献血して良心もおなかも大満足
Fédération française pour le don
de sang bénébole
だが夏のバカンスシーズン中は、献血者の数が約10%も減る。しかし患者に輸血を待ってもらうわけにもいかず、血液センターにとってこの時期は悩みのタネのようだ。そこで 病院側は、一つの名案を思いついた。
名案とは、パリの有名レストランのシェフとタイアップし、献血に訪れたドナーに本格フランス料理を振舞うというもの。白羽の矢が立ったシェフは「café de la paix」のロラン・ドゥラブル氏、「Hotel Crillon」のジャン=フランソワ・ピエージュ氏、「Hotel Ritz」のミッシェル・ロス氏という、自他共に認める腕利きシェフの3人だ。彼らは7月末の3日間、持ち回りで、なんと600食分を用意した。
料理は、軽食ながら「さすが星付きレストランのシェフ」とうなってしまうような内容。ちなみに最終日のメニューは、カジキマグロのスモークサーモン添え、カニと鶏肉のトリュフドレッシング和え、デザートにはチョコレートタルトとアイスクリーム、という豪華なものだった。そのかいあって、パリ・バスチーユ広場の献血場所には3日間で例年を33%も上回る505人が献血に訪れ、「フレンチ大作戦」は大成功に終わった。
戦後間もない頃は、献血者にはお金が支払われていたため、金銭目的で必要以上に献血に来る人が殺到したものだった。だが、ドナーの多くが健康上なんらかの問題を抱えていたことから、採取血液の質を維持するために金銭の支払いが廃止され、それ以後は献血をすると、オレンジジュースと簡単なサンドウィッチが配られるだけとなっている。
世論調査によれば、フランス人のおよそ50%は「献血をしてもいい」と考えているが、実際に献血に訪れるのは5%にも満たないらしい。本来善意で行う献血だが、何らかの見返りがあってやっと足を運ぶ人が増えるとは、なんとも現金なものである。
「Le Parisien」紙 “Un repas quatre étoiles contre un don du sang”