外務省ハーグ条約室の専門員に聞きました!
お子さんがいるご家庭の皆さんへ
知っておきたいハーグ条約Q&A
国境を越えた「子どもの連れ去り」に対処することを目的とした「ハーグ条約」。日本で発効して4年半以上が経過しましたが、いまいちその実態が分からないという人も多いはず……。今回は、2018年10月19日にデュッセルドルフで開かれたハーグ条約セミナー(在デュッセルドルフ日本総領事館・日本クラブ共催)の内容をもとに、そのポイントをQ&A方式で解説します。(Text:ドイツニュースダイジェスト編集部)
セミナー講師
外務省領事局ハーグ条約室 ハーグ条約専門員
前小屋千絵さん
子どもの利益を最優先!ハーグ条約の基本
1980年にオランダのハーグで作られた「ハーグ条約」は、正式には「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」と言います。締約国は99カ国(2018年12月現在)で、日本では2014年4月1日に発効しました。ハーグ条約は、子どもが違う国に連れ去られることで、元の居住国にいる家族や友だち、話していた言葉、慣れ親しんだ環境と引き離されることの悪影響から子どもを守り、子どもの利益を最優先することを基本としています。
Q1ハーグ条約で定められていることはなんですか?
国境を越えて不法に連れ去られた子どもを、元の居住国へ返還する手続きなどについて定めています。
子どもが、一方の親の同意を得ていない状況で不法に国境を越えて連れ去られた場合、もしくは約束した期限を経過しても元の居住国に帰さないなどで不法に留置された場合に、原則として元の居住国へ返還すべきと定められています。また、両親の離婚などで離ればなれになった親子間の面会交流の機会も確保します。ただしハーグ条約は、元の居住「国」への返還を求めるだけで、一方の「親」への引き渡しを定めるものではありません。
Q2どのような場合にハーグ条約が適用されますか?
子どもが16歳未満で、元の居住国と現在いる国の両方がハーグ条約締約国であることが条件です。
上記の条件を満たし、子どもが元いた国の法令に基づいて、連れ去られた親が子どもの監護権を有しており、その権利が妨げられた場合に返還を求めることができます。また、両親や子どもの国籍は関係ないため、日本人同士であっても適用されます。さらに、片方の親と子どもが日本に一時帰国するなどで出国する場合でも、出国審査時に同行しない親の承諾書の提示を求められるといった事例もあります(ただし、ケースバイケース)。
Q3子どもの返還はどのような手続きで行われるのですか?
中央当局を通じて、話し合いや裁判のために適切な支援がなされます。
子どもが日本にいる場合、外国に残された親がその国の中央当局を通じて日本の中央当局(外務省)に子どもの返還援助を申請し、援助を受けられるかどうかが決まります。援助が決定すると、中央当局が子どもを連れ去った親に今後の手続きや外務省が提供する支援について説明した手紙を送付します。話し合いや裁判手続きのために、弁護士紹介や翻訳などの中央当局による支援(上限あり)を受けることができます。なお、居住地の住所は外国に残された親に開示されることはありません。
Q4返還申請があったら、必ず子どもを返還しなければならないのでしょうか?
子どもに不利益がある場合は、返還を拒否するための主張をすることができます。
返還が原則ですが、連れ去りから1年以上経過し、子どもが新たな環境に適応している場合、連れ去られた親から子どもへの虐待などの重大な危険がある場合などは、裁判所が返還を命じないことも。ただし、連れ去られた親から連れ去った親に対してのみDVなどがあった場合は、元の居住国で保護を受けられるとし、返還拒否の理由には当たらないと判断されることがあります。
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平日9:00~17:00(12:30~13:30)※日本時間
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