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ノーベル賞作家、ついに来独 from Germany

ノーベル賞作家、ついに来独
世界40カ国で翻訳された
「Schnee」
オレンジ色の夕日に染まるハンブルク、ドイツ劇場前。数人の警察官を護衛に従え、黒いスーツに身を包んだ一人の紳士が姿を現した。彼の名はオルハン・パムク。昨年、トルコ 人として初めてノーベル文学賞を受賞した現代トルコ文学の第一人者だ。そのパムク氏の訪独が、今月初め、「ついに」実現した。

「ついに」と書いたのには訳がある。もともとパムク氏は2月にドイツを訪れる予定だったが、それをキャンセルした経緯があるのだ。取り止めの理由については、その頃トルコでオスマン帝国によるアルメニア人虐殺問題をめぐりアルメニア系ジャーナリストが射殺されるという事件が起き、虐殺を批判する発言で知られる同氏が身の危険を案じたためとみられている。

パムク氏は今回、ハンブルクを皮切りにベルリン、ケルン、シュトゥットガルト、ミュンヘンで講演会に出席。最新作「イスタンブール」の朗読を交え、参加者らとトークに興じた。自身の生まれ育ったメトロポールへの思いを綴った同著について紹介する中では、子どもの頃、絵描きになりたかったというエピソードなどを 語る場面も見られた。

「政治的メッセージを含まない、政治小説」と自ら称し、イスラムの伝統文化と西欧文化の対比などを描いたベストセラー「Schnee(邦訳題:雪)」が知られる同氏だが、司会者に東と西の架け橋としての自身の役割についてどう考えているかと訊かれ、こう答えた。「私は架け橋などにはなりたくない。東と西の2つの世界に属する人間として、両者が争うのを見たくないだけです。私の仕事は良い本を書くこと。そこに自分の政治的見解も書いています」。折りしもトルコはイスラム原理主義と世俗主義が対立する大統領選の真っ只中。観客の中には、この問題に関する同氏の発言を期待する人もいたようだが、終始ノーコメントだった。

短期間ながら、各地で多くのファンに出迎えられたパムク氏。ケルンでは、司会を務めたトーマス・ベーム氏から、次回は「オーデコロン」で知られる街の名所「4711」にも足を運んでほしいと再訪を望む声も聞かれた。パムク氏の愛した祖母は、「ケルンの水」の大ファンだったという。

「DER TAGESSPIEGEL」紙ほか “Pamuk will kein Brückenbauer sein”



 
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