愛し合う気持ちはあるのに……
1985年にフランスとオランダの両国が締結した取り決めによると、フランス人がオランダ国籍、オランダ人がフランス国籍を取得した場合、それぞれもとの国籍を失うことになっている。ただ、それが両国間で結婚しているカップルとなると話は別。本人が望めば、自国と相手国の二重国籍を持つことが認められているのだ。
ところが前述のフレデリックさんは、同性カップルの結婚が認められているオランダでオランダ人と正式に結婚したにも関わらず、フランス領事館に国籍を取り上げられてしまった。なんでも、フランスは同性同士の結婚を認めていないため、フレデリックさんは「独身」という扱いになってしまったのだという。
フレデリックさんは当然、この事態に驚きを隠せない。「僕の愛と結婚を認めてくれた国のパスポートを持ちたい」との理由でオランダ国籍を取得したが、「ロリアン(ブルターニュ地方の港町)で生まれ、家族はみんなフランスにいる」という彼にとって、フランス国籍を捨てるという気持ちは全くない。今は「自分の国に見捨てられた気持ちがするが、僕の判例がフランスの法律を変えるきっかけになればいい」と語るのが精一杯のようだ。
フランスには自由な恋愛が尊重される国としてのイメージがあるけれど、同性カップルへの理解についてはまだまだ他の欧州諸国に遅れをとっている。人権団体は「この非常に屈辱的な決断にショックを受けている」と抗議、与党UMP(国民運動連合)のとある議員さえ「極端に保守的」とこの状況を批判している。
そんなフランスとは対照的に、オランダではますますゲイ・パワーが炸裂中。ゲイ・ピープルを対象とするテレビやラジオ番組が今夏にも次々スタートするという。ショック状態のフレデリックさんも、そんな新番組に少しは慰められるといいのだが。
「Libération」紙
"Mariage gay, la France face au cas Minvielle" ほか