ロストック聖マリエン教会にある、約550年前から時を刻み続ける天文時計のカレンダーディスク。ロストックの太陽が出ている時間と沈んでいる時間を教えてくれるのですが、この時計いわく、12月の「夜」の時間は約16時間。闇の時間が数値化されると余計に気が滅入るところですが、最近「暗闇の浜辺での琥珀(こはく)探し」という最高にワクワクするアクティビティーを知りました。というのもある日、なんか面白いことないかなぁ、とツイッターを眺めていたら、「UVライトを持って夜の琥珀ハントに出かける」と題されたチカ・キーツマンさんのブログを発見。ブログでは、ハンブルク近くの採石場でUVライトに照らされて発光している琥珀の画像と動画が公開されていました。大興奮した私が夫にこの衝撃の事実を伝えると、夫はすぐさまネットでUVライトをポチリ。
バルト海沿岸は琥珀が採れることで有名で、お土産屋さんには琥珀グッズがずらりと並んでいます。バルト海の琥珀を見つけるには風向きが非常に重要で、北東の強い風によって水中の琥珀が海藻に絡まり、浜辺に打ち上げられるのです。そのためUVライトという魔法の懐中電灯を手に入れたは良いものの、風レーダーとにらめっこする日々が続きます。そしてようやく、Xデーは訪れました。
UVライトで光る海藻
事前に、琥珀がどのように光るのかを、以前に採取した琥珀で実験をし、いざゴーゴーと波と風の音が響く真っ暗な浜辺へと出かけます。UVライトを付けてみると、早速青白い淡い光が砂浜に点々と広がっているではありませんか!慌てて普通の懐中電灯をともすと、これらは粉々になった白い貝殻。そもそも蛍光物質が含まれているものはUVライトを当てれば発光するのです。琥珀だけが光るのではないと、改めて念頭に置いて藻くずをあさっていると、奥の方から燃えるようなオレンジ色に光る物体!慌てて確認すると、悲しいかな、プラスチックのゴミでした。引き続き琥珀を探していると、出てくる出てくる、強く光る人間の業……。太陽の光の下では見つけにくい小さなプラスチックのゴミたちに、「バルト海はプラスチックのゴミはあまり落ちていないなぁ」なんて思っていた私はとてもショックでした。
普通の懐中電灯で見える海藻
次第に風も強くなり、もう帰ろうかというところで今度は細かい網状の繊細なオレンジの光が目に入りました。どうせ漁網だろうと確認すると、ごく普通の茶色の海藻だったのです。私たちが普段見ているものが全てではなくて、想像を超える全く違う世界を見ている生き物もいるんだろうと考えると、とても興奮してしまいました。
残念ながら、今回は琥珀を見つけることができませんでした。しかし、今回手に入れた魔法の光で、もう少し続く暗くて寒い時期を楽しく知的に過ごすことができそうです。
ロストック在住。ドイツ北東地方の案内人、そしてシュヴェリーン城公認ガイド。ツイッターで観光、街、大好きなビールについて、ほぼ毎日つぶやいています。
Twitter: @rostock_jp
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