プロ選手といっても、表彰台に上がることが
出来る者はごく一部だ(写真・共同)
イングランド東部ケント州出身の21歳、ロバート・ディー選手のことである。プロのテニス選手として活動する彼のこれまでの戦績は、54戦54敗。しかもすべての試合でストレート負けというから、その負けっぷりも堂に入っている。プロ・デビューしてから3年越しとなるこの連敗街道は、一説によると数年前に中米グアテマラ出身の選手が打ち立てた54連敗に並ぶタイ記録。つまりあと1回負ければ同記録の更新を達成するという、かなり不名誉なチャンスに恵まれたことになる。
ところが、記録達成間近というところで勝利の女神が血迷った。4月中旬にスペインのバルセロナで開催された大会において、17歳の米国人選手を相手にディー選手がついにプロとしての初勝利を挙げてしまったのだ。試合後には、「ここ数カ月は、絶対に勝てるという自信に満ち溢れていた」と一丁前のアスリートぶったコメントを残したディー選手。だが喜びも束の間、次の試合ではやっぱりストレート負けを喫し、新たな連敗記録達成に向けて既に走り出している。
繰り返すが、彼はプロのテニス選手である。毎日5時間の練習を積んでおり、海外での経験もかなり豊富。これまでオランダ、ノルウェー、ポルトガル、米国、コロンビア、ベネズエラ、イラン、ボツワナ、ルワンダ、スーダン、セネガル、南アフリカと、世界中を遠征している。
そんなに練習しても勝てないのだから、やっぱり才能がないんじゃ……と並の人間なら思ってしまいがちだが、流通会社を経営する同選手の父親アランさんは「(息子が)成功すると信じている」と断言。彼のテニス教育に対して多大な財政支援を行っているという。
ディー選手は、親孝行のためにもまだまだテニスを続ける必要があるようだ。
「Independent」紙
"World's worst tennis pro finally wins a match" ほか