テラスは愛煙家に残された
最後のパラダイス
フランスは伝統的に個人の自由が優先されてきた国だ。だが近年では女性誌などの影響で心身の健康に気を使う人が増えており、そんなことも今回の法律が認められていることの一因のよう。2000年にも飲酒運転を厳罰化する新交通法が定められたが、この頃からフランス人は「安全」や「長寿」のために「自由」を手放す覚悟が出来てきたのかもしれない。
そんな中、唯一抗議の声を上げているのが、一部のタバコ屋の経営者たち。彼らは06年に当時内務大臣だったサルコジ大統領が「タバコを販売している場所で喫煙を禁止するというのは、おかしなことだ」と発言したことを利用しようとしていたが、やはり時代の波には勝てない。新たに飲み物の自動販売機を設けたり、サンドイッチを販売したりと、生き残りをかけて懸命に新たなサービスに取り組み始めている。
一方、賛成派のあるバーの経営者は「もう灰皿を集めたり洗ったりしなくてすむし、床に落ちた吸殻を掃く手間も省ける」という現実的な理由でニンマリ。そのほか、いかにもフランス人らしいロマンチックな意見も。あるパリジェンヌは「私はタバコを吸って彼氏をつくるわ」とウインク。なんでもバーなどを出て歩道でタバコを吸っていると、同じ境遇の愛煙家の男性に声をかけられるパターンが多いらしい。また、とあるレストランの経営者に言わせると、「タバコがなくなったおかげで、女性が入ってくるときにほのかに漂う香水の匂いが戻ってきた」のだとか。喫煙者の自由を妨げる禁煙法。だがほんのちょっと見方を変えれば、別の一面が見えてくるのかもしれない。
「Le Parisien」紙 "La fin de la cigarette" ほか