都市ガイドシリーズ⑥
歴史と若いエネルギーが混交するライプツィヒの魅力再発見!
16の個性豊かな州からなるドイツ。歴史や文化はもちろん、言葉も食もそれぞれ異なる。そんな魅力たっぷりのドイツ各地の都市を、一つずつスポットを当てて紹介していく「都市ガイドシリーズ」の第6回目は、ドイツ東部の歴史ある街「ライプツィヒ」。ゲーテやバッハなど、芸術家や著名人がこの地で活躍したほか、近年では「第二のベルリン」と呼ばれるほどにさまざまなカルチャーが醸成されている。重厚感あふれる歴史と、新しい文化が織りなすこの街の景色を訪ねよう。(文: ドイツニュースダイジェスト編集部)
ライプツィヒってどんな街?
ドイツ東部に位置するライプツィヒ。歴史的に重要な二つの交易ルートが交差する都市であることから、1165年に都市権と市場権を付与された。その後、貿易と商業の中心地として発展し、見本市(メッセ)発祥の地としても知られている。バッハやメンデルスゾーンをはじめとする名だたる音楽家たちが活動したほか、文豪ゲーテのゆかりの地でもある。
第二次世界大戦後の東西分断では、旧東ドイツに組み込まれることに。当時の人口はベルリンに次ぐ多さで、工業が盛んな地域でもあった。ライプツィヒのニコライ教会で毎週月曜日に行われていた「平和の祈り」は、ベルリンの壁崩壊へとつながる平和革命の始まりとして知られる。
しかしドイツ再統一後、ライプツィヒでは失業者が増加して人口が激減。それによる空き家問題にも悩まされたが、近年では安い賃料に魅力を感じる若者やアーティスト、デザイナーなどが世界中から集まるようになり、クリエイティブな都市として注目されている。
アクセス
ライプツィヒ・ハレ空港
Flughafen Leipzig/Halle
[ 空港→ライプツィヒ市内 ]
● 高速列車ICE、ICの場合
ライプツィヒ中央駅まで約12分
● Sバーンの場合
空港からSバーンで約15分
● タクシー
ライプツィヒ市内まで約30分
ライプツィヒ中央駅
Leipzig Hauptbahnhof
● ミュンヘン中央駅から
ICEで約3時間30分
● フランクフルト中央駅から
ICEで約3時間
● ベルリン中央駅から
ICEで約1時間15分
お得なカード※全て2023年4月時点の価格
ツーリスト向けライプツィヒカード
Leipzig Card
市内公共交通機関(ゾーン110)が乗り放題になるほか、ミュージアムやツアーなど約100の提携先での割引・特典が付いている。1日券は13.40ユーロ、3日券は26.90ユーロ、大人2人+15歳以下の子ども3人までのグループで使える3日券は51.90ユーロ。ツーリスト・インフォメーションや公共交通機関の券売機のほか、オンラインでも購入できる。使用する際は、使用開始日と署名の記入を忘れずに!
www.leipzig.travel/buchen/leipzig-card-leipzig-regio-card
ツーリスト・居住者向けライプツィヒ・レギオカード
Leipzig Regio Card
ライプツィヒだけでなく、その周辺エリアも楽しみたいという人には、ライプツィヒ・レギオカードがおすすめ。MDVエリア内をバスや電車で自由に移動できるほか、クライミングパークやカヌーレンタルなど、150以上の提携先を優待価格で利用できる。1日券は22ユーロ、3日券は48ユーロ。居住者向けには、20ユーロで1年間有効のカードも(ただし交通機関は利用不可)。
www.leipzig.travel/buchen/leipzig-card-leipzig-regio-card
ライプツィヒのおすすめスポット
ライプツィヒに旅行で来たり、引っ越してきたりした人はぜひ訪れるべき、おすすめスポットをご紹介。
Thomaskirche① トーマス教会
800年以上の歴史があるトーマス教会。建物はロマネスク様式だった教会だが、15世紀に後期ゴシック様式へ改装が施された。19世紀に内部が改修され、それ以来ネオ・ゴシック様式を代表するものとなっている。1723〜1750年までヨハン・セバスティアン・バッハがこの教会でカントールを務め、バッハ作品の大部分はここで作曲された。教会の目の前にはバッハの銅像(写真右)が立ち、内部にはバッハの墓がある。
Thomaskirchhof 18, 04109
www.thomaskirche.org
Nikolaikirche② ニコライ教会
ニコライ教会は、1165年にライプツィヒが都市権・市場権を付与された際に建設された。隣接するトーマス教会と密接な関係があり、バッハは両教会の教会音楽を担当。ニコライ教会ではバッハの指揮で最も多くのカンタータが演奏された。1980年代初頭からこの教会では平和の祈りがささげられていたが、次第に自分たちの意思を表現できる唯一の空間として注目されるように。1989年の秋、政府に対して民主化を求める活動へと発展。平和的な抗議はドイツ全土に広がり、東西再統一に導いた。以来、平和革命の始まりの場所としても知られている。
Nikolaikirchhof 3, 04109
www.nikolaikirche.de
Altes Rathaus und Marktplatz③ ライプツィヒ旧市庁舎&マルクト広場
1556~57年に建てられた旧市庁舎は、ドイツ・ルネサンス建築の傑出した建物として知られている。20世紀初頭まで役所として使用されていたが、1909年からは市立歴史博物館になり、波乱に満ちたライプツィヒの歴史をたどることができる。旧市庁舎の前に広がるマルクト広場は、朝市やクリスマスマーケット、イベントなどが1年を通して開催されている。広場の周りには多くのショッピングセンターも。
Markt 1, 04109
www.stadtgeschichtliches-museum-leipzig.de
Völkerschlachtdenkmal④ 諸国民戦争記念碑
1813年秋、ナポレオンとの歴史的な戦争「ライプツィヒの戦い」(諸国民戦争)の記念として、また戦いの過程で命を落とした11万人以上の人々を顕彰する碑として建てられた。 364段の階段を上ると、展望台からライプツィヒと周辺地域のパノラマビューを楽しむことができる。また記念館に併設された博物館「FORUM 1813」では、ライプツィヒ近郊で起きた解放戦争の最大規模の戦闘を壮大な視点で紹介。当時の武器、軍服、装備品、写真などが展示されており、歴史について学べる。
Straße des 18. Oktober 100, 04299
www.stadtgeschichtliches-museum-leipzig.de/besuch/unsere-haeuser/voelkerschlachtdenkmal-forum-1813
Augustusplatz⑤ アウグストゥス広場
ザクセン州の初代国王フリードリヒ・アウグストにちなんで名づけられた広場には、さまざまな年代の建物が約4万平方メートルの敷地に集められている。1960年にオープンしたライプツィヒ歌劇場、旧東ドイツ時代に建設された唯一のコンサートホール「ゲヴァントハウス」、文豪ゲーテから哲学者のニーチェまで学んだライプツィヒ大学、ドイツで2番目に高いビル「シティ・ホッホハウス」などがある。シティ・ホッホハウスからは、天気が良ければ市街地の遠くまで見渡せる。
Augustusplatz, 04109 Leipzig
ライプツィヒ歌劇場 Oper Leipzig
Augustusplatz 12
www.oper-leipzig.de
ゲヴァントハウス Gewandhaus zu Leipzig
Augustusplatz 8
www.gewandhausorchester.de
シティ・ホッホハウス City-Hochhaus mit Aussichtsplattform
Augustusplatz 9
https://panorama-leipzig.de
Gedenkstätte Museum in der „Runden Ecke“⑥ 旧国家保安省記念館
ライプツィヒ国家安全保障省(シュタージ)が40年にわたり拠点としていたこの建物は、現在記念館となっている。旧東ドイツがどのようにして監視国家を構築し、国民から基本的な権利を奪ったのかなど、秘密機関の構造と仕組みについて解説されている。かつての国家保安局を忠実に再現した拘置所の独房部屋や手紙の中身をチェックする装置、盗聴器、偽の切手、変装用のかつら、特殊カメラなどを見学することができる。
Dittrichring 24, 04109
www.runde-ecke-leipzig.de
Mädler Passage⑦ メードラーパッサージュ
1912~14年にかけて見本市商館として建設されたアーケード街。もとは磁器、陶器が取引きされていたが、現在では全長140メートルのエレガントなショッピングストリートとなっている。またアーケード建設前からあるレストラン「アウアーバッハス・ケラー」(写真)は、かつてゲーテが訪れて食事をし、彼の戯曲「ファウスト」にも同店を登場させたことから、観光客に人気のスポットに。ドイツ留学中の森鴎外もここを訪れ、レストランには鴎外を描いた壁画もある。
Grimmaische Str. 2-4, 04109
www.maedlerpassage.de
Leipziger Baumwollspinnerei⑧ シュピネライ
旧東ドイツ時代に欧州最大の綿紡績工場だった場所で、1992年に綿糸の生産が終了してからは、100以上のアーティストのスタジオやギャラリーなどが集まるアートスポットへと生まれ変わった。毎年4月と9月の週末には、シュピネライにあるギャラリーの一斉オープンデーもあり、芸術作品の鑑賞を楽しめるほか、アーティストのスタジオを訪ねたり、ワークショップに参加したりすることもできる。
Spinnereistr. 7, 04179
www.spinnerei.de
現地で味わいたいおすすめグルメ
Leipziger Lercheライプツィガー・レアヒェ
「ライプツィガー・レアヒェ」(レアヒェはドイツ語で「ヒバリ」の意味)は、マジパンとマーマレード・ジャムを詰めた焼き菓子。19世紀までライプツィヒはヒバリの交易の中心地であり、主に食用として販売されていた。ところが19世紀後半、ザクセン王によってヒバリ狩りは禁止に。そのためパン職人や菓子職人が、ヒバリの形を模したお菓子を考案したのが始まりだという。3週間ほど日持ちするので、お土産にもぴったり。
Leipziger Goseライプツィガー・ゴーゼ
ゴーゼは上面発酵で、コリアンダーや大量の塩を使って造る特別なビール。酸味があり、わずかに塩辛いのが特徴だ。その名前はハルツ地方の都市ゴスラーに由来する。ゴーゼは10世紀ごろから造られていたといわれ、やがてザクセン州に伝わり、14世紀にはライプツィヒの文献にも登場するように。1900年頃、ライプツィヒの見本市で最も多く飲まれたのがゴーゼで、「ゴーゼの街」と呼ばれるようになるほどだったという。
ライプツィヒならではのおすすめイベント
Samstagsmarktザムスタークスマルクト
ライプツィヒ西部にあるマーケットホールで毎週土曜日に開催されているマーケット。この地域で生産されている果物や野菜、パン、チーズ、蜂蜜など、新鮮でおいしい食品が手頃な価格で販売されている。こだわりのコーヒーや自家製ケーキ、日本食まであり、土曜の朝の楽しみとして集まる地元民たちも多い。環境に配慮したマーケットなので、エコバッグや容器を持参すると◎。
https://samstagsmarkt.de
Agra Antikmarktアグラ・アンティークマルクト
毎月最後の週末に開催される、欧州最大規模を誇るアンティークマーケット。ドイツ国内外から500〜1000のディーラーが希少品を携えて集まり、家具やインテリアをはじめ、古いおもちゃ、楽器、古書、絵画、コイン、高級磁器など、広大な敷地にあらゆる商品が所狭しと並ぶ。アンティーク好きなら、ここはパラダイス! 特に旧東ドイツ製のノスタルジックな掘り出し物に注目だ。
www.abuha.de
「日本の家」は続く、どこまでも!