国際政治に造詣の深い読者諸氏なら、フォークランド諸島という名前に聞き覚えもあるだろう。25年前に英国とアルゼンチン間で勃発した戦争の舞台となった、南米大陸のさらに南に位置する島々である。交通手段は英国空軍のチャーター便のみ、海岸では地雷に注意……というこの島々から、年間4万5000ポンド(約1000万円)という好(?)待遇の求人ニュースが飛び込んできた。
現在大募集中というそのポストは、フォークランド諸島の観光庁長官。美しい空とビーチ、そして100万羽のペンギン達が売りという同諸島だが、世界の観光業界に名乗りを上げるための有能な人材を探しているという。
今まで人口3000人弱という島の経済を助けていたのは、東アジアとスペインに向けたイカの輸出を中心とした漁業だった。しかしこの度、その漁業に次いで大きい収入源である観光業に注目したわけだ。「島を訪れる人は年々増えています。更に設備を充実させ、マーケティングの知識をもたらしてくれるような人物を求めています」。英国内でフォークランド政府代表を務めるキャメロン氏はそう語る。
肝心のフォークランド諸島の見どころだが、これが意外に面白い。まずは戦争マニアをとりこにする1982年の紛争の痕跡だろう。ミサイルが着弾したキャンプ跡に、英国軍司令部がアルゼンチンの部隊に占領されたケント山、さらにアルゼンチン降伏前夜の激戦地ロングドン山。たった4半世紀前の戦争の跡がくっきりと、それも安全に眺められる場所は他になかなか見当たらない。
さらにペンギン・ツアー、ゴルフ、四駆での自然探検を始めとしたアウトドアも見逃せない。また、フォークランド諸島オリジナル切手もコレクター垂涎の貴重な品である。
南大西洋にぽつりと浮かぶ、面積1万2000平方キロという岩だらけの小さな島。そこで働こうという奇特な人材は、作家マーク・トウェインの格言を引用した求人キャッチ・フレーズに魅せられるような人物だろう。「もやい綱を解き放ち、安全な港から船を出し、貿易風を帆にとらえよ。探検し、夢を見て、発見せよ!!」
「Independent」紙
Wanted: holiday rep to sell joys of Falklands tourism