこからともなく古き良き中世の香りが漂ってくる。
ハウプト通り
Hauptstraße
欧州一長い歩行者通りと言われるこの通りの長さは、途中の脇道も含めると1.6kmに及ぶ。道沿いには、レストランやカフェから土産物屋、ファッション、雑貨屋まで、実に様々なショップが立ち並び、毎日大勢の市民や観光客で賑わっている。ビスマルク広場から10分ほど歩くと、聖霊教会(Heiliggeistkirche)や市庁舎(Rathaus)のあるマルクト広場に出る。
ハイデルベルク城 Schloss Heidelberg
この城が史料に初めて登場するのは1225年。15世紀以降は、約500年にわたってプファルツ選帝侯の居城として使われ、17世紀の三十年戦争、それに続くプファルツ継承戦争によって城は次第に破壊されていくこととなる。旧市街を見下ろすように建つルネサンス様式の城趾のどっしりとした佇まいが、この町の激動の歴史を物語っている。
www.schloss-heidelberg.de
城へは、Kornmarkt駐車場脇から出ているケーブルカーで行ける(入城料込みで6ユーロ)
ホテル&レストラン
Hotel zum Ritter St. Georg
聖霊教会の向かいに建つ後期ルネサンス様式の建物は、プファルツ継承戦争による被害を免れた数少ない建造物の1つ。先端に聖ゲオルクの騎士像が立っていることから「Der Ritter(騎士)」と呼ばれるこの建物は現在、ホテル&レストランになっており、レストランではバーデン地方の郷土料理を提供している。今の季節は、白アスパラがお勧め!
Hauptstraße 178, 69117 Heidelberg
www.ritter-heidelberg.de
学生牢
Studentenkarzer
1778~1914年の間、夜間に騒いだり、決闘をしたりと、学則を破った学生を罰するための牢屋として使用されていた。牢屋と言っても、食べ物やビールの持ち込みが許され、学生たちの間では、むしろここに入ることが名誉とみなされていたほど。牢屋に入った記念に学生が残していった似顔絵や名前などが壁一面にびっしりと刻まれている。
Augistinergasse 2, 69117 Heidelberg
入場料:3ユーロ(割引2.50ユーロ)
※入り口は大学博物館側
“とっておき”が隠れている宝箱
バート・ヴィンプフェン Heidelberg Bad Wimpfen
現在、Bad Wimpfen駅を通る区間の鉄道は工事中のため、Sinnheim駅ないしBad Rappenau駅から代替輸送バスを利用する。
ツーリスト・インフォメーション:Hauptstraße 45
人口7000人にも満たない小さな温泉保養地。しかし実は隠れた名所で、街中にそびえ立ついくつかの尖塔や家々が織り成すシルエットをして「ドイツ一美しいスカイライン」と言わしめるほど、風光明媚なスポットなのだ。古代ローマ時代に築かれた城砦に起源を持つ、歴史ある町でもあり、静かに佇む重厚な建築を見上げれば、はるか昔から時が止まったままかのような錯覚に陥る。そして町を歩いていると、個人経営の小さなショップやカフェが多いことに気付く。町中を隈なく見て回り、自分だけのお気に入りのアイテムを見付けるのも楽しいかも。
青い塔
Blauer Turm
ネッカー川沿いにそびえる町のシンボル。外敵から町を守る監視塔として、650年来ずっと塔守が存在し続けているという珍しい塔の天辺からは、メルヘンの世界そのままの絶景が望める。650年前の塔守も、オレンジ色の切妻屋根がひしめき合うように建つ町の様子を、現在と同じように見守っていたことだろうと、当時に思いを馳せずにはいられない。
Burgviertel 9, 74206 Bad Wimpfen
入場料:1.50ユーロ
石けん屋さん
rosenzeit
バラの花をあしらった看板のロゴがかわいらしいこのお店では、ドイツ、フランス産の石けんやバスオイルを中心に、化粧品からアーティスティックな腕時計、雑貨まで、オーナーのマルガレッテ・ヴュルツさんが厳選した小物を販売している。やさしい香りを放つ色とりどりの石けんは、眺めているだけでも癒し効果絶大。店内では、不定期でアート作品の展示も行っている。
Marktrain 4, 74206 Bad Wimpfen
www.rosenzeit.eu
雑貨屋さん
Zill Waren aller Art
店頭に看板はなく、一見、おしゃれに飾り付けられた普通の住宅と思ってしまいそうなこちらのお店は、オーナーのビルギッテ・ツィルさんの名を冠した「ツィルの何でも屋」。お店の前のカエルやアヒルなどの置き物に誘われて中へ入ると、食器やクロスなどのキッチンアイテムを中心にバラエティーに富んだ雑貨が所狭しと並んでいる。
Bollwerkgasse 5, 74206 Bad Wimpfen
ティールーム
Cornwall
町を一巡りして、ちょっと休憩したいというときはこちらへ。英国コーンウォール出身のオーナー、ペギー・フェイリーさんが、本場の紅茶と手作りのサンドイッチやカップケーキ、クッキー、ペイストリーでもてなしてくれる。当地の伝統を意識した明るく華やかなインテリアの店内でティータイムを過ごせば、気分はすっかり英国紳士・淑女!?
Hauptstraße 50, 74206 Bad Wimpfen
www.cornwall-tearoom.de
フランクフルトから北へ
情報協力:JTB Germany GmbH
ライン渓谷に広がるおとぎの国
マールブルク Marburg
ツーリスト・インフォメーション:Pilgrimstein 26(バス停Rudolfsplatz前)
メルヘン街道の途上にあるマールブルクは、ハイデルベルク、ゲッティンゲン、テュービンゲンと並び、ドイツの4大大学都市として古くから栄えてきた。かのグリム兄弟が学生時代を過ごした町、ルターが宗教論争を戦わせた場所としても知られている。旧市街はライン渓谷の険しい斜面の上部に築かれており、そこに張り巡らされた石畳の細い坂道がノスタルジーを誘う。まずは中心部のマルクト広場(Marktplatz)を目指し、1527年に建てられたルネサンス様式の壮麗な市庁舎の時計台から鳴るラッパ(毎時)を聴いたら、おとぎの国への旅の始まり!
グリム兄弟が住んだ家
Barfüßerstraße 35
方伯城の直下に広がる旧市街オーバーシュタットの中心街はバルフューサー通り(Barfüßerstraße)。その中の1軒(3番地)に、グリム兄弟が学生時代の1802~03年に下宿した家がある。今でこそおしゃれなお店が建ち並ぶショッピング街だが、当時この界隈は薄暗く汚かったといい、兄のヤーコプは階段が多く、犬の糞だらけで物騒なことに憤慨していたのだとか。
市内最古のカフェ
Café Vetter
創業100年を超えるマールブルク最古のカフェ。現在は、4代目のザンドラ&アクセル・フェッター夫妻が店を切り盛りしている。ここでいただけるのは、ベーキングミックスや合成香料、人工甘味料などを使用しない無添加のケーキやサンドイッチなどの軽食。創業当時から代々守られてきたレシピによるホームメイド・ケーキは気取らない素朴な味わい。
Reitgasse 4, 35037 Marburg
www.cafe-vetter-marburg.de
ヘッセン方伯城
Landgrafenschloss
旧市街のマルクト広場から北へ向かって勾配のきつい坂を上り、ラーン川を臨む丘陵の頂に出ると、威風堂々たる方伯城がお目見え。11世紀にヘッセン伯爵の居城として建てられた城で、内部にはマールブルク大学の文化史博物館があり、市の歴史に関する資料が展示されている。この城からは、市内から遠くの山々まで、美しい風景を一望できる。
エリザベート教会
Elisabethkirche
1228年に当地に居を据え、慈善活動に努めたというテューリンゲン伯爵夫人のエリザベートを奉る、ゴシック様式としてはドイツ最古の教会で、1235年にドイツ騎士団によって建設された。教会内のステンドグラスにはエリザベート夫人の生前の様子が描かれており、彼女の墓もここにある。ファサードの両側に建つ2つの塔が圧巻!
Elisabethstaße 3 35037 Marburg
www.elisabethkirche.de
ウェルテルの足跡を追って
ヴェッツラー Wetzlar
ツーリスト・インフォメーション:Domplatz 8(大聖堂の向かい)
1774年に刊行され、当時世界的に一大ブームを巻き起こした文豪ゲーテのヒット作『若きウェルテルの悩み』。婚約者のいる女性シャルロッテに一目惚れし、恋に落ちたウェルテルの悲哀を、ゲーテが実体験を基に綴ったこの書簡体小説の舞台がヴェッツラーだ。作品を読んだことがある人なら、この町のいたるところに点在するウェルテルの軌跡をたどれば、小説の世界に迷い込んだ気分になるだろう。旧市街は小規模だが、ドーム広場(Domplatz)やコルンマルクト(Kornmarkt)には中世から変わらぬ町並みがしっかりと残されており、見ごたえ十分。
大聖堂
Dom Wetzlar
13世紀初頭、近郊の町マールブルクやリンブルクで次々に町を象徴する教会の建築が決まったことに倣い、ヴェッツラーは1230年に大聖堂の建築を決めた。町の力を誇示する存在として威厳ある大聖堂の建設が目指されたが、出来上がったのは左側の塔が欠けた左右非対称のアンバランスな建物。その理由は、市行政と施主が建設予算の捻出をめぐり争っていた上、さらに14世紀に入ると市が財政難によって破産の危機に陥ってしまい、大聖堂の建設続行が叶わなくなってしまったから。未完成の外観は、時代の波に翻弄された大聖堂の数奇な運命を物語っている。
イェルザレムの家
Jerusalemhaus
ゲーテが『若きウェルテルの悩み』を書くきっかけとなった、友人カール=ヴィルヘルム・イェルザレムの死。小さなお店が軒を連ねるジルヘーファー通り(Silhöfer Straße)を南下した先に、イェルザレムが暮らし、1772年にピストル自殺を遂げた家が建っている。赤い木の柱と左右2つの出窓が特徴の木組みの建物は現在、博物館となっており、イェルザレムの直筆の書簡をはじめ、彼の生活を偲ばせる品々が展示されている。
開館時間:火~土14:00~17:00
Schillerplatz 5, 35578 Wetzlar
ロッテハウス
Lottehaus
ゲーテが恋したシャルロッテが、1753年の生誕から73年の結婚まで暮らした家。ゲーテがここへ足繁く通ったことも記録に残っている。1863年に、当地の市民のイニシアティブによってシャルロッテ記念館として保存していくことが決定した。1922年以降、博物館として『若きウェルテルの悩み』の初版や、当時のこの小説の受容の様子に関する史料を保存・展示している。なお、同じ敷地内には、産業発展を中心にヴェッツラーの歴史を紹介するStadt- und Industriemuseumと、ライカが本拠を構えるレンズの町らしく、視覚やレンズに関する展示を行うViseumの2つの博物館も併設されている。
開館時間:火~日10:00~13:00、14:00~17:00
Lottestraße 8-10, 35578 Wetzlar
自然を愛でに、ガーデニングショーへ
ギーセン Gießen
マールブルクとヴェッツラーの間にあるギーセンでは現在、第5回目となるヘッセン州ガーデニングショーが開催中だ。時間があれば、植物を愛でに、途中下車して立ち寄ってみては。
ヘッセン州ガーデニングショー
Landesgartenschau
市内東部、35ヘクタールの広大な公園内に咲き誇る色とりどりの花々……。ガーデニングショーでは、世界中の植物、庭に関する最新の情報が各所に散りばめられており、ただ歩いて花や草木を観賞して楽しむだけでなく、学術的な視点から造園を見る良い機会にもなる。
ギーセン駅から5番バスでLandesgericht下車、徒歩2分
入場料:大人15ユーロ(割引13.50ユーロ)
www.landesgartenschaugiessen.de
ホテル&レストラン
Hotel & Gasthausbraurei Alt-Gießen
ガーデニングショーを見終えてお腹が空いたら、市内へ戻って食事タイム。ギーセン駅から程近いこちらのレストランでは、ギーセンの自家醸造のビールを、ヘル(hell)、ドゥンケル(dunkel)、ヴァイツェン(Weizen)、そして季節によって替わるスペシャル(Spezial)の4種類にて提供している。また、平日の日替わりランチ・ビュッフェは6.90ユーロとお手頃。夏季にはビアガーデンも開放される。
Westanlage 30-32, 35390 Gießen
www.hotel-alt-giessen.de